秋田市泉にある「小さな焼き菓子屋 プチボヌール」の一角に、ひっそりとたたずむ小さな本棚。それが今年1月にオープンした間借り書店「motto(もっと)」です。オーナーは、a.womanライターでもある畠山彩さん。整理収納アドバイザーとして活動する一方で、本好きが高じて本の交換会を主催したり、メディアでおすすめの本を紹介したりしてきました。間借り書店とはどんなものなか、伺ってきました。

心に効く本を。本棚一つ分の間借り書店
mottoはプチボヌールの店内を奥へ進んだ先にあります。焼き菓子が並ぶ陳列棚の前を通り、一段高くなった小部屋へ進むと、突き当りの壁に本棚が。その小さなスペースこそが、mottoの書店スペースです。4段の本棚には、畠山さんがこれまでに読んだ本の中からセレクトされたものが並んでいます。
ジャンルはエッセイや小説が中心。その理由はシンプルで、畠山さんが好きなものだから。「知識を増やす本も良いけれど、心に効く本を並べたくて」と話す畠山さん。並ぶ本にはいくつかのテーマが設けられ、その時々の気分や季節に合わせて選書されているそうです。「この本、私も好き!」と言われると嬉しくてたまらないそうで、「同じ本を読んでいるということは、同じ言葉を蓄えているということなので、ぐっと距離が縮まります」と、笑顔があふれていました。

ただただ「本の話がしたい」という思い
畠山さんが本を好きになったのは幼少の頃。しかし、小学生の頃は「趣味は読書」と答えることがどこか恥ずかしく、あまり公言しなかったとのこと。大人になってからは、本好きであることを堂々と言えるようになり、メディアで本を紹介する機会も増えました。
ずっと「いつか本屋をやってみたい」という夢はあったものの、「自分がやるのはおこがましい気がしていた」と畠山さんは振り返ります。しかし、さまざまな本のイベントに参加するうちに、「元々本に力があるのだから、自分が特別である必要はない」と考えるようになり、単発のイベントだけでなく、日常的に本の話ができる場所を作りたいという思いが芽生え、書店を開くことを決めたそうです。
本屋さんに憧れていることを、以前から「本の交換会」の会場として貸してくれていたプチボヌールのオーナーに相談したところ、快く承諾してくれたそうです。「他人の本棚を見るのって楽しいじゃないですか」と畠山さん。「mottoの本棚も『見てみて~!』っていう感覚で並べています」と笑顔で話していました。

本とお菓子とコーヒーと。店内に流れる優しい時間。
プチボヌールは、カラダに優しい素材で作られた焼き菓子が評判のお店。同じく間借りで営業している花喫茶Mのコーヒーも提供しているため、mottoの本を眺めながら、焼き菓子とコーヒーを楽しむこともできます。「お菓子を買いに来たついでにふらりと寄ってほしいし、本の話がしたいなと思った時に来てもらえたら嬉しいです」と微笑む畠山さん。焼き菓子の甘い香りに包まれながら本を手に取る、そんな日常の楽しみを与えてくれる空間です。


新しい世界へと導く「選書サービス」
mottoでは選書サービスも行っていて、アンケートに基づいて畠山さんがその人にぴったりの本を選んでくれます。「お客さんが普段読まないジャンルだけど、この本は好きそう…」と提案したものがピタリとハマった時は、喜びも倍増です。

整理収納アドバイザーとしても活動し、子育て中でもある畠山さんは在店時間が限られているため、店頭で対応できない場合は文通でやりとりをしています。「手紙のやりとりもワクワクするし、お店にいるときと同じくらい好きな時間になっています」と畠山さんは話していました。

本への愛情あふれる空間で有意義なひとときを
「普通の人がスマホを見ない日がないように、私は本を開かない日がないんです」と話す畠山さんの本への深い愛情が詰まった小さな書店「motto」。そこには、本を愛する人がふと立ち寄り、物語を通じて心を満たす時間が流れています。

いつも溢れんばかりの笑顔の畠山さん。本の話をしている時も例外ではありません。畠山さんが楽しそうに本の話をしているのを聞いていると、不思議と本を読んでみたくなるのです。そこには本に対する深い愛情があるからだと改めて感じました。みなさんもぜひ一度足を運んでみては?
DATA
【間借り書店 選書サービス motto(もっと)】
秋田市泉北4丁目16-22 小さな焼き菓子屋 プチボヌール内
Mail/ mottoakita@gmail.com
Instagram
※営業日や営業時間はSNSでご確認ください
≪4月のイベント情報≫
4月12日・13日 第10回お堀端の古本市
会場:秋田市文化創造館
主催者「ほんのたねあきた」のメンバーでもある畠山さん。
絵本販売で出店予定。
※畠山さんの出店は13日(日)のみ