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12DECEMBER
2018

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秋田では珍しい「ファシリテーター」という職業で、まちづくりを盛り上げる

まちづくりファシリテーター 平元 美沙緒さん

「ファシリテーターって何?」まだまだそう思う人が多いこの職業は、話し合いの場にいてくれたらとても助かる注目のお仕事。そのファシリテーターを、秋田に嫁いで子育てをしながら続けている女性がいます。
平元さんは、徳島から秋田に嫁いで9年目。大学で建築を、大学院では伝統的な建造物や景観を軸にした「まちづくり」について学んできたそうです。どのようにして「まちづくりファシリテーター」という看板を掲げるようになったのか、お話を伺ってきました。

大学在学中にまちづくり活動の原点がありました

ーーいきなりですが、ファシリテーターとはどのような職業なのですか?

平元 ファシリテーターとは、話し合いの場を「中立的な立場」で進行する役割の人のことです。進行するといっても自分の意見は言わずに、参加者の意見を促進したり場を活性化させたりするのが主な仕事ですね。私のような立場の人間が加わることで、対立を防ぎ話し合いが和やかで建設的なものになって、ただ苦情を言うだけでなく「今後私たちはどうするのか?」と主体的な意見やアイデアが生まれるようになるんです。私はそれを手助けする、言わば助産師さんのような立場です。
企業や環境などさまざまな分野でファシリテーターをしている方がいますが、その中でも私は「まちづくり」を専門としています。

ーー大学在学中からまちづくりに関心があったのですか?

平元 私は建築の中でも文化財について学んでいたのですが、学べば学ぶほど、建築とまちづくりは切っても切れないものなんだと思うようになりましたね。中でもとある農村集落の研究をしていた頃に、ファシリテーターの原点となるような経験がありました。集落の景観を維持するためには、住民共通の将来的なビジョンが必要だと思いまして、自分で企画した「集落の未来を考えるワークショップ」を提案したんです。

当日は会場に向かう途中、バス停に道具一式を忘れてしまったりと冷や汗の連続でしたが、後日住民の皆さんが「あのとき話し合いをして良かった」と言ってくれたのがうれしかったですね〜!それから、その集落の住民が自発的に話し合いやイベントをしているのを見聞きする度に、本当にやって良かったと思っています。

ファシリテーターの師匠との出会い

ーーいつ頃からファシリテーターを職業として意識し始めましたか?

平元 結婚して主人の出身地である秋田に移住すると決まった頃、「私も秋田でまちづくりに携わりたい」と話したところ、主人からファシリテーターの稲村理紗さんを紹介してもらいました。
稲村さんとお会いして初めて、社会ではファシリテーターという役割が求められていて、それをお仕事にしている方もいることを知りましたね。それからは稲村さんに話し合いの場にたくさん連れて行ってもらって、稲村さんを見て勉強していきました。

ーー初めて稲村さんの活動を見た感想は?

平元 とにかくビックリしました!進行役として声かけする時の言葉の選び方や言い方が物腰柔らかく、かつ分かりやすかったんです。稲村さんは、進行しながらさらにホワイトボードや模造紙に発言を記録・図式化するファシリテーション・グラフィックをされる方なのですが、小学生でも分かる言葉と技術を心がけているとおっしゃっていました。

ーー私も、平元さんのグラフィックレコーディング(=議論をその場で図式化して紙に描くこと)を初めて見た時、その分かりやすさと描くスピードに驚かされました。どのようにして習得したのですか?

平元 まだ全然経験がないうちから、稲村さんに任されて鍛えられたんです。初めは真っ黒の字で箇条書きでしたよ(笑)。そこからはミーティングの場でも講演を聞いている時でもとにかく練習して、そのうち見やすくするためにアイコン化したり数種類の色を使ったりと、自分なりに工夫できるようになりました。
この技術は「議論を見える化する」ものなので、参加者全員が共通の認識を持てるんですね。ですので描いたものを指差しながら「コレ」で話が通じるし、話をうまく聞き取れない年配の方でも、途中から参加した方でも議論の内容を把握できるんです。

若者にグラフィックレコーディングを伝授

ーー平元さんは秋田公立美術大学でグラフィックレコーディングを教えていらっしゃるそうですね。(※今年度は終了)

平元 秋田公立美術大学の田村先生とご縁がありまして、去年は研究授業を、今年からは本授業として教える機会をいただきました。これを身につけると、企業での商品開発だったり行政や教育などどんな分野でも役立つんじゃないかと。学生さんにとってはキャリアデザインの一助にもなるし、就職活動でもアピールできるスキルの一つになると考えています。

ーー学生さんに一番伝えたいことは?また、教えることでご自身に変化はありましたか?

