秋田の女性のWork&Life a.woman

9SEPTEMBER
2019

今月のCLOSE UP

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町工場に新たな風を!木の持つポテンシャルや価値を高める商品づくりを目指す挑戦者

株式会社 県北パネル 倉持 美帆 さん

能代市二ツ井町の「県北パネル」は、住宅用部材を大手ハウスメーカーに納品する製造販売会社。そこで2015年に木製雑貨ブランド「MOXIA(モクシア)」を立ち上げるなど社内に新しい風を起こしているのが、今回ご紹介する倉持美帆さんです。これまでのキャリアや、社内でのさまざまな取り組みについてお話を伺いました。

東京の第一線での経験を携え帰郷

— 前職はまったく違う業種にお勤めだったと伺いました。

倉持 東京の大学で中高の英語の教員免許と日本語教員の資格を取っていたのですが、「先生として働く前に企業でも働いてみたい。その経験が先生になった時に活かせるのでは」と思ったんですよね。自分が学生の頃も、いろんな経験をしている先生を尊敬できましたし。それで、化粧品がもともと好きだったこともあって、外資系の化粧品会社に就職しました。

そこではマーケティングで3年、営業で6年勤めまして、出版社に自社商品を紹介していただいたり、百貨店のイベントプランニングや運営、航空会社の機内販売やドイツ車とのタイアップなど、さまざまな業務に携わることができました。

— ではどのようなきっかけで地元に戻ることになったのですか?

倉持 いつかは秋田に帰ろうとは思っていたものの、なかなかタイミングがなかったのですが、32歳で出産することになって。私には周りの協力が必要でしたし、家族との時間も大事にしたかったので、やはり子育てするには田舎がいいなと決断しました。東京の暮らしはスピードが速くて一日があっという間なので、「このペースで子育てはできない」と感じていましたから。

それで、大学や前職の経験を活かして、父が営む県北パネルで両親と一緒に働こうと。夫は東京出身で田舎への憧れもあったので賛成してくれました。

— 県北パネルさんの業務内容を教えてください。

倉持 主に階段やカウンターなど、住宅の建材をハウスメーカーに提供しています。切削・プレスから加工、仕上げ、塗装まで一貫して自社で行なっているので、納期が短いことはもちろん複雑な加工もできますし、いろんなことに融通がきくのが強みですね。

ですので、作業がひと段落した時などに「ちょっと新しいのを作ってみようかな」と試作を作れたりするんです。

— 今のお仕事を始められた当初は、どんなことが大変でしたか?

倉持 自分の主な業務は人事や経理などの事務ですが、木の種類を覚えることから始まってすべてが一からの勉強ということですね。化粧品は好きでしたし身近なものでしたから覚えるのも難しくはなかったですが、建材については、家を建てることはあっても一生に一度なので、「この部材はどこに使われるもの?」という(笑)。

分からないことは年下の社員にも聞いて覚えましたね〜。前職ではいかにブランドに守られて、恵まれた環境だったのかも身にしみて分かりました。

— そんな中で心がけていたことはありましたか?

倉持 小さいことでも“素人なりの意見”を臆せず言うことです。例えば現場にニーズを聞きながら、出荷する時の梱包のやり方を見直すなど、事務所が意見を吸い上げるような環境づくりは心がけてきました。

それから会社全体としては、スペシャリストよりゼネラリストを増やしていきたいと考えてきました。私が入社した頃は専門職の方もいましたが、現在は若い社員も増えてきましたので、「あの作業もやってみたい」とか「手が空いたから向こうの作業を手伝おう」などに対応できるよういろんな作業を経験してもらって、個人も会社も仕事の幅を広げていけたらいいなと。

もっと木を暮らしに取り入れてほしいとブランド発足

— 2015年にオリジナルブランド「MOXIA(モクシア)」を立ち上げた経緯は?

倉持 木を使った雑貨で、自分で欲しいと思う物が探しても見つからなかったことが始まりで、「もっと木の価値を伝えていきたい、もっと暮らしに木を取り入れて欲しい」という想いで立ち上げました。

この「木のノート(写真下)」の価格は3,500円ですが、遠方から来たお客様にプレゼントできるクオリティで、なおかつ高級な消耗品がいいんじゃないかと考えて作りました。このブランドはターゲットを広く考えてはいなくて、万人受けしなくても、100人のうち3〜5人にハマればいいと思っています。


(左上からエボニー、メープル、ローズ、左下からウォールナット、杉など世界中から選りすぐった銘木を使用。この写真のメープルは“バーズアイ”と呼ばれる希少価値の高い種類で、ロールスロイスの内装や英国王室の居室に使用されていることでも有名な最高級材)


(杉はその香りも楽しめるよう、あえて塗装は施さない仕上げに。紙はツバメノート株式会社の最高級紙を使用しています。お客様の要望で、ロゴの部分を変更することも可能)

