コーヒー豆を買うついでに、淹れたての「今日のコーヒー」をお店で一杯。秋田市「コーヒースタンド HaLo」の店主、伊藤咲織さんは「コーヒースタンド」というかたちでコーヒーの楽しみ方を提案しています。焙煎も手掛ける伊藤さんに、コーヒーの魅力についてうかがいました。
豆とドリンクのテイクアウト中心
コーヒースタンドは自家焙煎のところが多く、コーヒードリンクと豆のテイクアウトを主とする営業スタイルです。コーヒーを飲むスペースはありますが、滞在時間は短くお菓子も軽くつまむ程度。飲食が中心で滞在時間も長いカフェとは異なります。「コーヒーをいろいろなカフェメニューの中に埋もれさせることなく、コーヒーそのものの魅力を伝えたいと思いこの方式を選びました」と伊藤さん。駐車スペースも限られており店内飲食は短時間で、とインスタグラムで呼び掛けています。
お店に入ると、焙煎したてのコーヒー豆が出迎えてくれます。カウンターには、季節などに合わせて伊藤さんが厳選したスペシャルティコーヒーが8、9種類。スペシャルティコーヒーとは生産国、農園や生産者において生産や品質の管理が適正になされ、生産地の特徴的、魅力的な風味特性があるものを指します。香りや味といった豆の特徴に合わせて浅煎り、中煎り、深煎りと焙煎の度合いも調整しているそうです。
好みを聞いてアドバイスも
取材日の「本日のコーヒー」は浅煎りのケニアでした。「アフリカの強い光や大地の力を感じさせる豆で、シャープな酸味、濃厚な甘みのある個性的な味わいが特徴。ケニアのファンは多いですよ」と伊藤さん。ブレンドの豆は扱っていないため、ブレンド希望のお客さまには普段飲んでいるコーヒーについて聞き、それぞれの好みに合わせた豆をおすすめしています。
「豆から挽いてコーヒーを淹れていた父の影響もあり、コーヒー歴は結構長いです」という伊藤さん。東京で長く会社員をしていましたが、今の仕事につながるきっかけをたどると、おいしさに衝撃を受けたコーヒーとの出会いがありました。出社前に何気なくテイクアウトしたコーヒーの味に感動。「酸味があるのにおいしい!いったいこれは何だろう?と。それが、スペシャルティコーヒーの代表格ともいえるエチオピアのイルガチェフェだったと思います」
2020年からのコロナ渦により自宅で過ごす時間が増えると、手網によるコーヒー焙煎などにも挑戦。少しずつ独立の準備を進め、約30年にわたる東京での会社員生活を整理して2021年に秋田市にUターン。自分が本当においしいと思うコーヒーを広めたいと、翌2022年3月にコーヒースタンドを開業しました。
「浅煎り」という楽しみ方
「スペシャルティコーヒーが台頭してくるまでは中ー深煎りの豆が一般的だったので、慣れ親しんだ中煎り、深煎りのコーヒー豆を好まれる方が多いですね」と言う伊藤さん。実際、深煎りの豆がよく売れています。そこであえて提案しているのが「浅煎りの豆を試してみませんか」ということ。浅煎りの方が香りや味が際立つものがあり「浅煎りコーヒーになじみがある人はまだあまり多くありません。酸味と言うと”すっぱい”と思われがちですが、上質なコーヒーの酸味は果実感や甘さが感じられ、その爽やかな味わいからすっかり浅煎りにはまってしまう人もいます」といいます。
スタンドを始めて3年目に入り、母の日に合わせてお花とコラボしたギフトを企画したり、地元のアーティストの版画展を開いたりするなど、伊藤さんはあたためてきた計画を少しずつ形にしています。また、新たにコーヒーの焙煎を行う人が周囲に増えていることについて「ロースターが増えて質のよいコーヒーが身近になり、より深く知りたいと思う人が増えるのはいいこと」と歓迎。「気分や料理に合わせてお酒を選ぶように、コーヒー豆も季節やお菓子に合わせて選べたら、暮らしがより楽しく豊かになると思います」と、話してくれました。
慣れというものは怖いもので、好きだと思い込んで深煎りの豆ばかりを飲んできました。今回の取材で、伊藤さんに淹れてもらった浅煎りのコーヒーはまさに目からうろこの味でした。「たしかに酸味を感じるけれど、すっきりしていておいしい!」。朝や休憩の一杯をちょっといいコーヒーにしてみたい、そう思いました。
DATA
【コーヒースタンド HaLo(ハロ)】
住所/秋田市保戸野すわ町8-12千秋モール1F
営業時間/10:00~17:00(11月ー2月)
11:00~18:00(3月ー10月)
定休日/水曜、不定休あり
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