由利本荘市岩谷町。かつては町一番のにぎわい中心部に「ガーデニングcafe花草(はなくさ)」はあります。カフェを営むのは、秋田県庁職員として40年、秋田の農業を真摯に支えてきた吉尾聖子さんです。ご夫婦での退職を機に、新たな挑戦と住み慣れた町への恩返しとして賑やかなカフェをオープンさせました。
花と緑が美しいガーデニングカフェ
1年中、花と緑が楽しめるカフェとして親しまれている「ガーデニングcafe花草」。濃い目の渋いコーヒーと、秋田県産の食材を使ったランチやデザートが揃います。広い庭を利用した花苗の販売やギャザリング教室の開催もあって、お花好きにも人気。また、ここの店長はゴールデンレトリバーの“サナちゃん”。その可愛さに惹かれて会いにやってくるわんちゃん好きも!店主の好きなものとお客さんそれぞれの「好き!」を楽しめる居心地の良いカフェです。
「自分で何かをやってみたかったのもあるし、この町が廃れていくのも気掛かりだったし、お花も好き、と色々な想いを叶えるため、退職後の人生として主人とカフェを作ることにしました」。お花や庭いじりが好きで、プランツギャザリング®本部講師 とNFDフラワーデザイナー講師資格も取得している吉尾さん。ギャザリングのレッスンも人気です。
今あるものを生かしたリノベーションで!
建物の改装は、施設へ入所したお義母さんの自宅スペースをそのまま生かしたリノベーション。庭もきれいに整備しました。「私も主人もここの出身。地域が少しでも賑やかになればいいなと思って」と開いたカフェは吉尾さんの狙い通り、オープンしてからこれまでたくさんの人が訪れています。
秋田の伝統野菜伝道師
また、吉尾さんは “秋田の伝統野菜”を広める活動をしていることでも知られています。
「県庁に入職を決めたのは、秋田の女性たちの活動を後押しする“助成制度”の仕事ができると聞いたから。農村地域の女性たちが自分たちの暮らしを支えるための事業を後押しするのが最初の主な仕事でした。そのうち“地産地消”や“スローフード運動”といった言葉が出てくるようになり、当時の知事らと一緒に、スローフード運動の発祥の地、イタリアに視察に。そこでは発酵文化や伝統野菜の継承が進んでいました。秋田に戻って、秋田でも伝統野菜と呼べるものをピックアップしよう、と始めたのが伝統野菜の調査の始まりでした」。
伝統野菜は全国各地にありますが、その定義は各都道府県に委ねられています。秋田の伝統野菜は「昭和30年代以前から県内で栽培されていたもの。 地名、人名がついているなど、秋田県に由来しているもの。 現在でも種子や苗があり、生産物が手に入るもの。」(あきた伝統野菜より)となっています。ただ、その生産方法は手間ひまがかかり、大きな収入に結びつかないことも。そのため自家用として、わずかな量で代々作り続けられている希少な品種も少なくありません。
当時、農林水産部では公的な機関を通じての大まかな調査のみでした。しかし、「もっと深く掘り起こさなければこのままどんどん規模も知名度も縮小していく!」と、各地の直売所を巡り、くまなく丁寧にリストアップ作業を行った吉尾さん。その結果、かろうじて生産している農家さんを見つけたり、種を農業試験場に持ち込んで、復活させたりとその功績は数知れず。さらに県立大学の協力の元、“あきた郷土作物研究会(代表 秋田県立大学副学長 吉澤結子)” を立ち上げ、広く知ってもらえるようにと宣伝活動も始めました。令和4年度には39品目が登録されています。
熱いハートを感じて欲しい‼
県庁を退職し、カフェの店主となった今も秋田の伝統野菜の普及のため県内各地を奔走しているパワフルな吉尾さんですが、カフェの改装工事の最中に脳梗塞を患い、左半身が不自由になってしまったこともあったそう。しかし、「やると決めたことは絶対にやり遂げる!!」とリハビリを乗り越え、奇跡的な回復を果たし、お店をオープンさせたとか。
そんな熱い熱いハートがたくさんの人を動かし、伝統野菜に興味を持つ人、このカフェに来る人など吉尾ファンがたくさん!吉尾さんの熱いハートを感じに、素敵なお庭とお花を見に、ぜひぜひ訪れてみてください。