なんだかおしりに違和感が…もしかして痔?こんな経験をした女性は少なくないはず。今や成人の半数に痔の症状があるといわれています。女性は痔になりやすい様々な要因を抱えているうえ、体が冷える冬は症状が悪化しやすいそうです。原因や治療、予防について秋田肛門外科おぬきクリニック院長・小貫学(おぬき まなぶ)医師にお話を伺いました。
そもそも「痔」とは?症状や治療法を聞いてみた
ー痔にはどんな種類があるのでしょうか
実は「痔」とは肛門周囲の疾患の総称です。なかでも代表的な3つの痔について説明します。
1つめは痔核(じかく)、いぼ痔のことです。肛門よりも中の直腸側にできる「内痔核(ないじかく)」と肛門の外にできる「外痔核(がいじかく)」に分けられます。
痔核ができる人に男女差はなく、排便時や力仕事のいきみなどで肛門に負担がかかるのが原因です。女性の場合は出産時のいきみによってできることもあります。また、座りっぱなしで肛門付近の血行が悪くなってうっ血してできることもあります。
治療法としては、軽度であれば飲み薬や塗り薬で対応しますが、悪化すると手術が必要です。手術はメスを入れる手術と注射による手術があります。注射の手術は「ALTA(アルタ)療法」と呼ばれ、所要時間は5分程度。メスを入れて痔核を切り取る手術と違い、出血もないので体の負担も少なく日常生活にすぐ戻れます。
2つめは裂肛(れっこう)、切れ痔と呼ばれるものです。これは男性よりも女性に多く、便秘が原因です。硬い便を無理に出すと肛門の出口付近が切れてしまいます。
軽度であれば飲み薬や塗り薬で治療が可能ですが、繰り返して傷口に便が付着して重症化すると手術が必要になる場合もあります。早い段階で発見すれば、生活習慣を改善して排便時の負担を減らすだけでよくなることもあります。
3つめが痔瘻(じろう)です。こちらは下痢気味の人に多い傾向があります。歯状線(しじょうせん)という、直腸と肛門の境目付近のくぼみに便が入り込み、細菌感染によって膿がたまります。進行するとおしりの皮膚が破れて膿が排出され、直腸とおしりの皮膚の間に膿の通り道となるトンネルができます。腫れや発熱といった症状も現れます。
これは手術しか治療法がないため、早めの受診が必要です。男性に多いと言われていますが、一定数女性の患者さんがいるのも事実。ふだんから下痢気味の人は注意が必要です。
冬は要注意!女性が痔になりやすい理由は
ー痔になりやすい季節はありますか?
夏よりも冬の方が多いです。夏はこまめに水分補給をしますが、冬は意識して水分を取ることが減ります。その結果、水分不足で便秘になり、痔を引き起こしてしまいます。
また、寒くなると外に出る機会も減り、運動不足で便秘になりがちです。特別な運動をする必要はなく、ただ歩くだけでも腸が刺激されて便が出やすくなります。
ー女性特有の原因はありますか?
ふだんは快便でも月経前だけ便秘になり、痔になってしまう人もいます。それは、月経前に多く分泌されるホルモンが便の水分を吸収する性質をもっているためです。
また、妊娠・出産・授乳期はいずれも痔になりやすい要因を持っています。妊娠中はホルモンの変化などから便秘になりがちです。出産時に力いっぱいいきむことで痔になる女性も多いです。授乳期も母乳で水分が必要とされ、便秘になりがちなので痔のリスクは高まります。
おしりトラブルの対処法は?
ー痔にならないために、また、痔になってしまった場合にはどうしたらよいでしょうか
運動をすることと、食物繊維をとること。刺激物やアルコールは控えめに。座りっぱなしにならないよう気を付けるのも大切です。すでに症状がある人は悪化しないよう1時間に一回姿勢を変えるなどしてください。長距離のドライブなども注意が必要です。
また、拭き過ぎや洗い過ぎは禁物です。痔を悪化させることになります。
ーそのほかにも肛門のかゆみを訴えて受診する女性もいるそうですね
これも掻きすぎや拭き過ぎ、洗い過ぎなどによるものです。メイクを落としてそのまま寝たら肌がつっぱるように、せっけんで洗い過ぎると本来必要な油分もとりのぞいてしまいます。排便後にウォシュレットを使い過ぎたり紙でゴシゴシと拭くのは危険です。入浴時もお湯で洗うだけでおしりは十分清潔な状態を保つことができます。
気になる症状は我慢せずに受診を
ーおしりの悩みを抱える女性にメッセージをお願いします
早期発見、早期治療が一番です。悩んでいたらまずは受診してみてください。悪化する前に処置することで、不要な手術をしなくて済みます。
恥ずかしい、男性に会いたくないという声もよく聞きますが、当院では名前ではなく番号で呼ぶ、女性専用の待合室を設置するなど、プライバシーに配慮して診療を行っています。
痔の原因は日頃の習慣の影響が大部分を占めます。歯医者さんが虫歯にならないための指導をしているように、肛門科では痔にならないための指導をします。便通改善や生活習慣の指導などで症状がよくなることもあるのでまずは相談してみてください。
取材を通して感じたのは、痔になる女性が特別なのではなく、痔は誰もがなり得るとても身近な疾患だということです。だからこそ、日頃の生活の中で防げる部分も多いということを知りました。お話を伺った小貫先生は、女性が安心して治療できるよう様々な配慮をされています。こうした動きがもっと広がってほしいと思うと同時に、この記事が、おしりの悩みを抱える女性に届き、受診するきっかけになることを願っています。
DATA
【小貫学医師 プロフィール】
弘前大学医学部卒業。中通総合病院や宮城県立がんセンターを経て、2003年中通総合病院消化器外科科長。中通総合病院在籍中に、メスを使わない痔核の治療法「ALTA療法」を秋田県内で初めて導入。2011年秋田肛門外科おぬきクリニックを開業。開業以来1万5000人以上の患者を診察。
【秋田肛門外科おぬきクリニック】
〒010-0041 秋田市広面字鍋沼35
電話/018ー874ー7851
休診日/日曜・祝日
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