秋田の女性のWork&Life a.woman

9SEPTEMBER
2020

今月のCLOSE UP

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「ちょうどいい庭」に向き合う。心地よい暮らしを提案するフリーのガーデンデザイナー

庭沐(にわぼく) 代表 平塚 郁子さん

秋田市に緑あふれる事務所を構え、フリーのガーデン・エクステリアデザイナーとして庭沐(にわぼく)を主宰する平塚郁子さん。前職は公務員だったという平塚さんが、現在のキャリアへ転身することとなったいきさつや、コロナ禍で注目が集まる「庭づくり」の魅力についてお話を伺いました。

きっかけは、「水の教会」と今は亡き上司

ーまず初めに、平塚さんが建築やエクステリアに興味を持ったきっかけを教えてください。

平塚 旅行でたまたま安藤忠雄設計の「水の教会」を見学したことがあったんですが、その建物と水と緑のデザインがすごく素敵で、感動して。そこから、いろいろな建築を見てまわるようになりました。

(平塚さんが撮影した水の教会。「今思うと水、緑などエクステリアを含めた建築に惹かれていた」と平塚さん)

平塚 建築の世界に憧れていましたが、親を説得できず建築の学校には進めなくて、短大を卒業後は東京で公務員をしていたんです。でも、やっぱり建築の夢を諦め切れず、働きながら夜間学校で1年間建築の勉強をして、2年で退職。東京の設計事務所に就職しました。ところが…、就職してみたら建築の設計ではなくて、庭や外構などエクステリアの設計事務所だったんです。

ーええ!思っていた仕事と違ったんですか?

平塚 違いました(笑)。「設計」とついてたので、建築の仕事だろうと思って入ったんですけどね。

ーでも、今もエクステリアのお仕事を続けていらっしゃる理由は…?

平塚 この仕事を続けてこれたのは、東京で勤めていた会社の専務との出会いがあったからです。とにかく素敵なエクステリアデザインをする方で、とても尊敬していました。昔ながらの人ですから手取り足取りではありませんでしたが、よく育てていただき、専務を通して外構や庭のデザインの魅力を知っていきました。でも、専務は50代という若さで亡くなったんです…。訃報を聞いてたくさん泣きました。今でも、専務にもらった三角スケール(設計図面を描く時に使用するものさし)を、大事に神棚に飾っています。

一人では踏み出せなかった独立。大事なのは人とのつながり

ー専務と出会い、エクステリアの仕事を続ける中で、独立へ踏み切ったのにはどのようないきさつがあったのでしょう?

平塚 2004年に結婚を機に秋田へ戻りましたが、その後離婚。人生が変化したことがきっかけで2014年に独立しました。独立に踏み切れたのは、仕事で知り合った某住宅会社の社長が、背中を押してくれたのが大きいです。「平塚さんならできるよ!」と応援してくれ、庭沐として第1号となるお客様も紹介してくれました。

(2014年に庭沐第1号として初めてデザインした外構)

ーこれまでで印象に残っている仕事はありますか?

平塚 東京での初仕事や、秋田に帰ってきて就職した時もそうですが、最初のお客様のことは、忘れることができません。庭沐第1号のお客様には「平塚さんに頼んでよかった」という最高の褒め言葉をいただけて。施工後もときどき様子を見に伺っていますが、今年は、職人ではない私個人に剪定を任せてくださいました。

ー独立につながったのは、導いてくださる方とのご縁、お客様の存在があったからなんですね。

平塚 そうですね。一人では独立できなったと思います。一緒に働く職人さんの存在にも勇気をもらっていますよ。庭沐の職人さんたちって、腕もピカイチ、仕事への向き合い方もピカイチなんです。「多能工(たのうこう)」と言って、造園技術だけでなく、土間コンクリート、レンガ積み、塀やウッドデッキのほか、物置だって造るし、デザインセンスも必要…。たくさんの能力を持つ、なんでもできる人たちなんです。

どうしても高齢の方が多い業界なので、若い人たちにも興味を持ってもらえるよう、外構・庭づくりの魅力を今後はもっと伝えていきたいですね。手に職をつければ一生の宝になるし、自分でものを作れる喜びって大きいと思います。


(庭沐の職人さんが手によりをかけて施工した外構)

コロナ禍で、人は内に向かう。グリーンの癒しの力を今こそ。

ー今年は、コロナ禍の自粛で庭づくりに目覚めた人も多そうです。最近のニーズの変化はありますか?

