秋田の女性のWork&Life a.woman

2FEBRUARY
2020

今月のCLOSE UP

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産前産後の不安や悲しみをとりのぞき、健やかな子育てができる秋田を目指して

NPO法人「ここはぐ」代表理事 小田嶋 麻貴子 さん

幼い頃から“お母さんになること”を夢見ていた小田嶋麻貴子さんは、この春から小学6年・4年・1年生になる3人の男の子のお母さん。その小田嶋さんが立ち上げた「ここはぐ」は、産前産後ケアをテーマに幅広い活動を展開し、今ではお母さんだけでなく、病院や助産師さんなど専門分野からの相談や依頼が後を絶ちません。さまざまな活動の幹となる小田嶋さんの想いを伺ってきました。

ある映画の自主上映をきっかけに発足

— 「ここはぐ」を立ち上げたきっかけからお聞かせください。

小田嶋 2011年に「うまれる」というドキュメンタリー映画が公開されたのですが、製作時に胎内記憶のエピソードを募集していたんです。当時2歳だった長男・桜太郎が胎内記憶を話していたので応募したら選ばれて、ほんの少しですが私と桜太郎の二人で出演しました。

でも秋田ではどこも上映しなかったので、自主上映をしようと賛同者を集めたのが始まりですね。秋田魁新報さんにも取り上げていただいて、当日は「100人来たらいいね」と言っていたのが600人越えの大盛況でした。

上映後も「命やお母さんをテーマにした活動をしていきたい」という話になり、会の名前をつけたのが「ここはぐ」です。「ここはぐ」とは、「この秋田で個々をハグしてハグされて育んでいって欲しい」という願いから付けました。

— 「ここはぐ」では主にどういった活動をされていますか?

小田嶋 私自身流産の経験があり、同じ経験をした友人達を見て何かできないかと思い、流産や死産、新生児死を経験されている方々の交流の場として「天使パパ・ママのお話し会〜秋田〜」を定期的に開催しています。

それと今年度は秋田県少子化対策応援ファンド事業として、妊娠前や妊娠中に知っておくと役立つさまざまな情報を提供する「おかあさんのための学び舎」を開催してきました。

この事業は継続の必要性を感じましたので、来年度は児童会館で「産前産後カフェ(仮)」として月に1〜2回開催していく予定です。詳細はFacebookでお知らせしますので、ぜひご覧になってみてください。

何も資格がないからこその強み

— 会員さんは今どれくらいいらっしゃるんですか?

小田嶋 今ここはぐの正会員は20名で、そのうち15名が助産師さんなんです。助産師さんは守秘義務がありますし横のつながりもあまりないため、助産師さんから「勉強会を開いて欲しい!」という要望がとても多いんですね。

現場で赤ちゃんが亡くなるとベテランの助産師さんでもショックを受けますから、新人の方ならなおさらです。現場でしか学べない上に、先輩の対応の仕方を見られる機会もあまりない。「自分は何もしてあげられなかった」と後悔して辞めていく方も少なくありません。ですから“ケアする側のケア”はとても大事なんです。

— そのためのお話し会でもあるんですね。

小田嶋 私の役目は、赤ちゃんとのお別れを経験した方々の声と助産師さんたちをつなげることと、病院側に情報を上げることだと思っていて。ある助産師さんに「私達は肩書きがあって、どうしても上下関係ができてしまうから、あなたがやっている意義は大きい」と言われたこともあります。そういう場作りなら私でもできるかなって。むしろ何も資格がないからこそできることだと思っています。

経験者の声で生まれた赤ちゃん用ひつぎ

— 現在、赤ちゃん用ひつぎの販売に向けた取り組みをされていますが、製作に至るきっかけは?

小田嶋 「天使パパ・ママのお話し会〜秋田〜」の交流の中からその必要性を感じました。流産や死産、新生児死の場合は入院期間が1〜2日だけで、病院側も限られた時間の中で物事を進めるしかなく、お母さんの気持ちにしっかり寄り添いたくてもそれができないのが悩みなんですね。退院後も、傷ついたことを誰にも言えずに胸に抱えているお母さんは多いです。

そこでまず、経験者の声を反映させたリーフレットを作りました。お母さん達は入院時はショック状態で、赤ちゃんに何をやってあげたいのかさえも自分で分からない方がほとんどです。ですので、リーフレットには赤ちゃんとのお別れ前にできることやお別れ後の過ごし方、お父さんやご家族の方へのメッセージも記載しました。


