秋田マリーナのほど近く、空が高くひらけた住宅地にあるチョコレート色の建物。そこは、人とペットがともに幸せになるための癒しや気づきをくれる「Relaxation Salon & School ルベール」という名のサロンです。代表の和田淳子さんは、紆余曲折を経てペットや人のために働く人生に出会い、活動の幅も年々広がっています。その人生の転機や取り組みについてお話を伺いました。
犬との運命的な出会いから始まった道
— 今のご職業に就くまでの経歴を教えてください。
和田 短大を卒業して、就職活動を機に東京に行けば何か見つかるんじゃないかという気持ちで上京したんです。夢を追い求め、自分の天職を見つけたくて、さまざまな仕事をしてきました。そのうち父の介護のため秋田と東京を行き来する暮らしが始まり、秋田市に腰を落ち着けるようになったのは、このメディカルアロマテラピーのサロンを開業した2006年頃です。
— メディカルアロマテラピーとの出会いは?
和田 開業する約1年前のことですが、東京のお友達の家に遊びに行ったら、そこでたまたま預かっていた生後1カ月の犬に出会ったんです。3日間一緒にいるうちにどんどん愛情が湧いてきて飼いたくなったのですが、高額だったので諦めて秋田に帰ったんですね。でもやっぱり忘れられなくて、急いで友達に連絡して飼うことに決めました。
(愛犬チョコと和田さん)
チョコと名付けて一緒に暮らしているうちに、私自身すごく癒されるし、なんでも前向きに取り組めるようになったと変化を感じて。それでチョコに恩返ししたいなぁと思っていたら、ラジオでペットマッサージのことを耳にしたんです。自分もマッサージしてもらうと気持ちいいし、犬も同じ生き物だからいいかもしれない…と思い、さっそく講座に通いました。そのペットマッサージ講座で、アロマを使った病気のケアも指導していたんです。
— その講座はどのような団体で主催されていたのですか?
和田 講師の先生は、NPO法人「日本メディカルアロマテラピー動物臨床獣医部会」の顧問で動物病院の先生でした。この協会では治療をするにあたって、会員の医師30数名で臨床した上で、各病院でアロマを導入しています。使用しているフランス・プラナロム社のケモタイプ精油は、酸化防止剤などの化学物質を含まない100%天然植物成分で無農薬。安全性はもともと高いのですが、協会でさらに29種類の農薬チェックなど調べ直して使用しています。
仕事観が180度変わった先生からの言葉
— では人間よりペットのマッサージが先だったんですか?
和田 そうなんです。ペットマッサージでチョコをケアしていたら、チョコの体調が良くなってきたので、人にもやってあげたくなって、人間の整体を勉強しました。そのあと、自分がギックリ腰になった時にチョコを留守番させて治療しに行ったことがあって、「人とペットを一緒に整体してくれるところはないかなぁ」と思ったんです。そこで、自分でサロンを開こうと思い立ちました。
— チョコと暮らし始めたことが人生の転機になったんですね。
和田 それまでは、整体は人にやってもらうもので、まさか自分がしてあげる側になるなんて思ってもみなかったです。自分は一生仕事をしたいと考えていて、自分が満足する仕事じゃないと続かないと思っていたので、メディカルアロマテラピーの先生に「利己的なのは幸せになれない。人が喜ぶにはどうすればいいか考えればいいよ」との言葉をいただいて考え方が180度変わりました。
家族も健やかに暮らせる木に包まれた住宅兼サロン
— サロン「Relaxation Salon & School ルベール」ではどのようなコースがあるのですか?
