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9SEPTEMBER
2020

今月のCLOSE UP

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マタギの里から日々のくらしの豊さを歌にする。イベント、CMソングで活躍するシンガーソングライター

シンガーソングライター 本城 奈々さん

本城奈々さん

秋田県北秋田市阿仁地域。マタギの里として知られる、山々に囲まれた秘境の地の中でも更に奥にある根子集落に、シンガーソングライター本城奈々さんは暮らしています。東京で音楽活動を続けた後、出身地である北秋田市にUターン。ふたりの男の子の育児に追われながらも音楽活動を行い、県内のイベントで歌ったり、CDを発表したり、CMソングの作詞作曲をしたりと活躍しています。自然に囲まれた地域で、育児をしながら歌を作り続ける苦労や暮らしを聞いてきました。

 

歌うことが大好きだから。働きながら歌い続けた東京時代

ー本城さんはいつからシンガーソングライターになろうと思ったのですか?

本城 子どもの頃からピアノを習ったり、地元の合唱団で歌っていたんですが、とにかく歌うことが大好きで、ずっと歌手になりたくて。高校2年生の時に受けたオーディションをきっかけに卒業後は上京して、働きながら音楽活動をはじめました。ライブハウスや路上で歌ったり、自主制作でCDを作って手配りで売ったりと、けっこう過酷でした。

本城さんイベント風景(いつも温かく迎えてくれる、地元のイベントで歌う本城さん/提供:本城奈々)

地元、北秋田市へUターン。歌で地域を元気に!

ー秋田へ戻るきっかけは何だったのでしょうか?

本城 いつかは秋田に帰りたいと考えていたのですが、東日本大震災の後、地元に帰省していた時に偶然レジデンスアーティストを募集していることを知ったんです。レジデンスアーティストというのは、ここで暮らしながら作品を作り、地域を元気にしようというもので、私も歌で貢献したいという想いと、これをきっかけに秋田に戻りたいと思い2012年5月から参加しました。1年間という短期間の取り組みでしたが、カメラマンや編集をしている他のアーティストたちと一緒に、一つ屋根の下で共同生活を送りながら活動しました。北秋田市の行事を取材して本を作ったり、展示会をやったり、名物のバター餅の歌を作ってイベントで歌ったり踊ったりと、忙しく濃い時間でしたね。

この時一緒に活動した写真家の旦那さんと結婚して、取材で訪れた根子に旦那さんが惚れ込んでしまって、ここに住むようになったんです。

自然豊かな田舎ぐらしと、子育てから感じたことを歌にする

ー根子での暮らしはどのようなところが魅力ですか?

本城 深い山々に囲まれながら四季を間近に感じられるところや、集落に伝わる伝統芸能(国の重要無形文化財指定)である「根子番楽」を皆で守り、お互いに想い合いながら暮らしているところです。

今回のコロナ騒動で、市内の小学校でも卒業式に保護者が同席できなくなり、「それは可哀想だ」と根子に唯一いる小学生の女の子のご両親へ、根子の若者たちでサプライズ卒業式を企画しました。皆、小さい頃から彼女の成長を共に見て、家族のような付き合いをしているからこそ想いもひとしおで、涙涙のとても思い出深い卒業式となりました。改めてこの地で皆とこうして感動を共にできる幸せと、集落への想いを強くした出来事でした。

ー 根子で音楽活動をすることや、子育てしながらの曲作りはどのような生活ですか?

本城 作曲は、やはり生みの苦しみがあります。でも根子に暮らしているからこそ、こういう曲ができたと、東京にいた時よりも素直に曲作りができるようになりました。自分の人生で大事にしたいものを自然に歌に込められるようになりましたね。若い頃は自分が歌いたいものを作っていたけど、音楽や歌声はずっと残るものだと思った時に、子どもたちにいいものを残そうと強く思うようになりました。ここで曲が作れて、子育てができて、本当に幸せだと思います。

ー子育てと音楽活動の両立は大変ですか?

