キャンプやバーベキューに憧れるけれど、道具もないし、なかなかチャンスがない―。そんな人にお勧めしたいのが「グランピング」です。宿泊するのはドーム型の快適なテント。バーベキューの道具も食材も用意されているので、準備や片付けの手間がかかりません。2023年夏、にかほ市にオープンした99glam(キューキューグラム)は女性たちを中心に人気のグランピング。泊まって帰るだけでなく、訪れた人に地元の魅力を知ってもらおうとさまざまな工夫を凝らしています。
白いドーム型テントにわくわく
99glamはにかほ市三森にある老舗旅館「いちゑ」が営んでおり、隣接する広場に白いドーム型のテント(全10棟)が並んでいます。
それぞれのテントにテラスがあり、夕食はここでバーベキューを楽しみます。テラスには仕切り用のカーテンがついているのでお隣も気になりません。
明るく開放感のあるドーム型の客室
お部屋はプレミアム(1泊2食付き、秋田県民応援割で大人1人18,400円~)、スタンダード(1泊2食付き、秋田県民応援割で大人1人16,200円~)の2種。ペットと一緒に泊まれる部屋も新たに2室設けました。
どの部屋もセミダブルのベッドが2台、布団が2組備わっているので一室に最大4人で宿泊できます。全室Wi-Fiを無料で利用でき、冷蔵庫にケトル、エスプレッソマシーンがあるのもうれしい♪。部屋着にフェイスタオル、歯ブラシ、かみそりなどアメニティも充実しています。
窓ぎわに大きなビーズソファ「Yogibo(ヨギボー)」が2つ。お客様に少しでもゆったり過ごしてもらおうと、マネージャーの庄司浩輔さんの発案で全室に取り入れました。
お風呂とトイレは隣接する「いちゑ」を利用します。弱アルカリ性の温泉は泉質がやわらかく、とても温まります。
産地にこだわった食材をグリルでじっくり
夕食はバーベキューです。由利牛や大館産の比内地鶏、地元の魚介類—。産地にこだわった新鮮な食材が並びます。野菜は好きな種類を好きなだけ選ぶことができ、お酒とジュースは飲み放題。野菜と飲み物はセルフサービスで旅館内のラウンジから運びます。
肉類には軽く塩コショウをし、アメリカ製のグリルでじっくりと焼き上げます。
新鮮な素材はシンプルな味付けで十分においしい。ピザにのっているのは地元の名産「イチジク甘露煮」。チーズのコクに果肉の甘さがマッチしてスイーツのような味わいです。
食材や焼き加減についてはスタッフが丁寧に説明してくれるので初心者でも安心です。
キャンプファイヤーでマシュマロを焼く!
午後7時。中央の小島にキャンプファイヤーがともりました。
炎のそばで、串刺しにしたマシュマを焼く子どもたちの姿がありました。トロっと溶けたマシュマロをチョコと一緒にクッキーにはさんで、いただきます! これぞキャンプですね。
99glamにはさまざまなゲストが訪れています。若い世代の女性やカップル、家族連れ。中にはご高齢のお母さんへの「プレゼント」として一緒にグランピングを楽しむ人もいます。ゲストの多くはインスタグラムを通じて99glamを「発見」。秋田県はもちろん、東北各県から予約があるそうです。
にかほを旅する無料ツアーを展開
さらに99glamが力を入れているのが、無料で参加できるツアーです。3つのコースがあります。
▷鳥海山の伏流水が湧き出る元滝、奈曽の白滝を巡るツアー(3時間半)
▷冬師湿原と鳥海山の絶景スポットを巡るトレッキングツアー(3時間半)
▷鳥海山の星空を満喫する仁賀保高原天体観測ツアー(2時間)
99glamからミニバンに乗って出発。いずれのコースも鳥海山・飛島ジオパークの認定ガイドが随行し、にかほの歴史や成り立ちに触れながら案内してくれます。
「ここから、にかほを発信したい」
庄司さんは「このツアーは無料であることに意味があると思っています」と話します。「私たちがしたいのは『にかほの発信』です。にかほに行ってみたい、また行ってみよう、と思えるような仕組みを発信して、にかほに遊びに行くなら99glamに泊まろうと思ってもらいたい。99glamへの宿泊を『目的』から『手段』に変えていきたい」
にかほは、松尾芭蕉が「おくのほそみち」で訪れた最北の地として知られます。かつては無数の小島が海に浮かぶ「九十九島」が広がり、日本三景の松島と並び称される歌枕の地でした。地元の田んぼには、その名残の小さな島々が今も点在しています。「99glam」の名は、この九十九島にちなんでいるのだそうです。
「地元だけれど知らないことって、意外にあると思います。ここをベースにして、秋田の皆さんににかほを楽しんでほしいです」と庄司さん。
グランピングで贅沢な時を過ごしながら、知らない秋田を歩いてみる。地域を包み込むような旅に、ぜひお出かけください。