2023年11月、五城目町のコミュニティスペース「ただのあそび場ゴジョーメ」に、10歳~18歳なら誰でも無料で利用できるデジタルテクノロジーの拠点「ハイラボ」がプレオープンしました。気軽にプログラミングなどのデジタルテクノロジーに触れ、遊んで学び、仕事につなげることができます。
学校に行けない・行かない子どもの居場所としても注目されるハイラボを紹介します。
学校だけでは得られない多様な学び方を経験できる拠点
ハイラボを立ち上げたのは、2016年に大阪から五城目町に移住した松浦真さん・北埜智子さん夫婦。学校での学びだけでなく、地域やコミュニティを通じて多様な学び方を探究する「ハイブリッドスクーリング」に取り組んできました。学校に行っている子どもも、行っていない子どもも、社会とつながりを持ち、自分らしく将来を作っていけるような教育が必要だという考えを持っています。
ハイラボのコンセプトは「デジタルテクノロジーであそんでまなび、仕事をつくる」。大学生や社会人のメンター(相談役)が常駐しており、教えてもらいながら一緒にアプリゲーム制作や音楽制作などができます。
デジタルだけでなく、機械の分解や化学実験、デザイン、イラスト制作などにも挑戦できます。12月前半には、デザインソフト「Canva」を使ったネームカード作りや、オンライン上で世界中を旅するゲーム「ジオゲッサー」のワークショップなども行われました。今後は、子どもたちの「これがやりたい」という意見に合わせて機材を導入したり、メンターを探したりして、サポート体制を整えていく予定とのこと。
また、ハイラボでは「18歳までに自分で仕事をつくり、お金を稼ぐ」という考えを提唱。制作物を五城目町内のコミュニティスペースで販売したり、身につけた技術で収入を得られるようにしたりと、遊ぶ・学ぶだけではなく、仕事につなげる経験をプログラムに取り入れています。これまで松浦さんが関わった中には、電気工事士の資格を取得し、実際に町内の温泉施設の照明を交換して収入を得た子どももいるそうです。
体験会の様子をレポートします!
11月12日(日)に行われた体験会には、五城目町だけでなく、大館市や潟上市など、県内各地に住む10歳から15歳までの子どもと保護者が参加していました。
この日の内容は、木材とLEDライトを使ったクリスマスツリーのオーナメント作り。レーザーカッターにパソコンから指示を送ってカットし、自分の手でやすりがけをして、LEDライトとボタン電池、導線テープで光らせます。
子どもたちはそれぞれのやり方でボタン電池にLED電球をつないでいました。
自分のやりたいことにどんどん挑戦できるハイラボ。参加した子どもたちに、ハイラボでやってみたいことを聞いてみると、「プログラミング」「3Dプリンター」「自分のキャラクターをつくりたい」「イラストを描きたい」など、さまざまな声が上がっていました!
プログラミングスキルで「いつでもどこでも働ける」ように
家族で旅をする中で訪れた五城目町の雰囲気に惹かれて、移住を決めたという松浦さん。「五城目町には、朝市文化をはじめとする『暮らしに根付いた働き方』があり、普段の生活を通して自然と学びが得られる。そういう五城目町だからこそできることがたくさんあると思っています」。
「デジタルテクノロジーの技術を身につけると、性別や属性に関係なく、世界中どこにいても自分のスキルで働くことができます。プログラミング教室には男の子ばかり集まる傾向が強いのですが、女の子や性的マイノリティの子どもたちにも、もっとプログラミングに親しみを持ってほしい。『秋田に縛られている』のではなく、『どこでも仕事ができるけれど、自ら選んで秋田に住んでいる』という人が増えてほしいですね」。
ハイラボは「休眠預金活用事業」の助成金を利用して運営しているため、参加費は無料です。
2024年3月までのプレオープン期間は原則として土曜日のみ開室(冬休みなどの長期休み期間は平日も開室予定)。本オープンとなる4月以降は、週4日程度の開室を予定しています。
「『プログラミングは自分にはできない』と思っている子も、気軽に来てみてほしい」と話す松浦さん。学校だけでは得られない学びに溢れたハイラボは、子どもたちが希望を持って将来を考えてみるきっかけになるのではないでしょうか。