本城 子どもがいると作曲や練習に集中できないけど、両親や旦那さんに助けてもらいながらやってます。イベントの時に子どもが熱を上げたりすると、申し訳ない気持ちになりますが、家族が協力してくれて有り難いですね。子どもができてから、人に頼って甘えられるうちは甘えようと思えるようになりました。
それと、子育てしていると自分のメンテナンスをしっかりしないとと思っています。時々体調が優れなくて、「一週間後にちゃんと歌えるかしら?」と不安になることもあります。声は体調に左右されるし、年齢を重ねるごとに大変になるので、体力作りと食生活を頑張りたいです。

子連れレコーディング(写真はレコーディングの様子。東京で活躍する音楽ユニット「huenica(フエニカ)」のスタジオで毎回行っています。huenica夫妻は奥さんが男鹿市出身で子育て中という共通点もあり、感性を共有できる大切な仲間なのだそう/提供:huenica)

北秋田市の特産品を集めたブランド「マタギの玉手箱」と同時に新曲を発表

ー北秋田市の特産品ブランドに合わせて新曲を発表されたそうですね。

本城 北秋田市といえばマタギが有名で、地域の特産品を「マタギの玉手箱」というコンセプトで販売しようと取り組みがあって。それに合わせて、マタギをテーマにした歌を作ってほしいと依頼がありました。私の暮らす根子はマタギ発祥の地と言われていて、自然の恵みに感謝する暮らしが日常に息づいています。厳しい自然を相手に狩猟をするマタギには、独自の精神性があって、難しく感じるかもしれないけど、歌にすると伝わりやすいのかなと思いながら作りました。マタギは山言葉・マタギ言葉と言われる独自の言葉を使います。ホロホロはたくさん、ホロカチョはたくさん入った箱という意味なんですが、言葉の響きが面白いなと思って、歌詞に山言葉を使いました。

マタギの玉手箱CD
(CDには「マタギの玉手箱」の他2曲が収録されています。)


(「マタギの玉手箱」のPV。本城さんの温かく伸びやかな歌声と、山言葉の響きが心に染みます)

ー発表イベントもあったそうですね。

本城 この「マタギの玉手箱」発表イベントで、秋田空港、JR秋田駅、秋田内陸線などで歌わせてもらいました。特に阿仁合駅の時は会場に入らないくらいの人が集まって、みんなもマタギの文化を大事に思っているんだなと、関心の深さを知りました。CDはイベント参加や特産品セット購入特典の非売品ですが、秋田県内の保育園、幼稚園、小・中・高校の約700箇所に無料配布されました。お昼の放送、帰りの会で子どもたちが歌ってくれたら嬉しいですね

マタギの玉手箱発表ライブ(2020年2月に行われた秋田内陸線阿仁合駅でのイベントの様子。多くの地元の人が駆けつけました/提供:本城奈々)

当たり前だけど忘れてはいけない、日々のくらしを共有できるような歌を

ー今後の音楽活動でやりたいことなどありますか?

本城 引き続き作詞作曲をしていきたいですね。最近は、秋田クボタさんからの依頼で、田んぼと青空が広がる秋田の、笑顔で温かい食卓をイメージしたCMソングを作らせてもらいました。当たり前だけど忘れてはいけない、暮らしに寄り添う歌になったと思います。これからも、育児で疲れた時に、一緒に歌ったら気分が晴れたとか、日々の暮らしを共有できるような歌を作りたいですね。歌の持つチカラを、聞く人たちに感じてもらいたいです。

秋田クボタのCMソングは、AKT秋田テレビにて、朝5:45〜と、夜9:55〜のウェザーニュースで放送中です。どんな歌になっているのかぜひチェックしてみてくださいね。のんびり、ゆったりしながらも、厳しい自然と向き合いながら暮らす秋田の風土と、本城さんの優しく温かく、芯のある歌声は、とてもよく似ているように感じます。今現在、新型コロナウィルスの影響で例年のイベントが続々と中止になり、本城さんの歌声を聞く機会が減っていることがとても残念ですが、これからもっと、素敵な歌声を響かせてほしいと活躍を願うばかりです。

【本城奈々さんプロフィール】
北秋田市旧森吉町生まれ。高校卒業後上京し、働きながら7年間音楽活動を行う。ゼロダテのレジデンスアーティスト募集をきっかけに2012年にUターン。写真家でマタギのご主人と結婚後、マタギ発祥の地と言われる根子集落に暮らす。土地の魅力や日々の記憶を曲にしてピアノと共に歌う。2才と4才の男の子の育児に奮闘しながら、県内外のイベントや、テレビのCMソング、番組のナレーションなどで活躍中。

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この記事を書いたライターこの記事を書いたライター

Maki

秋田公立美術工芸短期大学卒業後、印刷・デザイン・WEB制作等の会社に勤務。出産・育児を機に「Maki design」としてフリーランスに。鷹ノ巣駅向かいの「コミュニティーステーションkitakita」レンタルオフィスで活動中。秋田県北の情報を発信して行きます!

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