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対話から生まれるコミュニティづくり。人と人がつながる場所

五城目町集落支援員 八嶋美恵子

八嶋美恵子さんは、2021年3月に夫の活動拠点である五城目に移住しました。現在は五城目町の集落支援員として地域活動に取り組んでいます。地域に根ざしたコミュニティづくりを大切にしながら、昨年からチームで水害のあった地域を中心に「町内全戸個別訪問」を実施。また、朝市通りの「貸し棚おうみや」の運営し、地元の人々が集い共有し交流する場所を提供しています。今回は、そんな八嶋さんに移住の経緯や地域活動への思いを伺いました。

たくさんのご縁を感じて決めた五城目への移住

-五城目に移住したきっかけを教えてください

八嶋 直接的なきっかけは夫です。夫は静岡出身の総合診療医で、秋田大学医学部卒業後、関東の病院に勤務しながら月に一度、八郎潟町の湖東病院に通っていました。地域医療への強い思いを持つ夫と共に、私も五城目を訪れる機会が増え、ご縁を感じて移住を決めました。

(五城目のシンボル、森山)

ー都会から五城目への移住に不安はありませんでしたか?

八嶋 小さい頃から田んぼで泥だらけになって遊ぶことや植物の絵を描くことが好きで「いつか自然と共に暮らす生活が出来たらいいな」と思っていました。学生時代には、五城目町の茅葺古民家を仮想の村に見立てた「シェアビレッジ町村」に何度か宿泊し、朝市に出店したりして五城目での暮らしを具体的にイメージできたことも移住の決断につながりました。もちろん、課題もありますが、地域で活動しながら交流を深めることで、多くの学びを得ています。

多くの学びを経て、五城目で実現したフィールドワーク

ー地域活動に興味を持ったのはいつ頃からですか?

八嶋 高校生の頃、震災後に茨城県常陸太田市での研修を経験し、地域活動に関心を持つようになりました。地元の方が郷土料理の作り方を教えてくれて、地域の皆さんが協力し合いながら課題に取り組む姿に触れ、その楽しさと大切さを実感したのがきっかけです。
その後、祖父が認知症を患い介護が必要になった際に、「KAIGO LEADERS」というコミュニティと出会いました。医療や福祉のの課題を「社会」の問題として捉えるのではなく、「自分ごと」として向き合い、仲間と語り合うことを通して大好きな祖父との時間を大切に過ごすことができました。このコミュニティで、自分がしてもらったように「自分に向き合う」(KAIGO MY PROJECT)ワークショップのファシリテーターとして活動する中で、同じくファシリテーターをしていた夫とも出会いました。

(ワークショップのファシリテーターとして)


大学では社会福祉学を専攻し、さらに大学院では「家族介護における、介護者の想い」についてメタ統合する修士論文を執筆。介護現場での実習も経て社会福祉士の国家資格を取得しました。留学先のシンガポールでは、多国籍・多文化の人々と一緒に地域での活動する中で、お互いの考えの相違点を語り合った経験も現在の活動へとつながっています。

(シンガポール、チャイナタウン在住のおばあちゃんと一緒に中国の伝統的な料理を楽しむ)

ー移住後の活動について教えてください

八嶋 移住した年はフリーランスとして活動していました。古民家の掃除や、幼稚園・小学校での事業のサポート、イベントのファシリテーター、カフェ店員、地域活動のボランティアなど、地域の方々に仕事を紹介してもらい、助けてもらう中で町と人と濃く触れ合う一年を過ごしました。

(五城目の朝ぷらにて。健康相談)


翌年の2022年4月にお声かけいただき五城目町の集落支援員に就任。馬場目地区のコミュニティ生活圏形成事業の下支えをしたり、2023年の水害後の2024年度からは、町役場との綿密な連携のもと(特に水害などのあった地域を中心に)「高齢者に限らず全戸訪問をし、見逃されたニーズに気づき、繋げる」という目標を掲げて複数人のチームでの活動を動き始めました。住民の皆さんとじっくりお話ししながら、日々の暮らしの中で困っていることを聞き、地域の課題を整理し、多機関・地域の方々と一緒に解決策を考えていく時間はとても貴重な機会となっています。

