五城目町の静かな集落に、2025年9月、古民家を改装して生まれたカフェ「ホサカケト」。迎えてくれるのは店主の保坂泉さんと娘の茜さん。はじめて訪れたのに、思わず「ただいま」と言いたくなる、ぬくもりに満ちた空間です。


千葉から秋田へ移住
保坂さん一家が五城目町へ移住したのは、2024年11月のこと。それまで泉さんは、レンタルスペースを借りて「グラママカフェ」という名前で定期的にカフェ営業をしていました。「いつか自然に囲まれた場所で暮らしたい」と土地探しをしていた時期に、秋田市に住む泉さんの母から「五城目は移住してきた人たちがのびのび暮らしている」と聞きました。五城目の物件を探しこの建物を見た瞬間に「ここで暮らしたい、ここでカフェをやりたい」と直感し、自然の豊かさや街の雰囲気に惹かれ、移住を決心しました。

野菜中心のやさしい料理
保坂家は普段から肉や乳製品はほとんど食べていません。きっかけは茜さんが高校生の頃「肉を食べない食生活を試したい」と言ったことでした。当時、慢性的な体調不良に悩んでいた茜さんは、肉を控えるようになってから偏頭痛などが以前より落ち着いたように感じると言います。元々料理好きだった泉さんは、最初は悩んだものの、続けるうちにメニューのバリエーションが増えていきました。「油が少ないから洗い物も楽で、洗剤も減って環境にも優しいんですよ」と泉さんは話します。


普段は肉や乳製品を控えていますが、肉もおいしく感謝して食べるのが保坂家のスタイルです。気負わず、無理せず、目の前の食材を丁寧に扱う自然な姿勢こそが、ホサカケトのやさしい味につながっています。
また、デザートには外国のレシピも多く並びます。成田にいた頃、海外の文化やメニューを教えてもらう機会が多かったそうです。

コンセプトは「あるものでつくる」
週替わりのランチには、10品前後の料理が並びます。大切にしているのは、フードロスを出さないこと。料理担当の泉さんは「1品あたりたくさんの量を作らないので、自然と品数が多くなるんです」と話します。あるものを無駄なく使い切ることを最優先にしているため、その日のメニューは材料次第。普通なら捨ててしまう部分まで、余すことなく使います。たとえば、さつまいものつるは煮物や味噌汁にしておいしく食べ切るそうです。
千葉にいた頃、農家の知り合いから規格外野菜を譲ってもらうことが多かった保坂家。茜さんは「作った方のお顔や人となりを知っていれば、廃棄するという発想には自然とならないと思うんです」と話します。


静かな時間が流れる、3つのくつろぎ空間
食事をいただく部屋は3つ。それぞれ違った居心地の良さがあります。柱の木目、畳の香り、古い建具が見せるあたたかな表情。古民家ならではの暮らしの軌跡が心地よい空間です。







日常によりそう場所に
茜さんは、歌手、写真家、そして五城目町の集落支援員としても活動しています。取材の際に歌っていただいたのですが、透明感ある歌声にとても癒されました。ぜひ多くの人に聞いてほしいです!今後はライブや作品展示のためのギャラリースペースづくりも計画中とのこと。
五城目町で暮らし始めてからは、必要な物を自然と分け合い、使わなくなった物は次の人に手渡される、そんなやり取りが身近に感じられるようになったそう。店内にある家具や器も、前の住人が残していったものや、地域の方々からのいただき物ばかりです。「モノって、本当は個人で抱えなくてもいい。必要な時に必要な人の元へ循環すれば、捨てるものはもっと減ると思うんです」と泉さん。店の一角では、物々交換スペースをつくる計画も進められています。

自然に囲まれた静かな古民家で、旬の野菜をたっぷり使ったおいしい食事をゆったり味わう時間は、気持ちをリセットさせてくれます。忙しい毎日をちょっと離れて、一息つきに出かけてみませんか?
DATA
【ホサカケト】
秋田県五城目町馬場目字寺庭悪141
営業時間/11:00〜16:00
定休日/不定休
駐車場/3台(お店から徒歩3分ほどの空き地)
支払方法/現金のみ
・ランチは数が少ないため予約がおすすめ
・スイーツのテイクアウトは容器持参
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