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努力は人を裏切らない!を実現してきたサッカー女子国際審判員

努力の天才、サッカー女子国際審判員となった手代木直美さん

国際サッカー連盟(FIFA)が主催するワールドカップの舞台。選手として出場できる人はごくわずかに限られますが、審判員もまた世界の試合で通用するだけの技量を伴った選ばれし人だけが務めます。

北海道出身で現在、ご主人の仕事の都合で秋田市に住んでいる手代木直美(てしろぎなおみ)さんは、日本国内でたった8人という「サッカー女子国際審判員」です。努力の末に勝ち取った国際審判員の道のりを伺いました。

 

-サッカー審判員になろうと思ったきっかけを教えてください

手代木 兄の影響でサッカーを始め、小6から中3まではママさんチームで練習をしていました。
高校は、女子サッカー部がある帯広南商業高校へと入学し、国際審判員だった監督の先生の強い勧めもあり、審判員の試験を受けることになったのが最初のきっかけです。当時は部員の2人以上が審判員の資格を持っていないと大会に出場できないという決まりもあったため、高校生でも受けることができる審判員4級、3級を高校在学中に。卒業後18歳で2級を取得し、挑戦することの楽しさを覚えた気がします。

(2015年 FIFA 女子ワールドカップで副審を務めたメキシコvsフランス戦。主審の山岸佐知子さんは、手代木さんの力を引き上げてくれた恩人 ※写真一番右が手代木さん、右から3番目が山岸さん)

-審判員になるためにはどういう試験があるのでしょう?

手代木 審判員は反則などをチェックしながら、選手がストレスなく試合が円滑に進むようにする役割を担っています。試験では、競技規則テスト、体力テストに加え、判定を正確に見極めるレフリング技術が必要です。国内競技の審判を行うためには、日本サッカー協会(JFA)公認である、審判員4級から始まり、プロリーグを担当できる1級まで、級が上がるごとにその評価基準が厳しくなっていきます。

そして、その1級審判員になった上で推薦をもらい、かつ3年以上トップリーグに携わっていることなど、数々の厳しい評価をクリアすると、国際審判員の試験を受けることができます。
(2016年リオデジャネイロオリンピックで副審を務めたドイツvsジンバブエ戦。日本人女子は一人で参加 ※写真一番右が手代木さん)

仕事と審判員の二足のわらじで駆け抜けた20代

-仕事をしながら国際審判員を目指したそうですが、大変だったのでは?

手代木 サッカー選手としては通用しないというのを高校時代に痛感していたので、高校卒業後は、専門学校を経て理学療法士になり、札幌市の病院の整形外科に就職しました。理学療法士としても仕事の楽しさを感じていましたが、同時にサッカーに携わっていたいという想いもあり、仕事をしながら1級審判員を目指していました。

サッカーの審判員は、プロリーグは別ですが、なでしこリーグも含め一般の試合では審判員だけで生活できるほどの報酬はありません。そのため、他に職業を持ちながらサッカー審判員として活躍されている方がほとんどです。
私も仕事が終わってからの練習に加え、土日は審判員として試合に出場し、そのほかにも審判員の研修会や合宿で有給や給料を使い果たすという日々を送っていました。自分自身もハードでしたが、職場には相当迷惑を掛けたと思います。それでも、どうしても自分の力がどこまで通用するのか試したい気持ちがいっぱいで、上司に掛け合って仕事の調整をしてもらっていました。また、同僚たちからの理解も得るため、積極的に雑務や残業を請け負ったりと必死でしたね。

そのおかげで26歳で1級審判員を取得しました。そして、そこがクリアできると次は国際審判員の資格を取りたいと思うようになり、さらにハードに。大変でしたが、充実していたと思います。


(勤務していた病院の理学療法士スタッフの仲間と ※写真前列左から2番目が手代木さん)

ついに国際審判員になる

-2013年には国際審判員となるわけですね

手代木 2012年に推薦を頂き、2013年にサッカー女子国際審判員の登録が実現しました。その年、中国で開催されたアジアサッカー連盟主催大会、AFC  U16女子選手権、AFC U19女子選手権で副審を務め、そこでの評価が2015年 FIFA 女子ワールドカップ、さらに2016年リオデジャネイロオリンピックと続いていきました。ワールドカップに起用されてからは周りの反応も応援する雰囲気に変わっていきましたし、仕事を辞めずに挑戦できたのは、職場の理解があってこそだととても感謝しています。

