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もっと身近な助産師に!フリーランスで関わる妊娠・出産・子育てサポートのプロ

フリー助産師 松橋 衣里 さん

母子を支える助産師というお仕事。出産に立ち会い赤ちゃんを取り上げる以外にも、幅広い知識を持つプロフェッショナルです。3児の母でもあるフリー助産師の松橋衣里(まつはしえり)さんが、助産師になるまでのストーリーとその奥深さについて教えてくれました。

(もうすぐ小学生になる娘さんと)

「心のケア」に興味を持った子ども時代

-松橋さんが助産師を目指したきっかけを教えてください。

松橋 今思えば、小さい頃の傷ついた経験を癒したかったんだと思います。私は昔から両親の喧嘩に敏感に反応したり、母に自分のことを認めてもらえず辛いと感じたりしていて、親子の関係って何だろう?母性愛って何だろう?人の心のケアってどうやっていけばいいんだろう?、と考えて過ごしていました。

最初は、父が安定した仕事ではなかったこともあり、女性一人でも生きていける仕事として看護師を目指しました。でも看護学校で学ぶ中で、妊娠でホルモンが変わっていく神秘や、助産師は女性にしかなれないことを知って、ピンときたんです。「助産師も心のケアができるし、これが私のやりたい仕事かも!」と。そこで、助産科のある学校に進んで「母子の愛着形成」について研究。卒業後は総合病院で14年間助産師として勤めました。

(取材中、度々子どもたちが登場。お母さんが大好きな様子が伝わってきました♡)

病院を退職し、フリーになると決意するまで

ー病院に長年勤めていた松橋さんが、フリーへ転身するきっかけは?

松橋 もともとは助産院の開院を目指していました。病院勤務だと、出産入院や検診などポイントでしか関われないので、もっと地域に根ざした、お母さんたちの駆け込み寺みたいな場所をつくりたくて。

まずは、独立までの行動力を上げてくれるコーチングを受けて、私ってどういう人?これからどうしていきたい?と、自分に問いかけることから始めました。最初は完璧な母性をイメージした「お母さんみたいな助産師」になりたいと思っていたんですが、コーチに「お母さんって未熟ですよね」と言葉をかけられたことがあって。「そうか、完璧なお母さんなんていない。どんなお母さんでもいいんだ」と、だんだん腑に落ちてきて、自分だけの価値観を言葉に表せるようになりました。

松橋 その後、2019年に東京で行われた「じょさんし大学」に7ヶ月間参加したことが転機になりました。全国で活躍する助産師さんが講師として登壇する、助産師のためのスキルアッププログラムで、病院勤務、助産院開院、フリー助産師など、いろんな働き方を知ることができたんです。それまでは開院しかないと思っていましたが、場所を持たなくても、私がお母さんたちの元へ行けばいいんだ!と考え方が変わりました。それに、講座以外の時間に愛とは何か語り合う場面もあって…。

ー愛について語る!それはなかなかない経験ですね。

松橋 私の中では衝撃的でした。自分の中の愛があふれて、初めて誰かに注がれる。だからどんな自分も認めて、受け入れることが大事だと気づかせてもらいました。そうやって自分に向き合うことで、子どもの頃にそのままの自分を認めて欲しかったことにも気づき、お母さんたちや子どもと関わる時に、肯定的に受け止めることを大切にするようにもなりました。

他にも、運営の方が「今日は衣里の話をしようよ」と、ずっと話を聞いてくれたことがありました。助産師の仕事は人の話を聞くことが多くて、自分自身の話をすることが本当にないんですね。だから「私、人に話を聞いて欲しかったんだ」と気づいて、涙が出てきたんです。その経験は、助産師の活動にも活きています。知識があるとアドバイスしがちなんですけど、そのお母さんが本当はどうしたいのかを聞くことのほうが絶対的に大事なんですよね。根っこにどんな悩みがあるのかに意識を向けるようになりました。

(行動したことで出会いが生まれ、道が開かれた「じょさんし大学」での様子。右が松橋さん)

「身近な助産師」ができること

ー現在フリー助産師としてどんな活動をしているか、教えてください。

松橋 2021年にオープンしたいのちの学び舎 産前・産後ケアハウスここはぐで管理者を務めています。出産を扱わない助産院として、休息したいお母さん向けの企画を中心に、個別の健康・育児相談や乳房・骨盤ケアや心のケア、マタニティクラスやにんしんSOS相談も実施しています。今後は、訪問ケアも計画中です。

※いのちの学び舎 産前・産後ケアハウスここはぐのa.woman記事はこちら

ーフリーになったことで、何か変わりましたか?

