鹿角市黒沢地区で作られる無農薬米「ゆきのこまち」を知っていますか? このお米を手がけているのが、専業農家の坂本寿美子さんです。
オリジナルブランドを作るに至った想いや、集落唯一の専業農家としてこの先考えていることなどについてお話を聞きました!
農作業を楽しむ祖父の背中を追いかけて
坂本さんは、専業農家の三姉妹の末っ子として育ちました。「子どもの頃は農家あるあるで、農繁期は強制的に手伝いをさせられていました(笑)」。そんな中、楽しそうに農作業をする祖父の背中が印象的で、「自分も土をさわりたい」という気持ちが芽生えたそう。
転機は高3の時でした。一番上のお姉さんが婚約したものの実家を継ぐために結婚を諦めようかと悩んでいるのを目にして、自身が田んぼを継ぐことを決意。「私が継ぐから、お嫁に行っていいよ!」とお姉さんの背中を押しました。
第一子妊娠中にUターン
高校卒業後、東京に出て就職、結婚。いずれ戻るつもりでいた坂本さんがUターンを早めたのは、長男の妊娠がきっかけでした。
「実家にいた時は祖父母が作った野菜を食べていたので、とても安心でした。東京のスーパーで売っている野菜は、どこから来たのか分からなくて。自分だけではなくお腹の赤ちゃんのことも考え始めた時、どこで作っているか分からない野菜が怖くなってしまったんです」と坂本さん。
2013年に実家に戻り、4年後、農業を本格的に継ぎました。
無農薬のお米づくりに挑戦!
(写真提供:坂本寿美子さん)
坂本家は、5ヘクタールの田んぼを持っています。坂本さんは、そのうちの1枚(10アール)で無農薬のお米を作ろうと考えました。
「普通のお米と違う、特徴のあるお米が作りたかったんです。でも農業初心者なので、最初の年(2017年)は母から1枚分しかOKが出ませんでした」
夏場の草取りに苦労しつつも無事収穫の時期を迎えましたが、無農薬米は普通米のあとに刈り取らなければならず、機械トラブルや雨も重なってなかなか作業ができないまま11月に入り、雪が降ってしまいました。
(写真提供:坂本寿美子さん)
坂本さんは焦りましたが、農薬を使わずに育った稲は、雪が乗っても倒れることなくしなやかでたくましく、その光景に強く心を打たれたそうです。
その時の感動を忘れたくなくて、「ゆきのこまち」と名付けました。
オリジナルブランドの誕生!!
坂本さんは、自身の作るお米を「ゆきのこまち…田植え以降無農薬、黒沢集落で育て、霜の降りる時期または雪の降るころに刈り取るあきたこまち」と定義づけ、オリジナルブランドとして販売することに決めました。
3年目となった去年、ゆきのこまちの田んぼは3枚に増え、刈り取りの頃にはなんと予約完売! SNSなどで米作りの様子を伝えていることも消費者の安心感に繋がっているのでは、と坂本さん。
付加価値のあるお米という視点で無農薬米を作り始めましたが、水路の生物や蛍、トンボが増えるのを目の当たりにして、この農法を続ける意味を見つけた! と思ったそうです。
(最近、水路に増えてきたカワニナという巻貝。土がモコモコしている部分がカワニナです)
6次産業化にも積極的に取り組み、「ゆきのこまち玄米茶」(700円・税抜)を作っています。通常より玄米の割合を多く配合していて、玄米の香ばしさがふわっと立ち上がる、優しい味わいのお茶です。
楽しみながら農業を続けたい♪
これから、少しずつゆきのこまちの生産量を増やしていきたいと考えている坂本さんは、「今、黒沢地区で専業農家はうちだけなんです。今後は、後継者不足でできなくなった田んぼの米作りを任せてもらえるような受け皿になりたい」と意欲を燃やしています。
「自分が、農作業を心から楽しむ祖父の姿を見て農業に興味を持ったように、子どもたちにも、母ががむしゃらにやっている姿を見せて行きたいです」
お米を作ることを通して、地域の自然を守りたいーーそんな想いのこもったゆきのこまち。土鍋で炊くと、甘みが際立ってものすごく美味しいのだそう! ぜひ一度、味わってみてください。
【ゆきのこまち】
秋田県鹿角市八幡平字黒沢41
TEL/080-5425-7749(管理人直通)
E-mail/kurosawadays@gmail.com
お米のご注文はホームページからもできます。
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※「ゆきのこまち玄米茶」は、鹿角市内の「関小市商店」で購入することができます。