平元 まずは精一杯準備することですね。話し合いのテーマについてしっかり勉強するのはもちろんのこと、紙やペンなど道具の準備も怠りなく。そういう基礎的なことをきちんとしておけば、本番でもアドリブで対応できますから。
教えるまで自分のグラフィックを振り返ることがなかったので、見直すいいきっかけになりました。昔に比べて上手くなったな〜とか(笑)。学生の皆さんそれぞれオリジナリティがありますし、それを見て私も勉強になりますね。

出産と育児とファシリテーションと

ーーファシリテーターとして思い出深い仕事は?

平元 2015年2月の出産後初めてのお仕事ですね。出産を機に仕事を辞めてから1年半、「このまま専業主婦になるのかな…」とぼんやり考えていた頃でした。そこに稲村さんからトークセッションのコーディネーターの依頼があって…とても嬉しかったですね〜!ブランクもあり不安でしたが、稲村さんに背中を押していただいて再チャレンジすることができました。その時、肩書きがない私に主催者から「ほにゃららファシリテーターはどうですか?」と提案があり、とっさに「まちづくりファシリテーターでお願いします」と言ったのが今の肩書きです(笑)


(2010年に初めてファシリテーターとして携わった「文化財のある街を楽しむマップづくり」。大好きな文化財を通して地域を散策することで、どんどん秋田が好きになったそう。※現秋田市文化振興課主催)

ーーファシリテーションが育児に役立つことはありますか?

平元 娘が3歳頃になると夕食の支度時にぐずることが増えたのですが、その時に思いついたのがファシリテーショングラフィックでした。紙に時計を2つ描いて「今の針はこんな形だけど、この形になったらご飯ができるよ」と言ったり、献立をイラストに描いて「作れたら○をつけてね」とお願いしたり…。絵にすると伝わりやすいし、娘も納得してくれるようになりましたね。こんな場面でも、いつも仕事で言っている「言葉だけでないコミュニケーションの大事さ」を噛み締めていました(笑)。

多様な人々をつなぐ役割に…

ーーファシリテーターとして地域の人々と関わることで見えてくることは?

平元 私が他県出身者ということもありますが、人々が当たり前と思っているものこそが、実は地域の宝だということ。そして残念なことに、その宝を無くしてから気づくことが多いということですね。そうならないためにも、行政と地域住民、学生と社会人など多様な人同士を「つなぐ役割」が必要なのだと考えています。今は秋田にもまちづくりに燃える学生さんが増えてきていますし、学校以外で個人の熱い想いを発表する場があるのはいいことだな〜と思います。さまざまな目線を交えて化学反応を起こしたいです!

ーーところで平元さんは、もともと人懐っこい性格だったのですか?

平元 昔から、不良っぽい子ともおとなしい子ともみんなで話すのが好きでしたね〜。私の実家が神社で父と弟たちが神主なのですが、私が幼い頃から地域の皆さんが父に対して、人生の悩みや心霊写真の相談事、赤ちゃんが生まれた報告などいろんな話をしているのを見てきましたし、夏には神社の境内で夏祭りがあってたくさんの人が遊びにきてくれるという環境だったんです。そこで、多様性を受け入れる素地ができたのかもしれませんね。今気づきました(笑)もしかしたら文化財が好きなのも神社で育った影響かも?!

勉強熱心なうえに、常にその場を前向きに楽しむ空気をまとっている方だなぁと思いました。その空気が話し合いの参加者をやさしく包み込んで、建設的な意見が生まれるのだなと。そしてグラフィックレコーディングの技術の高さに目が行きがちですが、話し合いのテーマに対する思いや知識の深さが、有意義な時間をつくり出す秘訣だということも分かりました。今はご主人の実家がある大森町保呂羽を盛り立てるワークショップを自主企画しているそうで、そちらもぜひ注目してほしいです。

平元 美沙緒
1983年 徳島県徳島市生まれ
2008年3月 奈良女子大学大学院(住環境学専攻)修了
2008年3月 結婚するため秋田に移住
2012年3月まで秋田市教育委員会に勤務
2012年4月 大館市教育委員会でふるさとキャリア教育コーディネーターとして勤務(〜2013年9月)
2013年 第一子出産後、退職
2015年2月〜 まちづくりファシリテーターとして活動開始
横手市在住

Facebook:平元美沙緒フェイスブック

 

 

 

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熊谷 清香

地元タウン誌や広告代理店勤務を経て、KITA DESIGNで企画・編集をしています。小中学生の母。趣味はテニス観戦。秋田市出身。丑年。

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