昨年新規就農し、ダリア栽培に取り組む三浦桐子さん。秋田市河辺地区でハウスと露地栽培でダリアを育てています。三浦さんは美容師から農家へと転身した、ユニークな経歴の持ち主です。「農作業全般が好きです」と笑顔で話す三浦さんが、ダリアの魅力にひかれ栽培家になった経緯などについて、お話を伺いました。
露地のダリアがシーズン入り
─ダリア栽培を本格的に始めて、2シーズン目だそうですね。
三浦 ビニールハウスと露地栽培で、20品種ほどのダリアを育てています。ハウスは7月までに最初の花が終わり、二番目、三番目の花が咲いていきます。また、お盆明けから露地のダリアが咲き出しました。秋田では11月下旬まで順に咲いていきます。ハウスと露地両方の収穫で忙しい日々が続きます。露地のダリアは、これから迎える秋が本格的なシーズンです。
三浦 最初の年は30品種を育て、それぞれの花の特性をつかむのが大変でした。今年は比較的育てやすい品種に絞るなど、工夫しています。今年は挿し芽苗からの栽培にチャレンジすることができました。挿し芽苗は、昨年育てたダリアから芽を採取して苗に育てておいたものです。球根よりも成長が均等で育てやすいです。
ダリアの豪華な姿に感動
─ダリアに魅力を感じたきっかけについて教えてください。
三浦 美容師を目指して岩手県の専門学校に通っていたとき、母に誘われて国際ダリア園(秋田市雄和)を訪れたのが最初でした。ガーデニングや家庭菜園が好きな母が、実家でバラを育てていました。身近にあったバラと違い、まるで花火のようにまあるく咲いたダリアを見て「一輪でこんなにボリュームのある花があるんだ!」と衝撃を受けたのを覚えています。
三浦 品種や色もたくさんあって、見ていて本当にあきなかったです。それをきっかけに、ダリア園を時々訪れるようになりました。ダリア栽培を始める前に、夫と行ったこともあります。
自分でダリアを育ててみたい
─美容師としてしばらく仕事をしてから、農業に転身されたそうですね。どんなきっかけでダリア栽培を始めることになったのでしょうか。
三浦 岩手、秋田の両県で美容師の経験を積みました。入学式や結婚式などのセレモニーでは生花を使うことがあります。花嫁さんの装花をする際に、生花店から届く花が新鮮でなく残念な思いをすることがありました。秋田の新鮮なお花を使えたらいいのに、そう思っているうちに「育ててみたい」という気持ちが芽生えたと思います。
三浦 農業に関わるようになったのは、2017年に夫(光一さん)と結婚したのがきっかけです。当時、夫は会社に勤めながら兼業農家をしていました。「一人で畑仕事をするのは大変そう」と思って、自然に私も手伝うようになりました。もともと母の庭仕事の手伝いをしていたので農作業に抵抗はなかったです。空いている土地があり、試しに「ダリアをつくってみたい」と夫に相談すると、快くOKしてくれました。
2年の研修を経て新規就農
─ダリア栽培をするにあたり、どんな準備をしましたか。
三浦 秋田市の園芸振興センターで2019年から2年間研修を受けました。1年目は野菜が中心で、種まきから収穫までの流れや、独立するための農業簿記など基本的なことをみっちりと。2年目に入ると模擬経営があり、希望のダリア栽培に取り組むことができました。
三浦 研修を終えて、ビニールハウスの建設などを経て昨年就農しました。本格的にダリア栽培を行い、JAや直売所への出荷を始めました。生産から出荷まで一人でこなすのは大変な面もあります。けれども研修仲間や先輩農家さんたちとのつながりがあるので、いつも支えてもらっていると感じます。
─三浦さんにとって、今のお仕事の良さはどんなところでしょうか。
三浦 小さい時から草花に触れてきたおかげか、農作業全般が好きです。確かに忙しくて休めない時もあるのですが、今は大変な時でも心に余裕があると感じます。美容師をしていた時は、自分よりお客様を優先していたので休日でも心が休まることがありませんでした。一人で黙々と作業するのはまったく苦にならないし、屋外ですからマスクをする必要がないのも楽です。
─三浦さんにお会いした時、農家さんのイメージとは少し違うと感じました。
三浦 確かに農業の仕事は地味なところがあります。けれども、生産者としては農業に持たれるイメージ通りにはならないように気を付けています。実際、直売所へは自分でお花を届けに行きますし、お客さんに会う機会もあります。「こんな女性が、こんなキレイな花をつくっているんだ」と思われたい。そう願っています。
秋田のダリアを海外へ
─ダリアの将来について考えていることを教えてください。
三浦 夢といえば、秋田のオリジナル品種「Namahage」ダリアの海外進出でしょうか。インスタグラムなどで外国の屋外挙式などを見ますが、装花が本当に豪華です。建物の柱全体を生花で飾ったり。もしそうした場面にダリアが使われたら、きっとゴージャスで誰もが驚くに違いありません。
三浦 花が開き過ぎたり、枝の長さなどが出荷基準に足りず規格外になるダリアも多いです。こうした花を活用できないかと考えています。これまでには、花びらをレジンで固めてピアスを試作して実際に身に付けてみました。残念ながら、数日で色があせてしまいました。これからも、ドライフラワーに加工するなどやってみたいことがたくさんあるので、一つひとつ挑戦していきたいです。
「忙しい時でも、心に余裕がある」という三浦さんの言葉が心に残りました。好きなことをとことん追求しているということが、余裕を生み出しているのではないでしょうか。三浦さんの手掛けたアレンジメントなどを拝見すると、美容師の経験やセンスが生きていると感じます。今後の活動に目が離せません。
DATA
【三浦桐子さん】
秋田県秋田市出身。岩手県の専門学校を卒業し美容師に。岩手、秋田の両県で経験を積む。2017年の結婚を機に野菜や花き栽培に親しむ。2019年より2年間の研修を経て、2021年に新規就農。ダリア農家として2年目を迎えた。
三浦さんのダリアを購入できるところ
あぐりんなかいち(秋田市エリアなかいち内)