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空間と人の熱量を音楽で還元。多様なスタイルで音を楽しむ場を創り出すマルチプレーヤー

ミュージシャン・音楽イベント企画運営 石川 真由子 さん

数年前から音楽業界で注目を集める秋田在住の仏教レゲエバンド「英心 & The Meditationalies(メディテーショナリーズ)」。今回ご紹介するのは、そのバンドの紅一点、フルートと鍵盤ハーモニカを担当する「いしま」さんこと石川真由子さんです。もともとは、演者にして音楽イベントの企画・運営もこなすマルチプレーヤー。音楽家としてどのような道をたどってきたのか、石川さんが運営・管理する多目的スペース“studio”にてお話を伺いました。

ジャズと空間の大きなうねりの中にいた東京時代

— 石川さんが音楽の世界と出会ったのはいつ頃ですか?

石川 学生時代は吹奏楽部だったりピアノを習ったりしていましたが、その頃は音楽というよりも楽器に触れていたという感覚でしたので、大学入学前にジャズを聴き始めたことが、この道を志すようになったきっかけですね。それで、大学では総合芸術を幅広く学べる表現コミュニケーションを専攻しました。

大学で上京して、いろんなジャズの現場のグルーヴを肌で感じられて、本当に楽しかったですね〜。私は小さい頃から竿燈の横笛もやっていて、祭りの渦に飲み込まれるようなグルーヴ感が大好きなので、それが私の原風景の一つだと思っています。

— 大学では具体的にどのような活動をしていましたか?

石川 表現活動とその空間に興味がありましたので、それについて研究をしていました。半年留学したニューヨークでは、多目的スペースの持つクリエイティブさについて研究して、それを卒論のテーマにしたり。いろんなイベントを企画できる場所は、人が集まることでグルーヴができる。それがクリエイティブにつながるんだと実感しました。

— 大学卒業後は?

東京でジャズバーを5年経営しまして、どっぷりジャズの世界に浸かりました。そこで企画やセッションなどを突き詰めたら、「もう同じ場所ではやりきった」と感じるようになって。それと同時に疲弊感もあって、30歳で秋田に戻ったんです。

人と土地と空間がじんわり交わる心地よい音楽を

— 秋田での活動はどういったコンセプトで始めましたか?

石川 それまで同じ場所での企画や演奏を中心にやってきたので、もっと広い世界を見たいなと思い、拠点を決めずに音楽活動をするのはどうかなと。大学のジャズ研で知り合った主人も「面白そうだね」と賛同してくれて、2014年に二人で「hanauta」を立ち上げました(注:ご主人はトランペット奏者の鈴木雄大氏)。


「hanauta」の活動の一つ、多目的スペース“studio”

— 「hanauta」では主にどういった活動をしていますか?

石川 「音楽空間の創造」として、演奏会を主催したり、店舗や施設、結婚式場などに演奏家を派遣して音楽を奏でたり、さまざまな団体のアートプロジェクトやワークショップの制作補助をしたりしています。

私がライフワークとして続けている「はなうた酒場」は、「はなうたの延長線上のような音楽は、その時、人と場所があればできる」というスタンスで、2006年から不定期で続けているイベントです。それまで自分の中の学生臭さと葛藤していた部分があったので、もっといい音楽を取り入れて表現できるようになろうと思って取り組んでいます。

今まで、ココラボラトリーやトリノス食堂、camosibaなどいろんな場所で開催してきましたが、毎回リアクションも違うので、表現欲求がチクチクと刺激されますね。実は私達の結婚式も、「はなうた酒場フェス編」と題して潟分校で開催したんです(笑)。親戚みんなが楽しめるように、深すぎず浅すぎない内容にして。私たちにとっていい音楽というのは、一番身近な人が楽しめるものなんですよね。


毎月第1水曜日に行っている演奏会「Night cafe & hanauta music」場所:cafe pour deux


制作補助で関わっているダンス公演「Dance@Space project vol,4 空と踊る 音と奏でる」(ampersand[&]企画)