倉持 それともう一つ理由があって、うちの従業員は今までエンドユーザーと触れる機会がなくて、この地域の方々や従業員のご家族も、うちの会社が何を作っているか分からない人って結構いると思うんですよね。なので自分の家族に「うちの会社ではコレを作ってるんだよ」と言える物を作れる場があった方がいいと思ったんです。

秋田市の野外保育園「Akitaコドモの森」さんから依頼を受けて製作したマナープレート(写真下)は、県産の栗の木や山桜の無垢材を使用しています。お茶碗やお椀の置く位置を覚えるために、プレートに器が収まるくぼみをつけたり、プレートを持ちやすいように溝をつけたりとさまざまな工夫をしています。コップ以外の食器は1つの木材から仕上げています。


(「第85回東京インターナショナル・ギフト・ショー 春2018」のキッチン&ダイニンググッズコンテスト準大賞を受賞したマナープレート)


(集成材の端材を利用して製作したキッズプレート。現在はイベントのみの販売で、これから小売展開する予定)


(お客様からのリクエストで製作した、ナラで作った木琴)


(まだ試作段階という箸と箸ケース。繊細な手仕事ぶりが伺えます)

従業員やお客様との間でSNSを有効活用!

— このブランドに対して、従業員の皆さんからはどんな反応がありますか?

倉持 例えば私が企画して製作した物をSNSに載せたりすると、従業員から「自分も◯◯を作りたい」という意見が出てきたりします。今まではそういう欲を出す機会はありませんでしたが、このブランドを通して“アイデア次第でいくらでも作れる”ということを活用してほしいなと思います。

SNSを通して意見を募ったり、私の投稿を見た従業員から工場で話しかけられたりと、SNSはコミュニケーションツールとしても一役買っていますね。

— お客さんともSNSを介することで変化はありましたか?

今までお取引のあった企業の方に、取引外の商品を見てもらえるメリットはあります。SNSを見たお取引先から「こういうのも作れるんですね」とか「どこでも断られたのですが作れますか?」という感じで新たな発注があったりと、ほかの仕事につながることもあるので。そういう形で毎日違う注文が来て、ノウハウが蓄積されている実感はあります。


(従業員の皆さんとフレンドリーに接する倉持さん)


(「この道30年の塗装職人であり、うちの母でもあります」とお母様も登場!)

いつかは自社のオリジナル建材商品を

— 社長であるお父様はどのような存在ですか?

倉持 父からは本当に学ぶことが多くて。例えば1つ大きな注文が入るとアイデアを聞いたりと、従業員の意見を大事にするところなどは見習っていきたいです。今はまだ苦労しなくてもいい立場で、のびのび好きなようにやらせてもらっているのでありがたいですね。

でもいつまでも甘えられないですから、いろんなアイデアを出したりと、社長にできないことを見つけて補えたらと思っています。いろんな意見があった方が会社としては面白いですから。

— ご自身や会社全体としての今後の目標や夢は?

倉持 社名を前面に出して、住宅用部材でオリジナル商品を作って製品化したいですね。従業員一人一人の技術力を高めるとともに、自分の経験値も増やしてアンテナを張って、世の中の動向やニーズを掴んでいきたいです。

新しいものを作り出すにはそれ相応のエネルギーが必要ですが、「形になったら買ってくれる人がいる」と信じないと新商品は作れないと思うんです。でも、もし私がここですでに10年働いていたら、「これは大変だからできないかも…」とアイデアが浮かばないかもしれないんですよね。

そういう意味でも、入社したばかりの従業員の意見も積極的に聞いて、お客様のさまざまなご要望に柔軟に対応しながらどんどん挑戦していきたいです。

5歳のお子さんの子育てについては「周りに感謝することが多い」と、地域で育てることの良さを実感していた倉持さん。お子さんも工場に来て、端切れの木で物を作ることが好きなんだとか。「仕事をしている姿を見せられる」ことにも満足している様子でした。倉持さんがこれから作り出す商品に注目です!

【倉持美帆さんプロフィール】
二ツ井町(現・能代市)出身。37歳。大学で中学・高校の英語教員免許を取得後、エスティ ローダーに就職し、マーケティングや営業部門で9年勤める。2013年、結婚・出産を機にAターンをして、株式会社 県北パネルに就職。“暮らしに木のぬくもりを添える”ことをコンセプトにブランド「MOXIA(モクシア)」を立ち上げ、木の持つ創造性や多様性を広げる製品づくりを目指す。5歳の男の子の母。
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この記事を書いたライターこの記事を書いたライター

熊谷 清香

地元タウン誌や広告代理店勤務を経て、フリーランスで企画・編集・取材・インタビュー・ライティング等をしています。小中学生の母。秋田市出身。

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