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年齢や性別にとらわれず、ヨガを通して日々の生活を豊かなものに

ヨガの秘密基地 Guide-栞- 重久愛さん

2019年から3年間、秋田市で地域おこし協力隊としてヨガを中心に活動してきた重久愛(しげひさ いつみ)さんは鹿児島県与論町出身で元警視庁刑事という経歴の持ち主。協力隊退任後、自宅にヨガサロンを開設しました。重久さんに、ヨガや秋田での生活について伺いました。

異色の経歴とヨガとの出会い

―与論島、刑事、ヨガ講師…どれもインパクトが強いですね。刑事時代はかなり忙しかったのでは?

重久 異色ですよね(笑)。どうせなら厳しい所でもみくちゃにされようと思って高校卒業時に上京しました。実はさらに学生だった期間もあって、仕事をしながら大学の勉強をしていました。そのこともあってとにかく忙しかったですが、刑事スイッチが入ると体が動いて、誕生日の出勤中に痴漢に合ってそのまま現行犯逮捕して職場に連行したこともありました。

―それは壮絶です!ヨガを始めたのもその頃ですか?

重久 そうです。20代前半でした。とにかく忙しくて全然寝てなくて。移動の電車が寝る場所みたいな感じだったんです。さらに内臓疾患も発覚して。そんな時に友人が「仕事のパフォーマンスも向上するよ」と半ば無理やりヨガに連れて行かれました。

ー最初はヨガに良いイメージがなかったそうですが、なぜ没頭したんでしょう?

重久 きれいな女性のものっていうイメージだったんです。きれいな人がきれいな水着を着て行う。それが、友人と行ったホットヨガで、鏡の中の自分にハッとしたんです。体が歪んでいて、顔色が悪い。目つきもきつい。それまで自分が考えてきたことや行いが現れている気がしました。人の文句を言ったり、仕事で上手くいかなかったのを人のせいにしてたんじゃないか?とか。その瞬間にいろんなことを思って、根本から改善しなくちゃと。そこからハマっていきましたね。


―そこから10年以上ヨガを続けて、退職のタイミングで資格をとったんですね。

重久 ずっと資格は取りたかったんですけど、どうしてもまとまった時間がとれなくて。協力隊として秋田に来る直前の2か月ちょっとの間はインドにいました。本場で資格を取りたくて、今しかないって思って行きましたね。

(インド滞在時。念願の本場でのヨガ ※写真提供 重久さん)

(インド滞在時。ヨガだけでなく様々な文化に触れた ※写真提供 重久さん)

秋田に来て5年

―地域おこし協力隊として秋田に来たきっかけはなんですか?

重久 身内に不幸があって家族全員が落ち込んだことがあったんです。そんな時だからこそ、早く親に孫の顔を見せたいと思って退職と結婚を決めました。夫の実家がある秋田市に移住することになり、移住ツアーで地域おこし協力隊の存在を知って、秋田のことを勉強できると思って応募しました。

(協力隊在任時から多様なヨガイベントを運営 ※写真提供 重久さん)


―秋田の人の印象はどうですか?

重久 頼りがいがある!どうすればいいのかなっていうときに人を紹介してくださったり。これまでの活動はいろんな人の助けがあってこそ実現しています。秋田に来る前は「田舎は裏で何を言われるかわからない。気をつけろ。」という人もいましたが、全然感じません。私が聞いていないだけかもしれないけど(笑)。
あとは、お客さんを強く引き込もうとしない、無理な商売っ気がないところも好きです。ちょっと故郷と似てるなと思いますね。

―秋田暮らしはすっかり慣れましたか?

重久 最初は冬の駐車場の雪山に歓喜しましたが、最近は大変さも身に染みています。雪かきが下手すぎて(笑)。あとは山菜が大好きです!与論島には山自体がないので。特に好きなのはコシアブラです。天ぷらや混ぜご飯にして食べます。雪も山菜も、「春が楽しみ」という気持ちがわかるようになりました。

(太平山山頂にて ※写真提供 重久さん)


―協力隊在任中からヨガイベントをされていましたが、3年の活動を終えて「ヨガの秘密基地Guide-栞-」という自宅サロンを開かれました。今後もヨガを中心に活動されるんですね。

重久 協力隊が終わったらヨガで食べていくと決めていて、家を建てる際にサロンを作るため夫にプレゼンしました。ここでほぼ毎日レッスンをしています。あとはオンラインで朝ヨガもやってますね。

(自宅のヨガスタジオ)


―どんな方がレッスンを受けていますか?

