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【a.woman保健室】子宮頸がんワクチン、受ける? 受けない?

近年、20〜30代の若い女性に増えてきている子宮頸がん。ワクチンで予防できる病気ですが、副反応の報道の影響が大きく、安全性が確認されたあともワクチン接種率は1%未満と低いままです。「正しい情報を入手して、自分の体を守ってほしい」との思いから、子宮頸がんワクチンの接種意思を調査した秋田大学医学部5年生の太田友(おおた・ゆう)さんに、子宮頸がんという病気や、その予防法について、お話をうかがいました。

子宮頸がんってどんな病気?

ーどのようにして発症しますか?

子宮頸がんのほとんどは、ヒトパピローマウイルスへの感染が原因で発症します。ヒトパピローマウイルスは男性も女性も感染する可能性のある、ごくありふれたウイルスで、感染しても9割の人は免疫力でウイルスを排除します。排除されずに感染が長期間続いた場合、「異形成(いけいせい)」と呼ばれるがんの前段階を経て、子宮頸部の表面にがんがある「上皮内がん」、がんが周囲の組織に入り込んだ「浸潤がん」へと進行します。主な感染経路は性交渉です。

ー感染すると、どんな症状が出てきますか?

初期の異形成の状態では、ほとんど症状はありません。進行するにつれて、おりものの異常、不正出血、性交渉の際の出血、下腹部の痛みなどが出てきます。

ー子宮頸がんの治療法を教えてください。

妊娠・出産を希望していて、異形成や上皮内がんなど初期の段階で病気が見つかった場合は、子宮の入り口付近だけ切除する「子宮頸部円錐切除術」を行うことが多いです。治療後は、妊娠しづらくなったり、早産の確率が高くなったりする可能性があります。

がんがもっと進行している場合は、手術・放射線治療・抗がん剤治療のうち、患者さんの年齢や持病の有無、妊娠の希望があるかどうかを判断して治療法を選びます。病気が進行すればするほど、子宮を温存できる可能性は低くなり、再発率や死亡率が高くなります。年間に約1万人が子宮頸がんにかかり、そのうち約3,000人が亡くなっています。

子宮頸がんは、予防できる「がん」

ー予防する方法はありますか?

子宮頸がんの原因の95%以上がヒトパピローマウイルスへの感染によるものなので、ワクチンを接種して抗体を作り、ウイルスの侵入をブロックすることで予防できます。ワクチンを3回接種すると、10年以上効果があることが分かっています。ワクチン接種率を上げて集団免疫を獲得することで、感染者数が減り、接種していない人の感染リスクも減らすことができます。

子宮頸がんワクチンのメリット・デメリット

ーワクチンには、どんな副反応がありますか?

子宮頸がんワクチンは、腕または太ももの筋肉に注射します。よくある副反応は、接種したところの痛み腫れで、たまに微熱が出ることもあります。痛みや緊張から、ふらふらしたり冷や汗をかいたり、血圧が低下して失神してしまうこともあるため、接種後はしばらく安静にした方が良いでしょう。失神を含めた重大な副反応は、1万人に5例程度と極めて少なく、そのうち9割が快復しています。

ー以前報道されたような、怖い副反応は無いのでしょうか?

日本国内でワクチン接種した人の中に、運動障害やけいれん、その他さまざまな症状が報告されていますが、同様の症状はワクチンを接種していない同じ世代の女性でも報告されていて、ワクチンとの因果関係は証明されていません。WHO(世界保健機構)をはじめ、世界中で安全なワクチンとして認められており、ヨーロッパの国々の接種率は約80%となっています。
また、万が一、ワクチン接種で副反応が起きた場合は、予防接種法に基づいて補償を受けることができます。

ーいつ接種するのが効果的ですか?

ヒトパピローマウイルスの感染経路は性交渉なので、性交渉を経験する前に免疫を獲得することで予防効果が高まります。12〜16歳の間に3回の接種を完了するのが効果的ですが、17歳以上や、すでに性交渉の経験のある人にもワクチンは有効です。CDC(アメリカ疾病予防センター)は、26歳まではワクチン接種を推奨しています。27歳以上の方は個別の判断となります。

ーワクチンを接種すれば、子宮頸がんにかからずにすみますか?

ヒトパピローマウイルスは100種類以上の型があり、ワクチンが全ての型に対応しているわけではないので、ワクチンを接種していても定期的に子宮頸がん検診を受けることが大切です。

日本のワクチン接種率が1%未満なのはなぜ?

ー子宮頸がんワクチンの経緯について教えてください。

日本では2013年4月に定期接種が始まりました。その後副反応の報告が増えたことから、約9年間、接種勧奨が差し控えられていたため、接種率が低い状況です。今後、接種していない世代の発症が増加することが懸念されています。2021年にワクチンの安全性が確認され、2022年4月から12〜16歳の女子を対象に個別の勧奨を行っています。

ー太田さんは接種しましたか? ワクチンについてどのように考えていますか?

私は勧奨が中止される前に3回接種しました。その後、副反応の報道が続いた時、親は「娘に受けさせて良かったのだろうか」と悩んでいました。接種するかしないか判断するためには、子宮頸がんという病気やワクチンについて正しい知識が必要だと思います。

太田さんからa.woman読者へのメッセージ

子宮頸がんは若い女性もかかる病気で、進行すると子宮を失うことになり、最悪の場合、命にも関わります。ワクチンはリスクよりも有効性が高いため接種が推奨されていますが、自分がワクチン接種した10代の時にそう言われても響いたかどうか疑問だな…とも思います。

今は、ワクチンについて分かりやすく説明しているサイトがいくつもあります。もし、ワクチンを接種するかどうか迷った時は、納得いくまで情報を調べて、判断してみてくださいね。 健康に関する正しい情報をゲットして、自分の体は自分で守りましょう!

DATA

【太田友さんプロフィール】
秋田大学医学部医学科5年。
秋田大学医学部の学生を含む7人の研究チームで、子宮頸がんワクチンの接種意識に関する調査を行い、今年9月に論文を発表した。https://www.mdpi.com/2076-393X/10/12/2005

<太田さんおすすめのサイト>
・「みんパピ!
・「日本産科婦人科学会ホームページ」子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために
・「#女子けんこう部」(東京都福祉保健局)

<子宮頸がんワクチンに関する最新情報はこちら>
「厚生労働省ホームページ」ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~

【監修】秋田大学医学部公衆衛生学講座 野村恭子教授

キーワード

秋田県内エリア

Writer

Makiko

Makiko

有限会社無明舎出版勤務を経て、フリーライターとして、雑誌、フリーペーパー、WEBなどの記事を執筆。秋田県大館市在住。秋田県北を中心に、秋田の観光・食・子育て・話題のスポット・スポーツなどについて発信しています。 mama plan(ママプラン)所属
https://mamaplanodate.net/information/

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