大館市に工房をかまえるガラス作家・滝川ふみさんの作品は、カラフルで目を惹くかわいらしい模様が特徴。使う人の気持ちを楽しくさせてくれるようなガラス細工を作る滝川さんは、夢に向かって一歩一歩進み続け、決してあきらめない芯の強い素敵な女性です。滝川さんがガラス作家を目指し、オリジナル作品が生まれるまでと、ガラス細工にかける想いを伺いました。
手に職をつけるため、美短へ進学
ーガラス作家になろうと思ったきっかけについて、教えてください。
滝川 仙台で公務員をしていたんですけど、自分の中で「何か違う」という思いがあって、10年目で辞めて秋田公立美術工芸短期大学に入りました。もともと、絵を描いたり物を作ったりするのが好きで、最初は木工を学んで家具を作れたらと考えたんです。でも、いろいろなジャンルを学ぶ中でガラスが面白そうだと感じ、2年目は工芸美術学科ガラスコースを選択しました。美短を卒業後、富山ガラス造形研究所の造形科でさらに学び、その後、作家さんのアシスタントをしたり工房でバイトをしたりして2年間修行を積みました。
ー大館に工房を開いたのはいつですか?
滝川 2015年に、地元大館に戻って独立し、23n.の工房名で制作を始めました。公務員を辞めて美短に進学した時に「手に職をつける」と覚悟を決め、2年目でガラスコースを選択した時にはこの先ガラス細工で食べていくつもりだったので、迷いはありませんでした。日常で使うものを作りたいと考えていたので、ガラスのお皿やアクセサリーなどを作っています。昔から、1人で黙々と物を作るのが好きだったので、今の生活は性に合っていると思います(笑)
オリジナルのパッチワーク柄が魅力☆
ー滝川さんの作品は、とてもかわいらしいですよね。どんな方法で、こういった模様を作るんですか?
滝川 私は、キルンワークという方法で作っています。電気炉にガラスをセットして、長時間加熱することで窯の中で形を作る技法です。浅いお皿を作るときによく使われる技法です。
ユニークな柄を生み出す緻密な作業
ー具体的にどのような作業をするんですか?
滝川 まず、模様のもとになる、さまざまな色の粒状のガラスを作ります。そして、ガラスの板の上に粒状のガラスを並べ、電気炉に入れて溶かすと水玉模様のガラス板が出来上がります。
滝川 次に、このガラス板を並べてレイアウトして、電気炉に入れてパッチワークのような模様のある板を作ります。形を丸く整えたあと、電気炉でお皿の形に成形します。最後に、断面を削って滑らかにしたら完成です。一つのお皿を作るのに、電気炉への窯入れを4回するのですが、一回の窯入れには1日かかります。
ーすごく手間がかかるんですね!
滝川 工程を知っている人には「すごい手間」だと言われますが、私自身は手間だと思っていないんです。水玉の板を作るのもすごく地道な作業ですが、きれいに並べていく作業は楽しいし、端までぴったり埋まった時はすごく達成感があるんですよ〜! 私だけかな(笑)
試行錯誤を重ねた2年間
ーこういう模様を作ることは、学校で学んだのですか?
滝川 学校では、「この温度で加工するとこのようになる」という基礎の部分しか教わりません。だから、粒を並べて水玉模様の板を作ったり、それをパッチワークにしてお皿に加工したりというのは、すべて自分のひらめきです。
ーええっ! そうすると、滝川さんが作るガラス細工は本当に世界に一つの作品なんですね。
滝川 そうですね。こんなお皿を作ってみたいな〜と思って試作を始めてから、完成までに2年かかりました。商品として出せるようになったのは今年からなんです。
ー2年ですか!
滝川 もともと、パッチワーク柄のブローチやヘアゴムといった小さいサイズのものを作っていたんです。でもそれを、お皿の形にサイズアップしようと思ったら、とても難しくて。失敗の原因を探して一つ一つ潰していく、その繰り返しでした。でも、諦めようと思ったことはないですね。
販路を拡大して、よりたくさんのお客様に届けたい
ー滝川さんの作品は、どこで購入できますか?
滝川 実店舗だと秋田市新屋ガラス工房さん、大館市の大正堂さん、大館市のorune hair+dressさん、そのほかネットショップでもお取り扱いいただいています。また、最近はコロナの影響でなかなか開催が難しいのですが、クラフトイベントにも積極的に出店して対面で販売しています。
一つ一つ模様が違うので、お客様がどれにしようと迷ってくださる時間が好きです。手作りなので「これが正解」というものはなく、組み合わせて焼いた板が思い通りの出来になると「やった!」と嬉しくなります。ぜひ、一点一点手にとって見ていただけたら嬉しいです。
ー今後、チャレンジしてみたいことはありますか?
滝川 お皿だけの個展をしてみたいです。そのために、もっと技術を高めていきたいし、このお皿のファンになってくださる方が増えたら嬉しいです。そして、クラフトイベントがなくてもお客様に届けられるよう、もっと販路を拡大していきたいですね。
ガラス細工の材料がギュッと詰まった宝箱のような工房で、優しい笑顔を見せる滝川さん。かわいらしく斬新な作品を生み出しているのは、情熱とひらめきと、何事もあきらめない強い気持ちなのだということが伝わってきました。一つ一つ色合いも手ざわりも変わるガラス細工との出会いは、まさに一期一会。この世に一つだけの、自分だけのお気に入りの一点を見つけてみませんか♪
DATA
【滝川 ふみ さんプロフィール】
秋田県大館市生まれ。宮城県仙台市で公務員として10年間勤めた後、手に職をつけるため秋田公立美術工芸短期大学・工芸美術学科ガラスコース、富山ガラス造形研究所・造形科でガラス工芸を学ぶ。卒業後、作家のアシスタントや工房のバイトで修行を積み、2015年、大館市にガラス工房「23n.」をオープン。ガラス作家として、オリジナルのお皿やグラス、アクセサリーを作っている。
【滝川さんのガラス細工を購入できる場所】
<実店舗>
・秋田市新屋ガラス工房
秋田市新屋表町5番2号
TEL/018-853-4201
HP
・大正堂(菓子店)
大館市御成町1丁目24−1
TEL/0186-42-0484
HP
・orune hair+dress(美容室)
大館市観音堂553-3
TEL/0186-57-8117