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お母さん

【先輩womanに聞く】これからの子どもに必要となるチカラとは?

新連載となる【先輩womanに聞く】シリーズスタート!それぞれの分野で活躍している人生の先輩にインタビューをしていきます。記念すべき第1回は、横手市で学習塾を経営し教育を軸に活躍の幅を広げている奥真由美さんに、a.woman編集長の北林が、独自の視点で今聞きたいことを伺いました。

(左:北林編集長、右:奥真由美さん)

子どもたちと過ごした無人島での大冒険が原点

北林:奥さんは、学習塾からロボットやプログラミング教育、キャリア教育などなど、様々なアプローチで子どもの教育の携わっていらっしゃいますが、その根底にある想いはどこから生まれてきたものなのでしょうか?

奥:原体験としてあるのが、約30年前に勤めていた会社が企画した無人島での大冒険なんです。元々秋田で中学教師をしていた私が、心機一転をしようと上京して出会った会社が、ヨットクルーズを教育に活かせないかと考えていて。
当時は、“登校拒否児”が爆発的に増えていた時代。その子どもたちをヨットで大冒険に連れて行ったら、何かが変わるのではないかという仮説から始まって、ヨットで無人島に子どもたちを連れていく企画が生まれたんです。

(運命を共にしたヨットクルーザー 提供:奥真由美)

奥:第1回に集まったのは、12人の子どもたち。40日間海の上にいるのですが、最初の1週間くらいは子どもたちは船酔いで食べられないし、ほぼ寝たきりの状態。でも船酔いに慣れると俄然元気になって、たくましくなっていくんです!無人島にたどり着いたら、自分たちで家を建てて1カ月暮らすのですが、時計もない、食べ物は自給自足という生活。その中で変わりゆく子どもたちの姿を目の当たりにしました。

(みるみるうちに生きる力を目覚めさせていく子どもたち 提供:奥真由美)

北林:全部自分たちでやらなければいけない生活…それは本当にサバイバルな環境ですね。

奥:今じゃ考えられない企画ですよね(笑)。でも、その中で生きる力を自分たちでつけていく様を直に見て、私自身がとても納得したんです。これはもう勉強を教えるというレベルではないな、と。何もないところから、工夫をして使い道や活用の仕方を考えて自立していく。無人島で学んだ生きる力が、今の私の軸になっています。
だから、塾でも成績をあげるという視点は全くなくて。ロボットもプログラミングも、アプローチは違えども目指すところは同じで、子どもたちに自分でどうなりたいのかを考える力をつけさせてあげたいと思っているんです。

親と子どもの関わり方は成長に合わせて変化すべき

北林:学校の先の生きていくために必要な力!ですね。それは是非うちの子にも身につけさせたい…!
さて、次にアドバイスいただきたいのは、反抗期の子どもに親はどう対応すれば良いのでしょう?

奥:反抗期って子どもの成長発達の正常な反応ですよね。小学校後半から中学生くらいの時の反抗期には、親が子どもとの向き合い方をしっかり考えなければいけないと思います。でも今は、どう向き合えば良いかが分からないというお母さんが多いのが心配です。

北林:それはどうしてなのでしょう?

奥:子どもとの適正な距離がとれなくなってるのではないかな、と。子どもを心配するあまり、親が先回りしちゃったりとか。手をかけすぎてしまって、子どもに失敗させてあげられない。
親と子どもの距離は、成長発達の段階に合わせてとる必要があると思うんです。小さい時は目を離さずに、手もかけないとダメですが、成長するにしたがって、目は離さないままに、手をかけるのを少しずつ減らしていくという風に、変えていかないと。子どもが自立をしてきているのに、あれもこれもと手をかけられたら、”うざい”ってなっちゃいますよね。

北林:確かに…。目を離さない、というのは具体的にはどういう風にすれば?

奥:「認めているよ、分かっているよ」ということをきちんと子どもに伝えることです。信じるはあくまで自分の気持ちですが、認めているには相手に届けるアクションが入ります。見守っているだけでは相手に伝わっていないということがあるので、コミュニケーションをとらないと。そのためには、小さい時からコミュニケーションを取れる関係性をいかに築けているかが大切です。その関係性があれば、大事な場面で親の本気度をしっかりと届けることもできますから。

子どもは働くお母さんの背中をきちんと見ている

北:私自身がそうだったのですが、「子どもを預けて働くこと」に罪悪感を感じる母親がいると思います。モヤモヤした気持ちを、どうしたら解消できるのでしょうか?