(片手に乗るサイズのリーフレットは、「ご自身のペースで読み進められるように」と、折りを開く毎にメッセージやアドバイスを読めるレイアウトに)

— そこから赤ちゃん用ひつぎの製作が始まったんですね。

小田嶋 赤ちゃん用ひつぎはもともとあることはあったのですが、「簡素な入れ物に入れられた」「お棺に窓がなくて苦しそうだった」「サテンの冷たそうな布団に寝せるのに違和感があった」などの経験談をもとに、想いを込めて見送れるものを作りました。

ひつぎは秋田杉と国産の桐で作っていて、ひつぎを製作していただいている業者さんも、布団の綿を卸していただいている業者さんも、私たちの取り組みに賛同してくださっていてます。販売ルートは今検討中で、病院側と意見交換会をしながら模索しているところです。


(長さ18cmの小と35cmの中サイズはスライド式のふたにして、ふすまのようにゆっくり閉じられるよう設計。角を丸く仕上げるなど優しい手触り)


(長さ55cmの大サイズには観音開きの窓が付いています。枕元にある木のおもちゃは、「普通のおもちゃを一緒に入れるとお骨がきれいに残らない」という体験談から製作。ひつぎに入れず家で大事にとっておくこともできます)

ひと針ひと針想いをのせて…

— このお布団や産着はボランティアの方々が作っているそうですね。

小田嶋 これは毎月最終火曜に開催している「天使ちゃんのちくちくの会」の参加者が、一つひとつ手縫いで作っています。亡くなった赤ちゃんに優しい肌触りの産着を着せてあげたくて、新品か未使用のダブルガーゼや綿100%の布で、可愛らしい柄のものを使っています。


(産着やおくるみについている共布は、おうちの方へ渡されます)

小田嶋 参加は、赤ちゃんを亡くした方でなくても、想いがある方であれば大丈夫。参加費300円か、一度型紙を購入していただくことで何度でも参加していただけます。布地や布代を寄付していただくだけでもありがたいですね。

性別や世代間を超えて多様性を認め合う社会へ

— 小田嶋さんの“子育て観”とは?

小田嶋 これからは家族間でも多様性を認め合って生きていかないといけないと思うんです。親も子どもも個性を持って生まれてきているのに、その人らしさを出せないと苦しくなりますから。


(小田嶋さんの後ろの壁画は〈命〉〈生きる〉〈多様性〉をテーマに友人2名に依頼。木と鳥を別々の人が描いているのだとか)

私は長男を出産する前に流産と母の死を経験しているので、そこから常に死を意識するようになったんですね。ですから、子ども達を出産する時には「生きていてくれればそれでいい」と思えましたし、自分が子どもに何を求めるかが分かってから子育てをスタートできたのはとても大きなことでした。

— 今後の目標を教えてください。

小田嶋 秋田のあたたかさが伝わるような、総合的な産後ケアの確立を目指しています。地方では里帰り出産が多いですが、自宅に戻るとケアが行き届かないので、訪問型を含めたシステムづくりですね。

そのためにも、産後のお母さんと暮らしを支えるスタッフの育成にも力を入れていきたいです。そうして大事に育てられた子どもが将来、「自然豊かで人もあたたかい秋田で子育てしたいな」と思ってくれたら、こんなうれしいことはないですね!

取材中も問い合わせの電話が鳴り、個別のケースに柔軟に対応していた小田嶋さん。「ゆくゆくは認定NPOを目指して、もっと行政や病院施設に受け入れてもらえるようにしていきたい」と熱意を語ってくださいました。秋田で健やかな子育てができる活動の支援の輪が広がることを願うばかりです!

【小田嶋麻貴子さんプロフィール】
秋田市出身。母の死や流産を経験後、3人の男の子のお母さんになる。ドキュメンタリー映画「うまれる」上映実行委員会の発足を機に、産前産後ケアをテーマに活動する「ここはぐ」を設立。

【NPO法人 産前産後ケア ここはぐ】
2011年発足。2018年12月に法人化。文中の活動のほかにも「マドトモの会(帝王切開経験者の会)」「助産師さんのベビーハタ・ヨーガ」「マタニティヨーガ」など、さまざまな催しを企画・運営。
問い合わせ先/070-1148-5589(代表:小田嶋)
メールアドレス/kokohug.akita@gmail.com
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※賛助会員の募集と寄付のお願い

この記事を書いたライターこの記事を書いたライター

熊谷 清香

地元タウン誌や広告代理店勤務を経て、フリーランスで企画・編集・取材・インタビュー・ライティング等をしています。小中学生の母。秋田市出身。

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