大館市新町に、鮮やかなピンク色の外壁が目を引く、かわいらしい建物があります。
1階は、2023年11月にオープンした大館市初の民間学童施設「Shunkodo」。子どもがホッとするサードプレイスを提供しています。隣接する建物の2階は、開室39年目を迎える学習塾「学研 新町教室」。2024年からはフリースクールの取り組みも強化し、多様な子どもの学びを支えています。
親子2代で、現代の子どもたちの居場所づくりに取り組む場所をご紹介します。

多様な子どもを支える学習塾兼フリースクール「学研 新町教室」
個別指導型の学習塾「学研 新町教室」を運営するのは、小中学校での教員経験を持つ飯塚和恵(いいづかかずえ)さん。1986年の開室以来、地域の子どもたちに向き合い続け、今では親の代から通う家庭もあるそうです。
また、2024年から本格的に打ち出しているフリースクール方式は、開室時間や授業内容を一人ひとりに合わせて調整。学習面だけでなく、社会性や所作の指導、保護者のカウンセリングなども行っており、悩みや困りごとを持つ家庭を丁寧にサポートしてくれます。

飯塚さんが塾を開いたのは、長男の学校生活でのつまずきがきっかけでした。学校の授業の進行や評価方法に違和感を覚え、「より本人に合った形で学びを支えたい」と考えるようになったといいます。そのため、早期から「困っている子にこそ手厚くしてあげたい」という想いを抱いてきました。また、教員時代には、情緒障害を持つ児童のための心理治療施設に勤務したこともあり、「学校に行かなくても選択肢はある」という考えを持っています。
そんな飯塚さんが運営する塾には、自然と多様な子どもが集まります。これまで、発達特性が強い子どもや、いじめ・不登校を経験した子どもなど、さまざまな子どもたちに寄り添い、その学びを支えてきました。その経験から、「自分自身の最終地点として、フリースクールをやりたい」という想いが強くなっていったといいます。
「不登校の子どもの親にとって、一番不安なのが学習面の遅れです。『勉強は私たちが見るから大丈夫』と言ってあげることで、まずは安心させてあげられる。また、『学校に行っていないことを周囲に話せない』というケースもあります。守秘義務を守りながら悩みに寄り添える第三者の存在は、家庭にとって大きな支えだとの声をいただいています」

ホッとできる民間学童施設「Shunkodo」
建物の1階部分は、大館市初の民間学童施設「Shunkodo」になっています。運営しているのは、飯塚さんの実の娘である武田知愛(たけだともえ)さんです。
武田さん自身も、小・中・高の教員免許を持っていますが、Shunkodoは学習の場ではなく、あくまでリラックススペース。子どもたちは自由に遊んだり、おやつを食べたりして過ごします。保護者の希望に合わせて、自主学習の見守りなども対応可能。また、運営は学習塾とは別なので、塾に通っていなくても利用できます。


武田さんが大切にしているのは、「子どもたちが頑張らなくてもいい、ホッとするようなサードプレイスを提供してあげたい」という想い。「私が子どもの頃は、隣接する建物が私たち家族の居住スペースで、今Shunkodoがある場所は祖父母が営む文具店でした。私にとって、祖父母のいるこの場所がまさに『安心できる場所』だったんです。たとえば、兄が母に叱られている時は文具店に逃げてきて、祖母におやつをもらって過ごしたり(笑)。現代は、逃げ場が無い中でパンパンになるまでがんばっている子が多いので、学童という形で、安心できる場所を提供してあげたいと思っています」

親子で支え合えることが強み
それぞれ違う形で現代の子どもたちが抱える問題と向き合う、飯塚さんと武田さん。互いのことをよく知り、信頼できる存在が近くにいることが、頼もしい支えになっていると言います。
「何かあってもお互いを頼れるし、フォローし合える。娘はずっと一番近くで私のことを見てきたから、塾のことも何でも知っているし、落ち込んだときも助けてくれるんです」と話すのは、母・飯塚さん。娘の武田さんも、「保護者の方から勉強も教えてほしいと言われることがあるけれど、私がそれをすると『ホッとする場所』ではなくなってしまう。そんなとき、学習面は母にバトンタッチできるのがありがたいなと思います」と話してくれました。

とっても素敵な関係性の二人が築く、温かいサードプレイス。子どものことで悩んだり、一人で抱え込んでしまいそうになったりしたときに、訪ねてみてはいかがでしょうか。きっと心強い味方になってくれますよ。