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12DECEMBER
2019

今月のCLOSE UP

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秋田で気軽に楽しめるフレンチを!地方発のフランス料理を展開する新進気鋭の若手シェフ

「Sous-sus(スシュ)」オーナーシェフ 澁谷 瑛子 さん

2019年秋、秋田のフランス料理界に新風が吹き込みました!10月16日、秋田市にフレンチレストラン「Sous-sus(スシュ)」がオープン。オーナーシェフの澁谷瑛子さんは、フランスの三ツ星レストランでの修行経験や、東京の有名レストランの料理長というキャリアを経て、名だたるレストランガイドブックにその名を連ねるなど、今、業界注目の料理人です。これまでの道のりや、お店にかける想いについてお話を伺いました。

幼い頃から培われた食への想い

— いつ頃からコックを目指していたのですか?

澁谷 小学校の卒業文集には「コックになりたい」と書いていました。わが家では誕生日が来ると、まちに1軒あったフレンチレストランに行って、家族揃って食事をするのが恒例だったのですが、それがとてもうれしくて幸せな時間だったんです。それに、そこで味わうフランス料理のソースの味に感動したことも大きいですね。料理で人をハッピーにできるコックはかっこいい!と思いました。

— ご両親が食育に熱心だったのですか?

澁谷 もともと“いいものを食べさせてあげたい”という想いがあったようです。畑で無農薬の野菜を育てて旬のものを食べさせてくれたり、休日になると家族で釣りに行って、釣った魚を母がその場でさばいてくれたりと、何がおいしいかを大切に教えてくれました。父も母も教職の家系で育って二人とも先生をしていたのですが、私たち姉弟には「自分の好きな道を目指して欲しい」と、はじめから応援してくれていましたね。

ついていくのに精一杯だった最初のフランス体験

— そこからコックになるために、どのような道に進んだのですか?

澁谷 高校からフランス語を学びたかったのですが、まずはどこでも通用する英語をと、秋田南高校英語科に進学しました。卒業後は「エコール辻 大阪」で1年間フランス料理の基礎を学び、さらに「辻調グループフランス校」で本場の指導を受けました。

フランス校の教授は本国でも名誉あるコックの方で、最初の半年間は生徒がコック・サービス・仕込み・お客様の4グループに分かれて、朝7時から夜10時まで、シミュレーション形式の実習を受けました。当時のメンバーは今でも集まったり助け合える大事な仲間ですね。星付きのシェフになっている人も多いので、「私も頑張ろう!」と思えるんです。

— まさに戦友ですね!後半の半年間はどのような内容だったのですか?

澁谷 後半は実地研修ということで、私はフランス北西部にある日本人が全然いない地域のレストランに配属されました。まだフランス語に不安が残る中、みんなと別れて一人になった瞬間はさすがに心細くなりましたね。レストランに到着したのは夜営業直前のピリピリしている時間帯で、その夜から仕込みを担当したのですが、たまたま得意な作業だったので「この子できるじゃん」と、スムーズに受け入れられた気がします。

研修中はコック同士のケンカなどいろんなことがありました(笑)。でも日本人ならではの几帳面さが良かったのか、1カ月ちょっとで担当するセクションのサブシェフになったり、本当は無給のところをお小遣い程度に賃金をいただいたりと、評価はしていただいたと思います。

— 休日はどのように過ごしていましたか?

澁谷 この土地でしか触れられない食材を今のうちに!とばかりに買い込んで家で調理したり、レストランのフルコースを食べ歩きしたりしていましたので、1年で体重が10kgも増えました(笑)。

国内フレンチの有名店でコック人生をスタート

— 卒業後、最初の就職先はどのようにして決まったのですか?

澁谷 ゆくゆくはまたフランスに行こうと思っていたので、フランス人が経営しているレストランを探していたんです。そこで初めて入った代官山「ル・プティ・ブドン」の心地良いサービスや、カジュアルな中にも本質がしっかりあること、細部まで行き渡った心意気のようなものに「これだ!」と。翌日すぐに「働かせて下さい」と電話をして、面接後就職が決まりました。


(「ル・プティ・ブドン」の一皿。仔羊のロースト、南仏野菜のファルシ、パプリカとナッツのソース)

オーナーのアンドレ・パッションは、日本にフランス料理を広めた第一人者で、フランスから数々の勲章を授与されている人物。そしてその息子で総支配人のパトリック・パッションは、とても優秀なサービスマン(※)なんです。そんなパトリックのもと、最初の1〜2年はサービスマンとして働いて、それから厨房に入りました。(※)各分野の専門知識を持つホールスタッフ。

— 最初の就職先がいきなり名店だったんですね!サービスマンとしての経験も大きかったですか?

澁谷 将来的に自分の店を持つことが目標だったので、サービスの知識は必要だと思い、ワインやチーズなどの勉強は続けていました。それで副料理長だった28歳の頃、レストランサービスコンクールにエントリーしたんです。そのコンクールは、優勝者が世界大会に出場できる国内最高の権威ある大会で、エントリーした約150名の中から女性で初めて決勝12名に残ることができました。

(丸鶏のローストを捌いて提供する種目で実技を行う澁谷さん)

二度目の渡仏で確立した自分のベース

— その後、またフランスには行かれたのですか?