(2022年からは毎年ヴァイオリン音楽会を企画開催。世界で活躍している音楽家の演奏をみんなで楽しめます)


集落支援員の活動を始めた頃に妊娠が分かりましたが、出産前までイベントの企画運営などさまざまな活動を続けさせてもらいました。産後も息子を抱っこしながら訪問活動を行い、訪れる先々で温かく迎えていただきました。

(出産前のイベントは大きなお腹で無事に終了)

(集落支援の仕事についてお話しした時。息子と一緒にお仕事をさせていただきました)

人と人がつながって、「その人」が輝ける居場所を

ー運営している「貸し棚おうみや」についても教えてください

八嶋 朝市通りにある「貸し棚おうみや」は、誰もがふらっと立ち寄れる、地域の人たちとつながることができる場所です。ここでは「好きなこと」を自由に表現できて、訪れる人がそれぞれの形で過ごせるのが魅力です。

(おうみやの店内)


私自身、この場所を「ただの貸し棚」ではなく、「人と人がつながる居場所」として考えています。誰が来てもいいし、どんな形で関わってもいい。作品や商品を展示・販売することはもちろん、交流の場として使ったり、ちょっとした息抜きの空間として過ごしたりすることもできます。地域の人が自然と集まれる場所にしていきたいと思っています。
店内の壁には「趣味の棚」「ショップ棚」の2種類があり、趣味の棚は、自分のおすすめアイテムや本の貸し出しをすることができる棚、ショップ棚は、店舗を持つのが難しくても気軽に商品販売できるように雲1つをレンタルし自分の商品を販売する事ができます。

(趣味の棚。自分の「好き」をシェアできます。写真提供:本田望恵)

(ショップ棚。県外から届く商品もあります。写真提供:本田望恵)

ー今後の活動について教えてください

八嶋 これからも興味のあることは積極的にチャレンジしていきたいです!集落支援員はもちろん、「貸し棚おうみや」に今まで来たことがない人にも関心を持ってもらえるように様々な形で発信していきたいです。
また昨年は、都会の高校生を「探求型修学旅行」として受け入れる取り組みをしました。五城目というフィールドで「自分にはどんなことができるのか」を考え、実際に地域の人々と交流しながら学ぶ機会を提供することで、新しい視点や気づきを得てもらえたらと思っています。

八嶋さんと話していると不思議と「自分はとても素敵な人なのかも?」と思えてきます。彼女の対話には、人の魅力を自然に引き出し、前向きな気持ちにする力があります。地域活動もその延長線上にあり、人と人がつながることで、新しい未来が広がっていきます。五城目のまちづくりは、そんな温かい言葉の積み重ねによって形づくられているように感じました。

※写真提供:八嶋美恵子

DATA

【八嶋美恵子さんプロフィール】
1児の母。シカゴ生まれ、千葉東京育ち。ソーシャルワーカー。大学・大学院で福祉を学び、ファシリテーターとしての実績を積む。
学生時代から何度か訪れていた五城目に2021年に移住し、2022年から集落支援員として活動を始める。有限会社ジュデイの代表として、2024年からは集落支援員の業務をチームで受託、さらに学生向けの研修事業も行っている。朝市通りにある「貸し棚おうみや」を夫婦で運営。五城目をフィールドにコミュニティ作りを実践している。

【貸し棚おうみや】
住所/秋田県南秋田郡五城目町字下夕町234-3(朝市通り)
駐車場/なし
営業日/水・金・日(10:00~12:00・13:00~16:00)
五城目の朝ぷらが土曜日にある時は合わせてオープンしている。詳しくはインスタでご確認をお願いします。
Instagram

Writer

JUN

JUN

秋田市在住。3児の母。 外に出て人と会うことが好き。 カラーセラピー・占い師としても活動しています。
https://www.instagram.com/colortherapist_jun/

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