重久 小学生や90代の方もいます。スポ少チームの体作りだったり、緊張対策のメンタルトレーニングとしてヨガを行うこともあります。男性も増えました。男性に多い、体が硬い人向けのヨガのやり方もあるんです。フィジカル面の指導はもちろんですが、ヨガのマインドを日常に取り入れてもらえたらいいなという気持ちがありますね。

(秘密基地はナマケモノの看板が目印)

母として ヨガを拠り所に

(男鹿水族館GAOでのヨガイベント。息子さんと一緒に ※写真提供 重久さん)


―子育てについて教えてください

重久 2歳の息子がいますが、もう…宇宙人!ずっと動いてるしママ友に「きれいだね」ってナンパします!お調子者は私似かもしれないです。
夫は留守がちで息子と2人の時間が多いですね。基本的に放任主義なので外出先で床や地面をべたべた触ることもあります。東京ならクレームがきそうだけど、秋田はその辺はおおらかで、のんびり育児をしています。
具合が悪いときはやっぱり私が対応することが多いです。周りにはご迷惑をおかけしちゃうけど…。今はイヤイヤ期もありますが、心の沈め方は知っているので、ヨガやっててよかったー!って思います。

(※写真提供 重久さん)

―ヨガサロンは子連れの方も多いそうですが、気を付けていることはありますか?

重久 1時間のレッスンって、子どもがいるとあやして終わっちゃうんですよ。中には育休中の方もいます。働いていないのにこの時間にお金を使って、しかもリフレッシュできないと儚い気持ちになるんです。連れてこない方がよかったかな?とか思うじゃないですか。
だから、途中で休んだりして、できるタイミングですすめられればいいと思っています。分刻みでレッスンを入れると終わった後に「早く出なきゃ感」がありますよね?私はあれが苦手で。ゆっくりしてほしいので、レッスンの間は時間をとっています。
サロンでは、子育てしていて「こうだったらいいな」と思った点は最大限できるようにしています。

どんどん広がる、秋田暮らしを経て見つけた夢

―今後の夢を教えてください。

重久 ひとつは、与論と秋田をつなげたい。食べ物の交流もそうですけど、リトリートとか。交換留学のような形でお互いの土地に行ったら面白いと思います。
(※リトリート=住み慣れた土地から遠く離れた場所で疲れを癒す過ごし方のこと)
あとは、いずれはヨガカフェをやりたいです。いろんなヨガの先生がそこで教えられるような。秋田に来た当初より、ヨガ講師の数もぐんと増えたので、ヨガを広めたいという仲間の存在が嬉しいです。また、ヨガイベントや社会貢献活動を企画運営している「せば、YOGA!プロジェクト」を一緒に盛り上げてくれる人を見つけたいです。心身ともに満たされた状態を目指す「ウェルビーイング」な活動に興味のある方とつながりたいですね。プライベートでは、ヨガをしているしていないにかかわらず、人と人との付き合いを深めて秋田で人の輪を広げていきたいなと思います。

(故郷の海 ※写真提供 重久さん)

(与論島の名所、百合が浜にて ※写真提供 重久さん)

印象的だったのは、朗らかな笑顔とは反対に、ゆっくり丁寧に言葉を発する姿でした。自分を「行動する前に熟考するタイプ」という重久さん。これまでも考えに考えて決断してきたんだろうと感じました。過酷な仕事、つらい経験、見知らぬ土地での生活、子育て。数々のことをヨガとともに乗り越えてきた重久さんに芯の強さを感じ、これからの活躍が益々楽しみになりました。

DATA

【重久愛さん】
鹿児島県与論町出身。高校卒業と同時に上京し警視庁に就職し、学業と両立しながら刑事としてキャリアを重ねる。2019年に秋田市に移住し地域おこし協力隊として3年間活動。移住希望者のマッチングなどを担当したほか、「せば、YOGA!プロジェクト」などヨガを通じて地方創生を図るイベントを企画。2022年の退任後、自宅に「ヨガの秘密基地Guide-栞-」をオープン。
「小さな気づきを毎日に」をモットーに、日々小さな幸せを感じてもらえるようヨガを通した活動を展開。1児の母。

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Writer

オカ ヒロコ

オカ ヒロコ

ライターであり、フリーアナウンサー。取材や執筆のほか、ナレーション、MCもします。気になる場所や人を見つけたら話を聞きたくなっちゃう知りたがり。食、子育て、おでかけ、頑張る人、幅広く発信します。 大仙市出身。2児の母。

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