石川 それから、ここ“studio”では、セレクトCDや中古レコードの販売、ライブ・展示・トークイベントなどの自主企画、トランペット・フルート・トロンボーンほかの音楽レッスンなどを行っています。

あとは店舗や展覧会、コワーキングスペースなどのBGMをセレクトして提供する活動もしていて、ここにあるCDはすべて試聴可能です。ご依頼いただいたお客様に〈より密な音楽の手渡し〉をしたくて、今年から予約制にしました。細かな要望も伺いますし、ご相談いただけたらうれしいです。


その時の雰囲気に合ったレコードを聴きながらデッサンを楽しむ会「レコードとデッサン会」場所:“studio”

— これまで携わったライブで印象深かったものは?

石川 私が企画をした、秋田内陸線のお座敷列車でのライブが強く印象に残っていますね。6月だったんですけれども、音楽から見えてくる風景と車窓の風景が合致したんです。

まるで田の神山の神に捧げるような、信念を感じさせる歌と演奏で…。私達がご一緒するミュージシャンは、日本中から忘れ去られそうな歌だったり、そういった雰囲気を内包している方が多いですね。

業界での話題もどこ吹く風で音と酒を楽しむバンド

— 2014年に結成されたバンド「英心 & The Meditationalies(メディテーショナリーズ)」は、2015年にリリースしたファーストフルアルバム『からっぽ』が音楽専門誌の「年間ベストアルバムレゲエ[日本]部門」で第1位を受賞し、昨年9月にリリースしたセカンドアルバム『過疎地の出来事』も好評です。バンド結成のいきさつや、メンバー間の関係性について教えてください。


英心 & Meditationalies

石川 リーダーの英心は大学の同級生で、大学時代も一緒にバンドを組んでいたんです。その後、私が秋田に戻ってさまざまなセッションに参加していたら、英心から「秋田でバンドをやりたいからメンバーを集めて欲しい」と頼まれて。そこからですね。バンドを面白く続けたいから、お酒が飲める人を集めました(笑)。

リーダーがお坊さんで、ほかのメンバーも会社員や音楽教室の先生など、全員ほかの仕事を持っています。いまだにみんなでお酒を飲みに行くくらい仲はいいですね。メンバー全員、売れ行きとか評判とかに興味がなくて、いろんなところに行けて、ライブとお酒が楽しければそれでいいんです(笑)。

— バンド内での石川さんの役割はありますか?

石川 こちらのバンドでも主に企画を担当していますので、役割的には誰が言ったか「いかりや長介」さんだそうです(笑)。ライブ会場もただ演奏するだけでなく、焚き火の周りでのセッションだったり、サンバのワークショップだったり、企画から練った面白い現場が多いですね。私達が行く意義のあるものを、という視点で企画するようにしています。


セカンドアルバムのリリース記念イベントは、秋田市・第一会館の舞台付き大宴会場で開催。「ライブハウスは老若男女が楽しむことは難しいので、こういう場所の方が私達に合ってるんです」と石川さん。

家族が増え、新たなステージへ

— おととしに長男をご出産されて、それまでと活動のペースは変わりましたか?

石川 今のところは変わらないですね!子どもは「仲間が増えた」という感じで。出産直前まで演奏や企画をしていましたし、産後2カ月で復帰もしました。仕事場に連れて行けない時には実家に頼んだりと、その時々の判断で、楽しみながら仕事と育児を続けられています。

ただ、息子もそろそろ自我が芽生えてきて、動きも活発になってきたので、実家の両親の負担も考えて、私の働き方を見直す時期が来たのかなと考えています。

— 仕事をセーブするということですか?

