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手で生み出す面白さに惹かれて。「練り込み陶芸」を広める女性陶芸家

陶芸工房ももねり。主宰 草彅桃江さん

“陶芸”と聞くと、ろくろを回し、意識を集中しながら形を整えていく光景が思い浮かぶかと思いますが、陶芸の中でも「練り込み陶芸」に挑戦しているのが、秋田市で陶芸教室を開いている、草彅桃江さんです。「”ももえ”さんの”練り込み陶芸”」だから名付けられた陶芸工房「ももねり。」。ここに辿り着くまでのお話を伺いました。


(様々な柄がある、ももねり。のお皿たち 写真提供/陶芸工房ももねり。)

手で”練り込んで”作る面白さ

-練り込み陶芸とはどのようなものなのでしょうか

草彅 粘土に顔料を混ぜて色を付け、自分が考えたデザイン案になるように色の付いた粘土を組み合わせていくところから始まります。金太郎飴のように一つの塊になったものをスライスし、お椀やカップといった型に巻き付けて焼くのが「練り込み陶芸」です。絵付けだと後から描きますが、すべて練り込んでデザインを作るところが特徴です。


(デザインに沿って粘土に色を付けたり、組み合わせたり 写真提供/陶芸工房ももねり。)


(うまく組み合わせてデザインのパーツをたくさん作っていきます。まさに金太郎飴! 写真提供/陶芸工房ももねり。)


(パーツを更に組み合わせて一つの絵柄を作っていきます 写真提供/陶芸工房ももねり。)


(お皿やカップなど好みの型に、スライスした粘土を貼り付けていきます)

-練り込み陶芸のデザイン、色々ありますがどんな時に思いつくのですか?

草彅 お菓子作りの動画を見たりして、このデザインいいかも!と思って参考にしたりしています。チョコのかかり具合とか、クリームの使い方とか。特に淡い色合いのグラデーションが好きなんです。色の具合を出すのが難しかったり、水分の調整がうまくいかないとつなぎ目が割れてしまうこともあるのですが、自分の思った通りに仕上がるとやっぱり楽しいです。


(左:波のような模様は粘土を組み合わせてから波打つように曲げるのだとか。 右:淡いグラデーションは草彅さんの得意分野)

「練り込み陶芸」に打ち込んだ10代20代

-練り込み陶芸との出会いは?

草彅 高校の時に美術が好きで、大学は美術を学ぶために山形の東北芸術工科大学へと進学しました。工芸コースというところで、陶芸、金属、テキスタイルなどを学んだのですが、私に一番合っていたのは陶芸でした。その中でも、ろくろを回して作る陶芸よりも、この「練り込み」の技法が合っていました。すべて手を使って完成させるということが何より面白かったんです。その頃から、「練り込み陶芸」に興味が沸き、学び始めました。


(大学時代の草彅さん。練り込み陶芸に出会い、没頭した大学時代 写真提供/陶芸工房ももねり。)

-大学卒業後、陶芸家の室伏英治氏に弟子入りしたそうですね

草彅 先生の本を読んだのがきっかけで、ホームページを見たところ、たまたま工房でアシスタントを募集していたので、すかさず応募しました。室伏先生は、昨年亡くなってしまったのですが、本を出版していたり、テレビ番組にも出演したりしていた「練り込み陶芸」の世界では有名な方でした。工房は静岡県にありますが、こんな機会は滅多にない!と思い、思い切って大学卒業後に静岡に行き、弟子入りさせて頂きました。

(静岡での修行の様子。ついて行くのがやっとだった怒涛の毎日 写真提供/陶芸工房ももねり。)

-静岡での生活はどうでしたか?

草彅 住み込みの募集ではなかったのですが、6畳にも満たない物置を貸して頂き、そこで生活していました。ベッド、本棚、衣装ケースとテーブルを置くと、いっぱいで…。エアコンは付けてもらいましたが、快適な環境とは言い難いものでしたね。私の他にも4~5人くらい通われているお弟子さんがいて、一緒に学んだり昼ごはんを一緒に食べたりと思い出がたくさんあります。自分1人でものづくりをしていては出会えないような人たちと出会わせてもらったことが一番貴重な経験です。師匠の制作ペースが早いのと、様々な種類の作品作りをしていたので覚えることや身につけなければならないことが多くて必死でしたが、行ってよかったとつくづく思います

(静岡での修行時代に教室を開催した時の様子 写真提供/陶芸工房ももねり。)

秋田で「練り込み陶芸」を広める活動を

-秋田に戻ってからはどのような活動をしているのですか?

草彅 大仙市の実家に戻り、そこで自分の作品作りをしながら公民館やカフェの一角を借りて陶芸教室も開いていました。2017年からは作品作りも続けつつ、秋田市の新屋地区で一軒家を借りて教室を開きました。今年の夏からは現在のシェア工房へ移転し、教室はここで開催しています。同居人は、ガラス作家さんなのですが、違うジャンルの作家さんだとまた違った刺激をもらえ楽しいです。


(体験教室で作ってもらう見本。自分で作れるようになると楽しそう!)

-教室にはどんな方が学びに来るのでしょうか?

草彅 30代から60代と幅広い年代の女性の方が多いです。最初は小鉢などの小物から始めてもらうのですが、回数を重ねるごとに大きいものに挑戦される方もいます。小鉢だと1回の教室で作品を作れるようになるので、みなさん楽しいと言ってくださるのがとても嬉しいです。


(大仙市で開催された時の教室の様子。完成すると草彅さんも嬉しさでいっぱいに! 写真提供/陶芸工房ももねり。)

-今後の目標はありますか?

草彅 なるべく長くこの仕事を続けたい、と思っています。そのためにも陶芸を含めた工芸品などの最新情報の収集や技術の向上など自分でやるべきこともたくさんあります。そして、いずれ大仙市でも工房兼教室を持ちたいなと思っています。


(秋田市新屋のシェア工房前で)

お酒が好きで、漬物を肴に日本酒を飲むのが至福の時という草彅さん。自分で作ったぐい呑みだけでなく他の作家さんが作ったぐい呑みを集めるのも趣味だとか。日々の暮らしを楽しみながらも、やりたいことにも挑戦していく、大らかさとエネルギッシュな一面とを持ち合わせているところにも魅力を感じました。かわいらしい”ももねり。”の作品たちに会いにぜひ体験に訪れてみてください。

DATA

【草彅 桃江】
1987年生まれ。東北芸術工科大学工芸コース陶芸専攻卒業。卒業後、陶芸家・室伏英治氏に師事、練り込み陶芸を学ぶ。2012年地元秋田の活動を開始し、展示会、イベントへの出店の他、FIORI115のNerikomi Art Instructorとして練り込み陶芸体験教室を開催している。2020年秋田市新屋のシェアアトリエ新屋7棟房内に「陶芸工房ももねり。」を移転。

入選・賞歴
2012年 秋田県美術展覧会 奨励賞
2016年 河北工芸展 宮城県文化振興財団賞
テーブルウェア・フェスティバル 入選

陶芸工房ももねり。
住所/秋田県秋田市新屋表町10-8 シェアアトリエ新屋7棟房内 陶芸工房ももねり。
※体験教室はホームページの予約からお申込ください
ホームページ

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秋田県内エリア

Writer

kamada minako

kamada minako

由利本荘市出身。二児の母。パート勤務をしながら時々ライターやフードコーディネーターなどの個人活動をしています。 日々のお料理ブログ。
http://kamadakikaku.php.xdomain.jp

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