結婚後、夫の転勤で北海道を離れると同時に仕事を辞め、今は主婦をしながらトレーニングをし、土日は日本国内や海外での試合を務めています。夫は陸上の選手だったこともあり、「世界大会に行ける人はめったにいない。チャンスを与えられたのなら行ってこい!」と応援してくれています。家を空けることが多いのですが、文句を言われたことは一度もありません。家族の理解があるからこそ今も続けられているのだと思います。


(2019年 FIFA 女子ワールドカップで副審を務めた、カナダvsニュージーランド戦。試合後のロッカールームにて ※写真一番左が手代木さん)

(2019年AFC Cupにて。アジア大陸の男子の試合を世界で初めて女子3人で務めた試合 ※写真左から2番目が手代木さん)

-一番印象に残っている試合、ありますか?

手代木 ワールドカップももちろん感慨深いのですが、北海道での高校総体(女子)決勝戦がいまだに忘れられません。10年以上連続で優勝を独占していた高校が、その年勢いのあった高校に敗れるという歴史的な試合だったんです。勝った高校は初優勝でした。高校生たちの人生がかかった大事な試合に携われたことは大きかったと思います。
負けたチームの選手たちが、「手代木さんに審判をやってもらってよかった。後悔なく終わることができました」と泣きながら挨拶にきてくれたことは、審判冥利につきる出来事でした。自分の判断で試合がスムーズに進んだり、選手に喜ばれることが審判員としてやりがいを感じる時です。いまだにあの試合を越える印象深い試合には出会っていません。


(日課のトレーニング。ブラジル体操などのウォーミングアップに始まり、インターバル、坂道ダッシュ、など念入りにトレーニングをされるそう)

-今後の目標はなんでしょう?

手代木 唯一、後悔しているのが子供を産まなかったこと。自分の挑戦に時間を費やしてその機会を逃してしまったことは、お互いの両親に申し訳ないと思っています。審判員は45歳までと年齢が限られているので、引退したらアスリートママを応援する立場になりたいと思っています。

一方で昨年、男子競技の基準でテストを受ける挑戦をしたのですが、39歳でスプリントの記録がまさかの自己ベスト更新だったんです。信頼できるトレーナーさんとの巡り合いもありましたが、努力しだいでこの歳でもまだまだいけるというのを痛感しました。男子の試合で女性が審判を務める機会を増やしていくことで、新たな道を作るのも自分の使命かなと思っています。

現在、主婦をしながら審判員として活躍している手代木さん。午前中はみっちりとトレーニングをして、今年で40歳ながら体脂肪率はまさかの15%~18%をキープ!!目標に向かって一切妥協しない凄まじいほどの向上心と精神力。それでいて、明るくて気遣いのできる素敵な女性でした。今年は夏まですべての試合が中止となってしまったそうですが、試合再開に備えて日々前向きに励んでいる姿にため息が出るほど。その清々しさ、拝みたくなります。今後の活躍を心から応援しています!

 

【手代木直美さんプロフィール】
北海道出身。2018年より会社員の夫の転勤により秋田市在住
2013年に国際サッカー連盟 (FIFA) の国際審判員に登録

<担当した主な国際試合>
2013年 AFC U16女子選手権
2013年 AFC U19女子選手権
2013年 FPF アルガルヴェ・カップ(ポルトガルサッカー連盟主催大会)
2014年 AFC 女子アジアカップ
2015年 FIFA 女子ワールドカップ
2016年 リオデジャネイロオリンピック
2018年 FIFA U17女子ワールドカップ
2019年 FIFA 女子ワールドカップ
2019年 AFC カップ グループF(女性審判団が男子サッカーのAFC主催大会を担当するのは初めてのこと)

※写真の一部は、手代木さん提供

【番外編】
手代木さんに自宅でできる簡単トレーニングを教えてもらいました!
体幹も鍛えられる、筋力アップのトレーニングです。無理のない範囲でやってみましょう!

1、横向きになり左手のひじを曲げ、おしりと手を上に上げる。その状態で足を上げる。左右各10回

2、うつ伏せで両ひじを曲げ、おなかを引き上げる。足を上に上げ、できる人は前にひきつける。左右交互に10回

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秋田県内エリア

Writer

kamada minako

kamada minako

由利本荘市出身、二児の母。超時短のパート事務員をしながら、ライターをやっています。密かにフードコーディネーターの資格あり。 日々のお料理ブログ。
http://kamadakikaku.php.xdomain.jp

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