松橋 母子との距離が近づいたと感じています。同じ人にずっと関われますから、身近な助産師として話をしてもらえています。今はコロナもあって、活動をなかなか知ってもらえていないので、もっと気軽に来てもらえるにはどうしたらいいか、常に試行錯誤中です。

ー松橋さんは、「助産師×コーチ」の活動もされているんですよね。

松橋 自分がコーチングを受けたのをきっかけに、精神分析などが盛り込まれたSSC式コーチングの資格を取得し、2020年から女性向けコーチをしています。心の深いところに入り、自分の人生の目的や、本当は何をしたいのかを言語化するお手伝いをします。「その人の中に答えがある」をベースに、蓋をしてきた感情を解放して癒すセッションを行なっています。

(コーチングにも通じる言葉の数々を、インスタグラムで発信中)

ー実際にフリーランスとしての働き方を経験してみて、いかがですか?

松橋 オン・オフの切り替えが難しくて、時間の使い方をつかむまでは大変でした。でも、家で仕事と子育てどちらもできるのはいいですね。とは言え家を空けることも多いので、私の代わりにモモンガを飼って、家族に癒やしを与えてもらっています(笑)。

(お母さんがいない時の癒しが欲しい!と子どもたちに言われて飼うことになったモモンガ♡)

地域で子育てする世界を目指して

ー最後に、これからやっていきたいことを教えてください!

松橋 「子育てシェアリング」できる地域をつくりたいと思っています。周りに迷惑をかけちゃいけないっていう意識がみんなあると思うんですけど、頼ったり、頼られたり、昔から日本にあった当たり前のお互いさま精神で、地域のみんなで助け合い、支え合う環境をどんどん広げていきたいです。例えば、フラットに交流できるマルシェイベントをやったり、妊娠・出産・子育てに積極的に挑めるように、みんなで一緒に散歩や食事をしながら心と身体を理解していくクラスを作ったり。

お母さんたちは、甘えられず・頼れずに一人でなんでもやってしまいがちです。イライラした時に自分を責める人もいる。そういう人こそ周りのために頑張っている人だったりするので、たまには思いっきり話を聞かせてほしいです。私自身も、子育てに知識を当てはめ、「こうすべき」に囚われて一人で苦しくなることがありました。同じような状況にいるお母さんたちには自分を大事にしてほしいと強く願っています。

助産師さんは、妊娠・出産・子育てにまつわるあらゆるサポートをしてくれることが分かりました。松橋さんのように、本当の声を聞いてくれる存在が、お母さんたちには必要です。一人で抱え込まない、地域での子育てシェアリングに、今後大注目ですね!

DATA

【フリー助産師 松橋 衣里 さん】
秋田市出身・在住。3児の母。NPO法人ここはぐ理事。
中通高等看護学院を卒業後、秋田県立衛生看護学院助産科へ進学。助産師として秋田市の中通総合病院で14年間従事する。2020年、より地域に根ざした居場所を提供しようと、フリーランスの助産師に転身。NPO法人ここはぐが2021年にオープンした「いのちの学び舎産前・産後ケアハウスここはぐ」の管理者を担う。SSC認定ライフメンタルコーチとして、女性向けコーチングセッションも提供している。
インスタグラム

 

キーワード

秋田県内エリア

Writer

平元 美沙緒

平元 美沙緒

徳島生まれ、秋田市在住。一児の母。まちづくり、子育て、クラフト、農村、伝統建築に興味のアンテナあり。まちづくりに関する話し合いの場の進行・企画を行うまちづくりファシリテーターでもあります。おしごとブログ
http://section-a.jugem.jp/

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