2024年8月に『うた×バト1』(アルファポリスきずな文庫)で小説家デビューした、鹿角市在住の緋村燐(ひむらりん)さん(本名:菅原友美さん)。高校生の頃から20年以上にわたり小説を書き続け、ついに夢を叶え小説家としてデビューしました。4冊目の書籍発売を控えた今、創作のきっかけや執筆の裏側について、じっくりお話を伺いました。

「このままじゃ小説家になれない」と、一度やめた執筆を再開
─小説を書き始めたきっかけを教えてください。
緋村 小学生の頃は読書が苦手だったんですが、中学校の朝読書の時間をきっかけに、「コバルト文庫」などのライトノベルにハマりました。いろいろ読むうちに「もっと自分好みの本が欲しい」と思うようになって、「ないなら自分で書けばいい!」と、高校生の頃から書き始めました。それから結婚して出産してもずっと書き続けてきたんですが、2人目を妊娠中に一度やめてしまって。その子が4歳になった頃に、「このまま書かずにいたら、小説家になれないままだ」と思って再開しました。そこからは、もうひたすら書いています。
─小説家になりたいと思ったのはどうしてですか?
緋村 誰でも持っている感情だと思うんですが、「何者かになりたい」という気持ちがずっとあって、「1冊でもいいから、自分の作品を世に出したい」と思い続けていました。それと、高校生の時、母に「小説家になりたい」と言ったら、「なれるわけがない」と否定されてしまって。「じゃあなってやろうじゃん!」っていう反骨精神もありましたね。
─初の書籍化を経て、小説家としてデビューした時のことを教えてください。
緋村 最初に書籍化した『うた×バト』は、出版社が運営する小説投稿サイトの児童文庫コンテストでの受賞がきっかけでした。約800作の中から、大賞に次ぐ優秀賞3作のうちの一つに選んでいただきました。

─これまで、どのような作品を書いてきましたか?
緋村 高校生の頃は、今でいうキャラ文芸とかライト文芸と呼ばれるような作品を書いていて、その後ケータイ小説が流行った頃には、もう少し軽い文体のものを書くようになりました。そこから次第に子ども向けを意識するようになって、今の児童文庫にたどり着いた感じです。
─子ども向けの作風を意識した理由を教えてください。
緋村 子ども向けの児童文庫だと、挿絵の数が多いんです。プロのイラストレーターさんに絵を描いてもらえることは、小説家としての楽しみの一つなので。
─差し絵が自分のイメージと違うことはないのでしょうか?
緋村 それが、まったくないんですよね。いつもイメージにぴったりなんです。私がイラストレーターさんと直接やりとりすることはないのですが、編集さんにキャラクターの性格や髪色、目の色、雰囲気などを伝えています。その情報をもとに、的確にイメージを共有してくれているんだと思います。

パズルのような感覚で小説を組み立てる
─キャラクターやストーリーのアイデアは、どのように生まれるのですか。
緋村 他の方の小説や漫画、映画などの作品からヒントをもらっています。そのままモデルにすることはないですが、既存のキャラクターの属性同士を組み合わせて新しいキャラクターを作ったり、展開の順番を並び替えてストーリーの構成を考えたりしますね。私はどちらかというと理数系なので、パズルのような感覚で創作しています。
─具体的に、どのような順番で執筆しているのでしょうか。
緋村 まず、展開やキャラクター、設定などのネタ出しをします。その後、主要キャラクターの細かい設定や全体の流れ、タイトル、あらすじ、キーワード、舞台設定などをまとめたプロットを作ります。それをもとに、本文の執筆に入ります。