奥:私は、100%罪悪感をカットして良いと思います!秋田の女性って情が深いし、子どもに対してもいい人であろうとしちゃう。私もそういうタイプなので分かります。でも気持ちがどうあれ働くという状況が同じだったら、意味のないストレスですよね。罪悪感を感じている時間がもったいないくらい。
仕事に集中しながら、子どもとの時間をきちんと作って向き合ってあげる、というようにメリハリのある切り替えができたら、罪悪感を感じているよりもずっと良いと思います。

奥:私も下の子が2歳の頃から復職をしました。義父母と同居をしていたので、より人一倍やらなきゃという気持ちでいたのですが、うちは夫が寝かせつけとかもやってくれて。今だからこそ思えますが、子育てとか家事はもっと家族というチームに協力してもらって良いんですよね。

北林:私は全部自分でやらなきゃと思って、つい一人でテンパっちゃうんですよね…。

奥:私も手放したり、お願いするのが下手で、夫に今でも指摘されます(笑)。でも、訓練だと思ってお願いしてみてください。今、本当に貴重な時間だと思うので。
うちの大人になった子どもに聞くと、「母さんが楽しそうに仕事をしていたのがうれしかった。」って言うんです。だから子どもたちにはイキイキとしているお母さんを見せてあげて欲しい。その先には楽しみが待ってますよ。ご褒美は今の苦労の何十倍にもなって届くから。それは私が保証します(笑)

きちんと認めてあげることが子どもの生きる力を育む

北林:ご褒美が来るんですね!それは、超楽しみです♡
では、最後に。先ほど「子どもに失敗させてあげられるお母さんが少ない」と言う話も出ましたが、子どもが失敗した時に自分で立ち直れる強いメンタルを身につけるにはどうすれば良いでしょうか?

奥:子どもが自分でどうしたいのかを、常に聞くことです。「あなたはどうしたいの?」と。服を選ぶにしても、食事にしても「あれを着なさい、これを食べなさい」と親の過度な押し付けで全部お膳立てをしてしまうと、何かあった時に子どもは「お母さんのせいだ」となってしまいます。自分で決めたことは自分で責任を持つことを、小さい頃から教えてあげましょう。

奥:また最近は、お母さんが子どものお手伝いさん状態に陥っているケースもよく見かけます。なんでも親がやってあげると、子どもの考える力が身につかない。子どもにとってみたら、生活の中に不自由がないからです。例えば子どもが下校時に雨が降ったけれど傘を持ってなかったとします。その時に親が迎えに行くのではなくて、子どもに“困ったな、どうしよう”と、考える機会を与えてあげることが大切なんです。

北林:奥さんの無人島での経験は、まさにそうした考える機会の連続だったわけですよね。

奥:一歩間違ったら死と隣り合わせでしたから。秋田県の子どもの学力はトップクラスですが、考える力と言う点ではまだまだです。でもこれからは、思考力がますます試されていきます。みんなと同じでは生きていけない時代です。だから子どもたちには日頃から「自分の得意なこと、好きなことを追求して伸ばしていくことが、これからの価値だよ」と伝えています。

北林:子どもの強みを伸ばすために親ができることはありますか?

奥:きちんと小さい頃から認めてあげることは絶対に重要です。大事な部分をしっかり捉えて、「すごいよ、わかっているよ」と伝えてあげる。なんでも褒める必要はないけれど、子どもの中に一つでも二つでも自信になる部分を育くんで、培わせてあげる。それが子どもの中に染み込んだら、その子の財産になっていくと思います。

奥:今は自己肯定感が低い子も多いという印象があります。去年県内でも有数の進学校に通う生徒に「私って価値がありますか?」と真顔で聞かれたことがあって。未来を背負っていく子たちが、自分の価値を見出せないという感情を抱いていることにすごくショックを受けました。
それって、育ってきた過程で認めてもらっている実感がないからだと思うんです。だからせめて親は子どもを認めていることを伝えてあげないと。それが子どもの自己肯定感を高めて、生きる力へと繋がっていくはずです。

(インタビュー後には、奥さんが経営するCafeハンモックのおいしいランチをいただきました!)

奥真由美さんとのインタビューを終えて

北林:子育てについての情報はいろいろありますが、奥さんのお話は筋が通っていてストンと私の心の中に入ってきました。モヤモヤがすっきりして、これからの子育ての方向性が見えた気がします。なんといっても奥さんのパワーがすごくて、元気をいっぱいもらいました!
素晴らしい人生の先輩の貴重なお話、ありがとうございました。

DATA

【奥 真由美さん プロフィール】

秋田市出身、横手市在住。20代の息子と娘の母。教師経験を経て、不登校の子ども達と大型ヨットクルーザーでミクロネシアを大航海し、無人島で暮らすという冒険型プロジェクトの現場教師として活動経験を持つ。サバイバル生活から得た貴重な体験を生かし、2000年より学習塾を経営。“生きる力“をつけるための課題解決型の指導をモットーに子どもと関わっている。

現在は学習塾での指導のみならず、キャリア教育コーディネーターとして地方創生やキャリア教育を中心に地域や学校現場での指導や活動、企業の人材育成の研修、さらには不登校ためのサポート(アドバイザー・コーチング・学習指導)なども行っている。

2018年には集いの場・語り場・つながる場として一軒家のコミュニティスペース「あそびとまなびの森 カフェハンモック」をオープン。地域の中で一人ひとりが活躍できる「出番作りと居場所作り」を目指し、コミュニティの拠点となるべく活動していくことを目標としている。

Writer

mitaslab.

mitaslab.

日々ときどき旅。日常と非日常を行ったり来たりしながら、毎日をアップデートするひとりプロジェクトをしています。現在は二拠点生活に挑戦しながら、フリーライターや企画で活動中。

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