マルシェやワークショップを通じて絽刺し(ろざし)の魅力を伝えている、絽刺し作家「Rozasheri(ロザシェリ)」こと鈴木恵理子さん。1200年の歴史を持つ日本の伝統技法を、現代の暮らしに寄り添うデザインで表現しています。今回は、鈴木さんが紡ぐ絽刺しの魅力をご紹介します。

コロナ禍で出会った、ときめきの技法
鈴木さんと絽刺しとの出会いはコロナ禍。「何かできることはないか」と模索していた時、一冊の本で目にしたのが絽刺しでした。本物を見たこともなく、ただ写真で見ただけ。それでも、繊細な糸が織りなす模様に心が動いたといいます。

家庭科や裁縫が得意だったわけではない。それでも「やってみたい」と思ったのは、仕事とは別の新しい何かにチャレンジしたかったから。独学で本を見ながら手探りで始め、試行錯誤を重ねながら、次第に絽刺しの奥深さに惹かれていったそう。そこから日本手工芸指導協会に所属して学びを深め、師範の資格を取得。いまでは毎日の空き時間を見つけては針を持ち、絽刺しのある暮らしを楽しんでいます。

デザイン画は描かない。ひと刺しずつ生まれる表情
絽刺しは、絽(ろ)と呼ばれる目の粗い生地に、絹糸を通して模様を作る技法です。奈良時代には帯や着物に施され広く一般に親しまれてきました。鹿の子、七宝、麻の葉など、元々は決まった伝統柄があります。そんな伝統を大切にしながらも、鈴木さんの作品は、それをそのまま踏襲するのではなく、自分流にアレンジしているところが魅力です。

繊細で複雑な模様が美しい鈴木さんの作品。実は、デザイン画を描かないそうです。計画通りにいかない面白さを楽しみながら、ひと刺しずつ糸を通し、次の色を、次の模様をイメージしていきます。そして何より大切にしているのが、日本っぽくないデザインです。日本の伝統技法でありながら、普段使いできるように。帆布バッグやネックレス、ファッションのワンポイントとして、日常に自然に溶け込むアクセサリーに仕立てています。伝統を守りながら、現代の暮らしに寄り添う。それがRozasheriの絽刺しです。

マルシェとワークショップで伝える想い
秋田県内を中心にマルシェイベントに出展している鈴木さん。絽刺しを知っているか尋ねると、これまで出会った人の中で知っていたのはたった一人だけ。1200年の歴史を持つ伝統刺繍ですが、その知名度はまだまだ低いのが現実です。

そこで始めたのが、ワークショップでした。現在はイベント出店のブースで少人数を対象に開催していますが、今後は要望があれば定期的に開催したいと考えているそうです。糸の引き具合によって仕上がりが全く異なり、ふわっとなったり綺麗に引き締まったり。参加者それぞれの作品を見ることで、鈴木さん自身も多くの学びがあったそうです。

地道に、世界へ。広がる絽刺しの可能性
薬剤師を経て、日本語教師として留学生に日本の文化や言葉を伝えてきたという経歴を持つ鈴木さん。第三の人生として選んだのが、絽刺し作家という道でした。

「地道に絽刺しを普及させていきたい。クラフトイベントへの出展も大切にしながら、絽刺しってこんなに素敵なんだって思ってくれる人が増えたら嬉しいです」と語る鈴木さん。いずれは世界に絽刺しの魅力を届けたいという夢もあります。その実現に向けた大きな一歩として、2026年には東京で初めての個展「絽刺し展」を開催する予定です。

カラフルな絹糸で紡がれる繊細な模様は、雪に覆われた秋田の冬に鮮やかに映えます。ひと刺しずつ作品を紡ぐように、丁寧に絽刺しの魅力を伝えていく。そんな鈴木さんの想いが伝わってきました。イベントなどで見かけたら、ぜひその繊細な美しさを実際に感じてみてください。
DATA
【Rozasheri】
秋田県出身。絽刺し作家。2020年より絽刺し制作に取り組む。東北地方でのクラフト展出展を中心に活動。日本手工芸指導協会「絽ざし」師範。
Instagram
<今後の出展予定>
⚫︎2026年3月 文化創造館「小さな冬のクラフト展」
⚫︎2026年10月 東京Lucite Gallery 「Rozasheri 絽刺し展」
※出展情報やワークショップについてはInstagramで随時更新
