忙しくて時間に余裕がない、日々のタスクに追われている…そんな方にこそおすすめしたいのが、秋田市の喫茶店「交点」。お店を出て階段を降りてくる時には、世界が少しだけ素敵に見える。そんな愉しみ方を、喫茶、イベント、雑貨、3つの視点でご紹介します。
通町の一角、レンガ造りが印象的な建物。慎ましやかな看板横の、細い階段を上った先が交点の入り口です。店内はアーチ型の窓が並ぶシンプルなインテリア。コーヒーの香りと静かな音楽が、ゆったりと流れています。
交点は「人や文化、時間が交わる場所をつくりたい」という思いで、2019年にオープンしました。お店を営むのは穏やかな雰囲気のご夫婦。マスターの五十嵐聖隆(きよたか)さんと、麻友(まゆ)さんです。
①喫茶を愉しむ
コーヒーは2種類。通年楽しめる深煎りの「凪ぐ(なぐ)空を」と、季節限定のブレンドです。春夏は浅煎りの「囀り(さえずり)」、秋冬は中煎りの「仄月(ほのづき)」。美しい風景をイメージした味わいを表現してくれたのは、秋田市のロースター、08COFFEEです。
「凪ぐ空を」のオーダーは、以下のように伝えました。
晴の日は 凪ぐ空を仰ぎ望み
雨の日は 凪ぐ空を待ち望み
雪の日は 凪ぐ春を想い望む
深煎りでも苦すぎない、心休まる味わいです。
その他、チーズケーキなどのスイーツ、スパゲッティ(平日)やカレー(土日祝)などの軽食もあります。青木堂のパンを使ったトーストや、ほそかわ農園のりんごジュースなど、ご縁のあるお店の味を楽しめるメニューも。「今度はこのお店にも行ってみたいな」とワクワクが広がります。
②イベントを愉しむ
交点では、不定期で様々なイベントを企画しています。2022年冬には、秋田市に工房を構える版画家、伊藤由美子さんの作品展を開催しました。版画制作を体験するワークショップは大盛況だったそうです。インクが乾くのを待つ間は、コーヒーでひと息。参加者した方の楽しそうな声が聞こえてきそうです。
また、「写真」「器」などのテーマについて、自分の「好き」を思い思いに語らう場、小さなつどいは定番企画として続けて実施していく予定。アーティストやクリエイターを身近に感じたり、同じ趣味を持つ人と繋がることのできるイベントで、新たな視点を得られそうです。
イベントスケジュールはホームページ、インスタグラムからご確認ください。
③雑貨を愉しむ
聖隆さんは会社員だった頃から「いつかお店をやりたい」と雑貨を選び、集めてきたそうです。店内で使われている家具や雑貨は、デザインが洗練されているだけでなく、使い心地も良いものばかりです。例えばコーヒーのマグ。細身で手にするりと収まり、飲み口の丸みが優しい感触です。
家具の配置、調光、音楽。店内の全てのものが主張しすぎず、ちょうど良い余白とバランスを作り出しています。「あ、いいな」と思う雑貨との出会いも、交点の魅力。店内には、食器やコーヒー関連品だけでなく、五十嵐さんご夫妻セレクトの本やCDも販売されています。私は、素敵なエッセイとの出会いがありました!
お子様連れもOK
「喫茶店=静かに過ごす場所」という先入観がありましたが、「お子さんと一緒でも大丈夫ですよ」という言葉に勇気づけられて、取材後、小3の娘を連れてお邪魔しました。
大人びた雰囲気に少し緊張して、言葉数の少ない娘。五十嵐さんご夫婦は、無理に話しかけたりせず、ちょうど良い距離にいてくれるので、2人の時間をゆっくり過ごすことができました。娘が両手で持つりんごジュースのグラスや、トーストを食べて「チーズが伸びる」と笑った顔を、「娘が大人になっても、ここに来るたび思い出すんだろうな」と思い、あたたかい気持ちになりました。
ひとり、読書や書きものをして自分の世界に入っていく人。ふたりで和やかに語り合う人たち。若い学生さんからご年配の方まで、交点では、さまざまな人々が、思い思いの過ごし方をしています。五十嵐さんご夫婦は「いつ行ってもゆっくりコーヒーが飲める。町の風景に溶け込む喫茶店になりたい」と話します。慌ただしい日々に疲れたら、ほんのひと時、交点で時間を過ごしてみてください。きっと気持ちがリセットされるはずです。