妊娠しやすい心と身体作りを支援する「妊活・温活サロンほの香」。由利本荘店と潟上店があり、県内外から不妊や身体の不調に悩む女性たちが多く通っています。看護師であり、不妊治療の経験者でもあるオーナーの成田やよいさんから、妊娠しやすい身体作りや仕事に対する想いを伺いました。

看護師歴12年の知識と不妊治療の経験を生かしてサロンをオープン

ー「ほの香」を始めたきっかけについて教えてください。

成田　私は結婚を機に秋田へ移り住み、看護師として働いていました。ハードな仕事かつ人手不足だったので、休みをとることができず、不妊治療をしたくても始めることができませんでした。結局、不妊治療に専念するために仕事を辞めることを決断しました。

ー不妊治療を始めたくても、周りの理解や協力がないと難しいんですね。

成田　不妊治療を始めてからは、頼れる親も相談できる友人もいなくて本当に辛かったです。何をしていてもずっと辛い気持ちが続いていました。常に不妊治療のことが頭から離れなくて、インターネットで不妊に関する情報を検索してばかり。薬の副作用で体調も悪く、心も身体もボロボロでした。体外受精を3回、妊娠2回、流産2回を経験し、精神的にも肉体的にも不妊治療を続けることが辛くなってしまい、子供がいない人生を選択しました。

ー本当に辛いご経験でしたね。ご自身のその経験が「ほの香」を立ち上げるきっかけになったのでしょうか。

成田　そうなんです。不妊治療の病院に行くと、いつもたくさん患者さんがいるのに、不妊治療の悩みや辛さを話せる場所がありませんでした。その時に、看護師時代のカウンセリングの経験を生かして、不妊治療をしている方たちの話を聞いたり、悩みに寄り添ったりすることができるのではないかと思いました。そこから、子宮を冷やさない布ナプキン作りを始め、埼玉や東京、千葉の妊活サロンや鍼灸師の先生から施術を学び、2017年に秋田市で妊活・温活サロン「ほの香」をオープンしました。今は自宅のある由利本荘市へ移転し、同時に秋田市周辺のお客様が通いやすいように潟上店もオープンしました。

（心や身体、妊活のことなど、最善の方法を一緒に考えて、施術やアドバイスを行っている。写真提供／ほの香）

一人一人に合わせた施術で妊娠しやすい心と身体作りをサポート

ー「ほの香」では、どんなことをしているのですか？

成田　妊娠を希望する女性が、より妊娠しやすい身体になるようにサポートする妊活セラピー®︎を行っています。目指しているのは、妊娠してお腹の中で赤ちゃんを育み、出産し母子ともに健康な状態で退院できる身体。まず始めに、カウンセリングで生理周期や体調、不妊治療をされている方は治療の状態などを伺います。それから、一人一人に合わせて施術内容をご提案させていただいています。

ー施術にはどんなものがありますか？

成田　その方の状態に合わせて、生命エネルギーである「気」、全身に栄養素を送る「血」、身体を潤す「水」の３つのバランスが良くなるように施術を組み合わせていきます。例えば、身体を芯から温めてデトックス効果も期待できるよもぎ蒸しや、骨盤のズレを整えて子宮や卵巣に栄養（血液）を行き渡らせる骨盤調整、腸をもみほぐし全身の血流を良くする腸セラピーなど、その方の状態に合わせて行います。

（古来から医療用として用いられていた薬草・よもぎには、身体を温めたり、デトックス効果があると言われています）

（よもぎ蒸しは、マントを羽織って顔を出した状態で行うので、暑苦しさがなく、たくさん汗をかくのに、その汗はベタベタしていなくサラッとしています。写真提供／ほの香）

また、栄養指導にも力を入れています。妊娠・出産するためには、まずはその方自身の身体が健康でなくてはなりません。不健康な状態だと、自分の身体を守ることが優先となってしまい、新しい生命を育むことにパワーが使えないのです。

たっぷりの血液で全身に栄養が行き届き、細胞が潤って、心もおだやかでいることができれば、生理があるかぎり妊娠できる可能性はあると思っています。そんな健康な身体を作るために必要な栄養や、食事のアドバイスをしています。そのほか、体重管理や運動、睡眠などについてもお話しています。

（実際にお客様が作ったバランスの良い食事を紹介した本。まねをするだけで、簡単に栄養満点の献立ができます）

40代でも諦めないで！全ての女性が前向きに人生を歩めるように寄り添う

ーほの香に通って妊娠・出産した方はどのくらいいらっしゃるのですか？

成田　20代〜40代のお客様にいらしていただいていますが、今までに100人以上の赤ちゃんが誕生しました。中でも40代の妊娠が増えてきていて、44歳で妊娠した方もいらっしゃいます。だから、本当に諦めないことって大事だなと痛感しています。40代で妊活なんて恥ずかしいと思っている方もいるかもしれませんが、まずはお話しをしにきて欲しいなと思っています。

ーそれは妊活している女性にとって、とても励みになりますね。生命に向き合う大変なお仕事だと思いますが、仕事をしていてやりがいを感じるのはどんな時ですか

成田　やはりお客様が赤ちゃんを抱っこしている姿を見た時ですね。無事にご出産されたお客様からたくさんお手紙をいただくのですが、「不妊治療の話ができる唯一の場所でした」「辛かった妊活期間を乗り越えられたのはほの香のおかげです」「この子を抱かせてくれてありがとう」など、うれしいお言葉をいただくと本当に胸がいっぱいになります。

その一方で、中には子どもを諦める選択をするお客様もいらっしゃいます。不妊治療をやめて子どものいない人生を選んだ方が、前を向いて生きていけるようにサポートするのも私の仕事だと思っています。潟上店で働いているスタッフも、元々はお客様だったのですが、自分の経験を生かして不妊治療をする方々をサポートすることにやりがいを感じながら、子どものいない人生を楽しんでいます。そして、何よりも私自身が明るく前向きに人生を生きる姿を、皆さんに見せ続けることが大事だと思っています。

ー最後に、今妊活をしている女性へメッセージをお願いします。

成田　妊活中に一人で考えていると、「職場に迷惑がかかるから仕事をやめる」とか「子どもを産めなくて申し訳ないから離婚する」とか、どうしても悪い方に考えてしまいがちです。まずは、一人で悩まないで何でも話してください。辛い気持ちも、他人の幸せを祝福できない気持ちも、ここでは全てさらけだしていいんです。話をすることで、気持ちが変わることもあります。全ての妊娠を望むご夫婦が心から笑顔になれるように、精一杯サポートさせていただきます。

成田さんのお話は、妊活中の女性はもちろん、将来妊娠を望む若い世代、女性特有の不調に悩む方など、全ての女性に知ってもらいたい内容ばかりでした。看護師経験を持ち、不妊治療経験者として同じ想いを共有できる成田さんは、妊活を頑張っている女性たちにとって心強い存在であることは間違いありません。また、子どものいない人生を楽しむロールモデルとしても、多くの女性の希望となるのではないでしょうか。成田さんは今、不妊治療を受けやすい社会にするための活動も行っているそうです。これからも成田さんの活動を、全力で応援していきたいと思います。