仙北市角館の静かなお寺の一角に、頑張る女性たちのかかりつけサロンがあります。県内でも珍しい本格ハーブブレンドよもぎ蒸しとトリートメントで、心も体もぽかぽかに。4児の母であり、お寺のお嫁さんでもある菊地まいさんが、2024年9月にオープンした「&On（アンドオン）」。これまでの道のりやサロンオープンの経緯を伺いました。

角館でサロンを開く夢を描いて

ーサロンオープンまでの経緯を教えてください。

菊地　私は千葉県出身で、地元ではウェディング関係の仕事をしていました。僧侶の夫と結婚し、千葉で3人の子どもを出産。その後、夫の仕事の都合でハワイに移住することになったんです。私は就労ビザがなく働けなかったので、子育ての合間に資格取得に励みました。そこで出会ったのがロミロミマッサージです。学べば学ぶほど奥深さに惹かれ、ハワイ州マッサージライセンスを取得しました。

―角館でサロンを開こうと決めたのはなぜですか？

菊地　資格を取得した頃には、「いずれ秋田で技術を活かせたら」と考えていました。将来は夫の実家であるお寺に戻ることは決まっていたので、そのときに役立てられるようスキルを磨き続けようと思っていました。夫の応援も大きかったです。

母と自分の経験が導いた、よもぎ蒸しとの出会い

―よもぎ蒸しを取り入れようと思ったきっかけは？

菊地　きっかけは4人目の里帰り出産でした。母は更年期の症状が始まり、私は産後で心身ともに疲れ切った日々。そんな時に出会ったのがよもぎ蒸しです。通ううちに、身体の芯から少しずつ温まって気力が戻ってくるのを感じました。それと同時に、「母のように変化の時期にいる女性たちの力にもなれるのでは」と思うようになったんです。秋田にはまだよもぎ蒸しのサロンが少ないので、一人でも多くの女性に体験してもらえたらと思っています。

― 実際にサロンを始めたのはどのタイミングだったのでしょう？

菊地　2020年にハワイから角館へ移住して4人目を出産し、その子が保育園に入った2024年、念願のサロンをオープンしました。店名の「&On」は、「&＝安堵」「On＝温」から。ほっとできて、温かい気持ちになれる場所でありたいという想いを込めています。 

35種類のハーブから選ぶ、オーダーメイドの癒し

―サロンのこだわりを教えてください！ 

菊地　大切にしているのは、「その日のその人に合うケアをすること」です。すべての軸になるのがハーブブレンドよもぎ蒸し。35種類のハーブを一つずつ香って、心と体が”いま”求めている香りを選んでもらいます。好きな香りを組み合わせて作るブレンドには、その日の状態がそのまま映し出されるんです。その香りに包まれながらじんわり温まり、巡りが整ってきたところでロミロミや頭ほぐしへ。その日の体に合わせた、オーダーメイドの癒しを体験していただけます。

―おすすめのメニューは？

菊地　一番人気は「深層デトックスコース」です。ハーブブレンドよもぎ蒸し、全身のロミロミリンパトリートメント、巻き肩調整の筋膜リリース、極上あたまほぐしと、170分かけてじっくり全身を整えていきます。更年期の不調や慢性疲労に悩む方に特に喜ばれているメニューです。

―サロンにはどんな方が通っていますか？

菊地　月1〜2回通ってくださる方が多く、40〜60代の女性が中心です。SNSや口コミで見つけてくださる方がほとんどで、「来店の日を楽しみに頑張ってきました」と言ってもらえると私もすごくやりがいを感じます。ペアのよもぎ蒸しも好評で、友達同士やご夫婦で来てくださる方も。完全予約制で貸切のプライベート空間なので、誰にも気兼ねせず過ごしていただけます。

―サロンで心がけていることは？

菊地　お客様が前向きな気持ちで日常に戻れるよう、後押しすることを大切にしています。そのためには、私自身が常に新しい知識や技術を学び続けることが欠かせません。自分も成長しながら、一人ひとりに寄り添ったサービスを提供していきたいと思っています。

―今後の目標を教えてください。

菊地 　頑張る女性たちの「かかりつけサロン」として、長く続けていきたいと思っています。言葉にしづらい不調を抱える女性のよりどころでありたいんです。 そして、サロンを通してお寺を身近に感じてほしいという思いもあります。特別な日だけでなく、心と体を整える場所としてお寺が日常の一部になれば嬉しいですね。母として、お寺の嫁として、そしてセラピストとして。すべての役割を大切にしながら、女性たちの健康を支えていきたいと思っています。

ハワイでの学び、子育て、そしてお寺という特別な場所。すべての経験が重なり合って生まれたサロンには、菊地さんの「女性たちに力になりたい」という想いが詰まっています。自身の体験から癒しの大切さを知ったからこそ、訪れる人の心と身体に丁寧に寄り添えるのでしょう。言葉にならない疲れを抱えている方は、ぜひ一度訪れてみてください。