和田 はじめは人とペットに整体を行うのがメインでしたが、2011年にNPO法人日本メディカルアロマテラピー協会秋田校を設立してからは、セルフケアコースや講師育成コースなどの「資格取得講座」も始めました。
現在、秋田校の会員は約300名で、医療関係者や子育て中の主婦など、さまざまな方がいらっしゃいますよ。そのほかペットロスなどのカウンセリングや、各種出張セミナーも行なっています。
— こちらの住宅兼サロンの建物も、入った瞬間に木の香りに包まれてとても素敵です。
和田 もともとチョコと一緒の空間で働きたかったのですが、貸し店舗では無理かなと躊躇していたんです。そんな時に行った美容院に犬がいて、無理なく仕事をしている風景を目の当たりにして、やっと「私もチョコと一緒に仕事ができる自分のお店を持とう」と決心できました。チョコは病気を患っているのですが、この家に住み始めてからは症状も落ち着いていますし、主人のアレルギー性鼻炎もおさまったんですよ。
(柔らかい光に包まれたサロン)
動物の虐待や殺処分を減らすために
— 動物に関するさまざまな活動もしていると伺いました。
和田 県の動物愛護推進委員として、学校での講演のほか、学校に犬を連れて行ってふれあいの仕方や習性を教えたり、介護施設や病院で犬とふれあえる喜びやぬくもりを伝える活動のお手伝いをしてきました。
秋田県は動物の殺処分が全国でも多い方だったのですが、小学校で「命の教室」を開催して、動物たちの保健所での最期などを伝える活動を続けてきたら、殺処分数が減ってきたんです。そういうことを地道に続けていけば、虐待や殺処分はもっと減るのではないかと思っています。
あと私個人としては、月に1回ラジオでペット情報を提供しています。秋田県はいま秋田犬で注目されているからこそ、それらの取り組みを大事にしていきたいですね。
— 子供たちからお年寄りまで、動物を通してたくさんの気づきがありそうですね。
和田 私自身、自分が動物のためにこんなに熱心に活動するようになるとは思っていませんでした。小さい頃も犬を飼っていましたが、フィラリア症で死んだ時に初めて予防接種を知ったくらいなんです。でもチョコが大切な家族の一員となってからは、命の尊厳に対する意識が一変しました。
— そこまで動物の活動に深く関わるようになったきっかけはあるのですか?
和田 4年前に、動物の先進国であるドイツを訪問したのが大きいですね。ドイツは昔から動物愛護精神が強い国で、会社やレストラン、電車など、どこに行っても犬と一緒なんです。決して華やかではありませんが、動物たちがいつもそばにいて、自然の中で暮らしたり、家族との時間を大切にしたりする風景にも惹かれました。
それらを見て、「私のしたい暮らしはこれだな」と人生観も変わりました。それまでは東京の都会的なところが好きだと思っていたのですが、心が落ち着かないところがあったんですよね。今はサロンの場所も海の近くと自然を感じられて、木に包まれた家で仕事もできて大満足ですね。
人もペットも健康長寿で共存を
— これからの未来はどのように描いていますか?
和田 まずは人とペットが健康長寿で幸せに共存できるようにしたいです。理想はピンピンコロリですから、人も動物もそれぞれ合ったものを伝えていきたいなと。犬でも毎日マッサージやスキンシップをしていると変化が分かるんですよね。そうやって毎日細かく見ることで、病気も早期発見・早期ケアができます。人も同じですので、自分のケアをできる人を増やすための活動も広めていきたいです。
(「食べたもので身体はできるので食事も大切」と、身体に良い食料品なども販売)
実はチョコは5年前に心臓病が見つかったのですが、その時は尻尾のところにできものを見つけたので受診したら、心臓を検査した方がいいと言われて、発見することができたんです。ですので、毎日のスキンシップは本当に大事だと思います。
— 今月、ペットの防災ケアについての活動もあるそうですね。
和田 9月22日(土)23日(日)の2日間、防災キャンプフェスというイベントに、(社)日本ペットマッサージ協会とNPO法人日本メディカルアロマテラピー協会として、ペット災害対策ワークショップを出展することになりました。
近年は日本各地で自然災害が発生して、ペットたちも被災しています。その時ペットをどのようにケアしたらいいのかを伝えていきたいです。アウトドアの知識は被災時に命を助ける知恵になるんですよ。被災時のペットの心のケアや、虫除け・傷ケア用のアロマの作り方などをレクチャーしますので、ぜひお越し下さい!
一匹の犬との出会いが、仕事観や人生観を変える。そういう人は意外といるのかもしれませんが、和田さんはその気づきを周りに還元するため、人とペットによりよいものを提供していく道を選びました。その道は和田さんの心の癒しにもつながっています。人とペットが健やかに暮らすための活動の輪が、これからますます広がっていくことを願っています!
【Relaxation Salon & School ルベール】
秋田市下新城中野字街道端西299
営業時間/10:00〜20:00(土曜10:00〜17:00)
定休日/日曜
問い合わせ/090-9635-6363
jmaa.levert@gmail.com(予約は前日まで可能)
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【和田淳子さんプロフィール】
秋田市出身。2006年「Relaxation Salon & School ルベール」を開業。2011年にはNPO法人 日本メディカルアロマテラピー協会 秋田校となり、その代表を務める。