石川 息子が1歳半にして自分の世界を見せつけてくるようになったんですよ(笑)。「こんなクリエイティブなことはないだろう」と、彼の世界を密に楽しもうと思っています。秋田に戻ってから約5年活動してたくさん吐き出したので、これからは企画や演奏のためにもたっぷり吸う期間にしようかなと。

— 今後はお子さん向けの企画なども考えられますか?

石川 特に「子供向けの企画を」とは考えていなくて、大人が全力で音楽やお酒を楽しんでいるところを子ども達が見て、何かを感じ取ってくれるような企画にしたいですね。イベントの開催時間を工夫することも大事です。以前、親子連れのイベントを平日10時で企画したら、あっという間に埋まったんですよ。

— ご主人とはお仕事もほぼご一緒だそうですが、仕事と家庭の連携で工夫していることは?

石川 お金、仕事、家族の時間のすべてを満足することはできないので、「大事なものが何なのか」ということを常に共有することです。今まで私が好き勝手やってきたので、これからは私が寛容になろうかな(笑)。夫もこれからはやりたいことをどんどんやって欲しいですね。

— 石川さんがこれからやりたいことはありますか?

石川 息子を外国にたくさん連れて行って、その土地の音楽やにおい、空間に触れさせたいです。息子が見る風景を、私も一緒に見ていきたいですね!

実は取材前に、息子さんを初の海外旅行に連れて行っていたそうで、「息子はなんでも食べるし何も問題はなかったのに、私が緊張してバスにリュックを忘れたりといろいろ珍道中でした(笑)」とエピソードを教えてくださいました。充電期間が終わったら、どんな企画と演奏を見せてくれるのか楽しみです!

【石川真由子さんプロフィール】
秋田市出身。東京学芸大学卒。30歳で帰秋し、夫・鈴木雄大氏と共に、「hanauta」を立ち上げる。2014年、三種町・松庵寺の副住職、渡辺英心氏を中心とした仏教的レゲエバンド「英心 & Meditationalies」を結成。一男の母。
hanautaweb
フェイスブックページ はなうた/hanauta
インスタグラム hanauta_studio

【石川さんからプレゼントのお知らせ!】
今回なんと石川さんから、「英心 & Meditationalies」のファーストフルアルバム『からっぽ』と、セカンドアルバム『過疎地の出来事』を各1名様にプレゼント!
プレゼントご希望の方は、こちらのa.womanお問い合わせにメールでお申し込みください。文頭に「(アルバム名を記入)プレゼント希望」と明記し、続けて氏名住所電話番号を必ずご記入の上、送信ください。
応募締め切り:2019年2月28日(木)
※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。


ファーストフルアルバム『からっぽ』

セカンドアルバム『過疎地の出来事』
こちらから試聴できます

【今後のhanauta企画演奏会】
■伊藤志宏&岩川光DUO JAPAN TOUR 2019
ケーナとピアノの鬼才による音のジェットコースター!
とにかく、ジャンル云々ではなく 音楽でまだまだ新しい体験ができるということを体感してください。
日時/2019年3月23日(土)開場18:00 開演18:30
会場/カフェ・ブルージュ(秋田市南通築地6-17)
料金/前売4,000円 当日4,500円

■青谷明日香×めかるwithはなうた室内管弦楽団
青谷さんの歌声を、バイオリン、フルート、ホルン…さまざまな楽器とともにお楽しみください。
お子様連れ大歓迎!!ぜひ生の楽器の音色に触れてください。
日時/2019年4月29日(月祝)開場13:30 開演14:00
会場/アトリオンミニコンサートホール(秋田市中通2-3-8 アトリオン4階)
料金/前売3,000円 当日3,500円(未就学児無料/小学生〜高校生500円)

◎どちらもご予約お問い合わせは
メールフォーム http://hanautaweb.info/contact/ からどうぞ。

Writer

熊谷 清香

熊谷 清香

地元タウン誌や広告代理店勤務を経て、フリーランスで企画・編集・取材・インタビュー・ライティング等をしています。中高生の母。秋田市出身。

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