朝晩の気温がぐっと下がり、風邪やインフルエンザの流行期に向かうこのごろです。遠出がままならない中で、ますます「おうち時間」が増えるのではないでしょうか。わが家で過ごす時間を豊かにするアイテムに「絵本」があります。大きさや形もさまざま、ジャンルもたくさんあって子どもから大人まで楽しめるのが絵本のいいところ。そんな絵本のエキスパート、「絵本専門士」さんにこれから寒い季節にぴったりの絵本を紹介してもらいました。
絵本の楽しさを、親子で味わって
「私にとって絵本は、わくわくする楽しいものです。絵本を読む楽しさを、ぜひ親子で味わってほしいです」と、絵本専門士の沓澤佳子さん。「読み聞かせる時は、子どものためになるからと義務感で読むのではなく、大人が心から楽しんで。その楽しさが子どもたちに届きます」と言います。
そこで、親子で一緒に読める、沓澤さんならではのおすすめ「子どもと一緒に楽しむ絵本5選」を紹介してもらいました。さらに、絵本は子どもだけのものではありません。大人になったからこそ良さが味わえる作品がたくさんあります。「大人が読んで楽しい冬の絵本5選」も併せて、沓澤さんのコメントとともにご紹介します。
子どもと一緒に楽しむ絵本5選
たのしいふゆごもり 作:片山令子 絵:片山健 (福音館書店)
クマのおかあさんと子どもが、冬眠の準備をします。親子のテンポのよい会話がとても微笑ましい。お子さんと冬の支度についてお話ししてみてください。
ゆきのひ 作・絵:加古里子 (福音館書店)
以前の秋田はもっと雪が多かったですよね?雪国・秋田の人たちにおすすめしたい作品。昭和時代の暮らしの様子や、こんなに大変だったんだということが分かります。
星座を見つけよう 文・絵:H.A.レイ 訳:草下英明 (福音館書店)
秋田の冬は空が澄んでいて、星がたくさん見られます。絵本というには文章がたくさんありますが、親子で長く楽しめる本です。大人も知らなかったような、星にまつわるお話がたくさん入っています。
急行「北極号」 作・絵:C.V.オールズバーグ 訳・村上春樹 (あすなろ書房)
「サンタクロースっているの?どんなことしているの?」と思うようになったお子さんと一緒に。主人公のぼくは、「北極号」に乗って北極点を目指します。寒さが深まってきた夜、寝る前に読むのにぴったりです。
那須与一 -扇の的 監修:神田伯山 絵:宇野亞喜良 文:石崎洋司 (講談社)
「平家物語」と並ぶ作品といわれる「源平盛衰記」を基にした講談の絵本です。弓の名人・那須与一の活躍が臨場感たっぷりに描かれています。親子で講談師になりきって大きな声で読めば、心も体も温まります。
大人が読んで楽しい冬の絵本5選
いばらひめ(グリム童話より) 絵:エロール・ル・カイン 訳:矢川澄子 (ほるぷ出版)
幻想的でとても繊細な絵が魅力です。挿絵の細かいところからも物語が読み取れます。ディズニーのアニメ映画「眠れる森の美女」の基になったお話としても知られています。
すきになったら 作:ヒグチユウコ (ブロンズ新社)
ヒグチユウコさんの作品は、大人にならないと分からない良さがあると思います。まさに、子どもにはもったいない絵本(笑)。じっくり見て味わってください。
フワフワさんはけいとやさん 作・絵:樋勝朋巳 (福音館書店)
編みものが得意なフワフワさんのお話。フワフワさんと仲間との絶妙な距離感や会話が、とても愛しい絵本です。シリーズで3作品があり、どれもおすすめです。
たいようオルガン 作・絵:荒井良二 (偕成社)
明るい光と音の世界が恋しくなる冬に、ぴったりの絵本だと思います。太陽がぞうバスを見守る姿に「あなたは一人じゃないよ」というメッセージを感じます。絵の中の細かい書き込みも楽しく、何度見ても飽きることがありません。
せん 作・スージー・リー(岩波書店)
鉛筆の線から始まる、シンプルで美しい絵本。文字のない絵本なので、物語をそれぞれ想像することができます。大人はもちろん、お子さんも夢中になる作品です。
沓澤佳子さんは、秋田県で2番目の絵本専門士です。秋田市の小学校や福祉施設、高齢者施設などでの読み聞かせ活動を続けているほか、絵本専門士の知識を生かした講座や講演、読み聞かせボランティアへの助言・指導などを行っています。「きのね心の健康クリニック」所長で、こころの専門家でもあります。
<絵本専門士とは?>
絵本専門士は、絵本に関する高度な知識、技能そして感性を備えた絵本の専門家です。独立行政法人・国立青少年教育振興機構が養成講座を設けています。保育士や幼稚園教諭、医療や出版関係者など、子どもや絵本、読み聞かせに関わる人たちの間で人気のある資格です。
お気に入りの1冊を見つけて
子どもの時に親しんだ絵本は、大きくなってからもふっと思い出したり、「あの絵本に出てきた風景みたい」と現実と重なる瞬間があったりと、何か心のお守りになってくれるように思います。この冬、ゆっくりと絵本を眺める時間を持って、ぜひお気に入りの一冊を見つけてください。