平塚 家の中で過ごす時間が増え、意識が内に向かうからか、室内グリーンのデザイン依頼が多いように思います。存在感のある大きな観葉植物を置くのもいいですが、小さい植物をたくさん部屋にちりばめるのも素敵です。鉢の色調を統一すると、たくさんあってもスッキリ見えますよ。何年も付き合っていくものなので、飽きのこないシンプルなものをおすすめてしています。

平塚 庭で育てた植物を、想像力をふくらませて利用するのも楽しいです。ドライフラワーにして部屋に吊り下げたり、クリスマスのスワッグや正月飾りにして作ったり、料理やお酒に使ったり…。そうやって庭と室内の植物が巡り、グリーンが循環していく暮らしって、心地よいものですよ。

ー事務所の中にもたくさんのグリーンがあって、すごく癒されるというか…。外にいるような気分になります。

平塚 グリーンには、副交感神経を優位にし、免疫力を高め、ホルモンバランスを整える力があるそうです。大学の研究で数値的に実証もされていて、予防医学として注目されています。

毎日5分でいいんです。朝の涼しい時間に、庭の雑草をとるルーティンをつくるといいですよ。確実にお庭がきれいになる達成感も得られるし、日々変化する植物を育てる楽しみもあります。私なんか、「今日もきれいだね。元気だね。今日は元気ないけどどうしたの?」っていつも緑に話しかけてます。「癒し」と「楽しみ」をくれる植物を、ぜひ日々の暮らしに取り入れてほしいです。

(今の時期は、夏の花エキナセアが全盛)

目の前のお客様に向き合うこと。毎日庭に向き合うこと。

ー最後に、平塚さんがお庭のデザインを提案するときに大事にしていること、そしてこれからの目標を教えてください。

平塚 大事にしているのは、目の前のお客様1人1人の話をじっくり聞くこと。目標は、目の前のお客様にとってちょうどいい庭を提案して、日々の「癒し」や「楽しみ」を提供し続けること。「庭を造ってよかった」と言ってもらえるような仕事を、コツコツと続けていきたいです。毎日が居心地よいと感じられれば、その対象は何でもいいと思うんです。でも、それがもしグリーンだったら、私は全力で応援します!


(ナチュラルな雰囲気でデザインされている庭沐のガーデン)

目の前の人に向き合い、ライフスタイルに合わせてバランスよい庭をデザインする平塚さんの姿勢は、まさに、日々草花と向き合う庭仕事そのもののようでした。植物の植え込みは春の次に9月がベストシーズンだそう。新築を検討中の方、お店のディスプレイに悩んでいる方、日常へのグリーンの取り入れ方が知りたい方は、平塚さんに相談してみては?

 

【平塚郁子さん プロフィール】
秋田市出身。短大卒業後に東京都大田区の職員として働きながら、昔から興味のあった建築業界を目指して夜間学校に通い、転職。東京で10年、秋田で10年、エクステリア設計事務所等で働く。2014年にフリーのガーデンデザイナーとして庭沐を設立。エクステリアプランナー、造園施工管理技士、ガーデンコーディネーター、ビオトープ施工管理技士の資格を持つ。

庭沐
秋田県秋田市楢山愛宕下12-5
TEL/018-853-5783
ホームページ
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この記事を書いたライターこの記事を書いたライター

平元 美沙緒

徳島生まれ、秋田市在住。一児の母。まちづくり、子育て、クラフト、農村、伝統建築に興味のアンテナあり。まちづくりに関する話し合いの場の進行・企画を行うまちづくりファシリテーターでもあります。おしごとブログ

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