澁谷 ワーキングホリデーのビザが使える30歳までにもう一度フランスに行きたかったので、数年前から頼んでようやく30歳で行けました(笑)。アンドレが紹介してくれたレストランは、南仏にある「オーベルジュ・デュ・ヴューピュイ」という三つ星で、そこはフランス研修時に行けなくて心残りだったお店なので運命を感じました。


(2015年、最後に働いたパリのレストラン「ドミニク・ブシェ」の研修最終日に、スタッフ全員と常連のお客様と一緒に記念撮影)

結局、お店のバカンスの時期と重なって働いたのは半年間だけでしたが、もう濃すぎましたね!オーナーシェフのジル・グージョンは、フランス料理の基礎を大事にするのはもちろんのこと、料理のためならなんでもするといった感じで。朝7時から夜中2時までずっと仕込みをしたりとか、店内中を掃除した後に壁に汚れを見つけると朝まで掃除し直すとかまるで軍隊のようで、ここで働いたらもうどこでも怖くないと思いました(笑)。

そういった料理に対する姿勢や伝統を重んじながらも、出される料理は驚きの演出や趣向の凝らされたものばかりなので、60席ある店内は連日満席でしたね。そこでの経験が、今の私のベースになっていると思います。

— 帰国後のビジョンは決まっていましたか?

澁谷 もう一度サービスマンとして働いてまたコンクールに出るつもりでしたが、いろいろな事情からプティ・ブドンの料理長として働くことになって。恩返しの気持ちも込めて2年半勤めました。その間、ミシュランに並ぶガイドブックの「ゴ・エ・ミヨ」にお店が掲載されて、私個人も賞をいただくことができました。


(「ゴ・エ・ミヨ2018」で「期待の若手シェフ賞」を受賞)

まさか自分が受賞できると思っていなかったので、ただただ驚きでしたね。錚々たる有名シェフの方々と同じ壇上に立つことができて、感動と嬉しさでいっぱいでした。お世話になったシェフ達も駆けつけてくれて、受賞スピーチもしましたが緊張のあまり声が震えて何を話したか覚えていません(笑)。

満を持して、地元にフレンチレストランをオープン!

— 秋田にお店を出すことはいつ頃から考えていましたか?

澁谷 高校生の頃からです。まずは秋田の人たちにもっとフランス料理を知って欲しいということと、東京時代のお客様にも足を運んでもらって、秋田を元気にしたいという想いからオープンさせました。

気軽に楽しんで欲しいので、お店は入りやすくて居心地のいい空間をコンセプトにインテリアを考えましたし、価格帯もランチは1,800円〜と、フレンチとしては抑えめに設定しています。

— 店名「Sous-sus(スシュ)」の由来は?

澁谷 これはバレエ用語で、直訳すると「下に上に」という意味です。私は幼少の頃から高校卒業までバレエを習っていて、その厳しさを経験したからこそレストラン業界でもやってこれたと思っているんです。地元秋田に戻ってきて、下にしっかりと根付き、上に成長・発展していきたい、という願いを込めて付けました。

— 通りに面した大きな窓が開放的ですし、店内も明るくて優しい雰囲気ですよね。オープンしてみて感想はいかがですか?

澁谷 はじめは「おいしい」と言っていただけるか不安でしたが喜ばれるお客様も多いですし、「本当にこの値段でいいの?」という声があったりと、うれしい反応ばかりでホッとしています。


(「Sous-sus」の一皿。仔牛のロースト、ハーブと共に…。グリーンピースのピューレ、マデラソース)

それに秋田の食材を扱うのがすごく楽しくて、その良さを再認識しているところです。毎日市場で仕入れる時に、「これで何か作ってみて」とお店の方から宿題をもらえるのも勉強になります。これまでとはまた違う、自分の料理ができてきたなぁという手応えを感じている毎日ですね。

話を聞けば聞くほど、「秋田でお店を開いてくれてありがとう!」と思わずにはいられませんでした。秋田の新鮮食材の魅力を最大限に引き出し、確かな技術と知識に裏打ちされたイマジネーションあふれる料理から、澁谷さん流のフレンチをぜひ堪能してみてください!

【澁谷瑛子さんプロフィール】
由利本荘市生まれ。35歳。「エコール 辻 大阪」「辻調グループ フランス校」卒業後、東京・代官山「ル・プティ・ブドン」へ就職。28歳でエントリーしたサービスコンクール「メートル・ド・セルヴィス杯」で、女性初のファイナリストとなる。30歳で再度渡仏し、南仏の三つ星レストラン「オーベルジュ・デュ・ヴューピュイ」でフレンチの伝統を体得。その後、ル・プティ・ブドンの料理長を2年半務め、ミシュランと双璧をなすガイドブック「ゴ・エ・ミヨ2018」で「期待の若手シェフ賞」を受賞。2019年10月、自身がオーナーシェフのフレンチレストラン「Sous-sus」を立ち上げる。

【フレンチレストラン Sous-sus(スシュ)】
秋田市大町1-2-40 あくらフォー・スクエア・ハウス
電話番号/018-853-7614
営業時間/11:30〜14:00、18:00〜22:00
定休日/月曜、第1・3日曜
駐車場/なし
料金/ランチ1,800円、2,600円、3,400円
ディナー4,800円、6,600円、8,500円
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この記事を書いたライターこの記事を書いたライター

熊谷 清香

地元タウン誌や広告代理店勤務を経て、フリーランスで企画・編集・取材・インタビュー・ライティング等をしています。小中学生の母。秋田市出身。

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