─プロットには、本文では描かれない裏設定なども書かれているのでしょうか?
緋村 書いています。そういう裏設定があるという前提で書くと、キャラクターの仕草や行動がよりはっきりとイメージできるので。
─途中で設定を変えたくなったり、展開に自信が持てなくなったりすることはないのでしょうか?
緋村 設定を変更した方がよくなると思った時は変更しています。あとは、もし自信がなくなってもひたすら書く。それしかないですね。一番書きたいのはラストなので、そこに向けて、「とにかくここを書ききらないと先に進めない!」って思いながら書いています。
─最後まで書ききることが大切なんですね。
緋村 そうですね。実は、高校生の頃は一度も最後まで書ききることができなかったんです。でも、ケータイ小説としてインターネット上で公開した時に、読者の方から感想をいただいて、そのおかげで初めて最後まで書けました。その経験がなかったら、いまだに書きあげられなかったかもしれません。
─どんな感想をもらうと嬉しいですか?
緋村 40万字ほどの長編に、「ノンストップで一気に読んでしまいました」と言ってもらえた時はすごく嬉しかったです。でも、「面白かった」だけでも十分嬉しいです!いただいた感想は全て保存しています。
─小説を書く上で、一番大切にしていることを教えてください。
緋村 自分が楽しい・面白いと思って書いたものを、読者も楽しんでくれるように、ちゃんと書きあげることです。

─書籍化する際は、どのような作業をするのでしょうか?
緋村 作品によりますが、例えば、3月28日に発売される『親友に全てを奪われた毒巫女は最強結界師の身籠もり花嫁』(スターツ出版文庫)は、もともと「ノベマ!」という小説投稿サイトの短編小説コンテストに出すために、3万字弱で書いた作品です。それを、書籍化にあたり大幅に加筆し、10万字以上の長編に仕上げました。
昨年発売した『妹に裏切られた後宮の最下妃の私が今宵、ご懐妊いたしました』(スターツ出版文庫)も、最初は「ノベマ!」の短編コンテストに出した作品なのですが、賞にはかすりもしなくて…。でも、自分では面白いと思っていたから、その後長編化して、別のコンテストに出したんです。結局、そこでも全然かすらなかったんですが(笑)、後から編集さんが見つけてくれて、書籍化していただきました。
メディア化を目指して書き続けたい
─緋村さんの趣味を教えてください。
緋村 基本的に、手を動かしてものを作ることはなんでも好きです。裁縫や料理、お菓子作りも好きですし、絵も描きます。最近はあまり時間がないのですが、娘の誕生日にプリキュアの衣装を作ったこともあります。あとはやっぱり読書も趣味ですね。

─現在、パートのお仕事もされているそうですが、両立は大変ではないですか?
緋村 むしろ、人と話したり会ったりできる環境がないと辛くなりそうなので、バランスがとれていると思います。小説を書いているだけだと本当に人に会わないので、刺激が無くなっちゃいそうで…。でも、やっぱり執筆のお仕事は寝不足になりがちです(笑)。
─今後の目標を教えてください。
緋村 毎年1冊は出せるように書き続けたいですね。あとは、自分の作品をコミカライズやアニメ化してもらえたら嬉しいです。そうなれるように書き続けたいなと思っています。
取材前日も深夜まで書籍化のために執筆作業をしていたという緋村さん。執筆にパート、育児と多忙な日々を送りながらも、「小説を書くことがストレス解消になっている」と笑顔で語ってくれました。好きなことを諦めずに続けることの大切さを、改めて感じさせてくれるインタビューでした。
DATA
【緋村燐さん】
鹿角市生まれ。二児の母。高校時代から小説を書き始め、小説投稿サイトなどで発表し人気を集める。2024年8月に『うた×バト1』(アルファポリスきずな文庫)で小説家デビュー。その後、『うた×バト2』(アルファポリスきずな文庫/2025年6月)、『妹に裏切られた後宮の最下妃の私が今宵、ご懐妊いたしました』(スターツ出版文庫/2025年6月)を刊行。2026年3月28日に『親友に全てを奪われた毒巫女は最強結界師の身籠もり花嫁』(スターツ出版文庫)を発売予定。
