3年ぶりに開催が決定した「大曲の花火」。大仙市内の花火会社でもシーズンに向け、これから急ピッチで製造が進められます。全国の花火競技大会でも数多くの受賞歴を誇る「響屋大曲煙火株式会社」で働く、若き花火師の後藤美晴(みはる)さんを紹介します。男性職人の中で奮闘する後藤さんに花火師のお仕事について伺いました。
ー花火師になったきっかけはなんですか?
後藤 花火があがる大仙市が大好きなんです。私が生まれ育った大曲仙北地域は、毎月どこかで花火が上がります。小さい頃から、音がすると外に飛び出て花火を見ていました。だから、花火は私にとってすごく身近なものだったんです。高校卒業後は、地元企業に就職して働いていたんですが、もっと地元に貢献できる仕事に携わりたいと思うようになりました。そんな時に花火師の求人を見つけて応募したのがきっかけです。23歳の時に就職して、今年で入社3年目になります。
一人前の花火師を目指して
ー今はどんな仕事を担当していますか?
後藤 花火製造では仕上げの「玉貼り」という工程を担当しています。「玉貼り」は、火薬を詰めた玉に何重ものクラフト紙を貼り付けていく作業です。この作業を行うことで、玉が強くなり、上空で爆発した時に圧力がかかって花火が丸く出ます。玉貼りが上手にできないと、丸く出ないこともあるので大事な工程です。貼り付け→乾燥の作業は1週間以上繰り返し、やっと完成。花火作りは、同時進行で各工程をそれぞれの職人が進めていて、打ち上げられるまでに、何人もの人が携わってやっと完成するんです。私は、まだまだ作業に時間にかかってしまうので、正確にスピーディーにできるように修行中です。
ー花火の魅力はどんなところですか?
後藤 花火の写真や映像は記録として残りますが、打ち上がって花火が開いた瞬間の感動は現地でしか味わえないんですよね。何千人もの観客と一緒に感動や興奮を味わえる花火は、やっぱり素晴らしい伝統の技だと思います。花火は1人では完成させることはできなくて、何人もの職人が関わって打ち上げの日を迎えます。コミュニケーションをとりながら、仲間と一緒に作り上げるのも花火師の魅力です。助けてもらったり、褒めてもらったり、いい仲間がいて幸せです。
ー響屋大曲煙火はどんな会社ですか?
後藤 他の花火会社に比べて若い花火師が多いと思います。伝統を守りながらも、自分次第で成長できる会社です。同僚や先輩方はよく私のことを気遣って、温かく見守ってくれています。昨年から女性花火師の後輩もできました。トップレベルの花火職人が身近にいるのはすごく恵まれていると思うし、私も早く一人前になって会社に貢献したいです。
ー後藤さんが手がけた花火のデビューはいつですか?
後藤 私が初めていちから玉貼りを一任され貼り上げた花火は、今年2月の茨城県土浦の花火大会で打ち上げられました。現地には行けなかったので、実際には見られませんでした。2度目は、今年4月末に行われた「大曲の花火〜スプリングフェスタ〜」で、私も現地にいたので見ることができました。打ち上げまでは「上手に開くといいなぁ」と思ってドキドキしていましたが、綺麗に上がったと思います。ホッとしましたが、次はもっと頑張ろうという気持ちになりました。
ー花火師になってご両親の反応は?
後藤 両親はいつも私を応援してくれています。4月の花火大会は、ちゃんと自宅から見てくれていたみたいです。「綺麗に上がってたよ」と喜んでくれたので嬉しかったです。小さい頃から花火は家族と見ていました。両親が喜ぶ花火をこれから作っていきたいと思います。
花火の力でたくさんの人を元気にしたい
ー3年ぶりに大曲花火の開催が決まりました。どんな気持ちですか?
後藤 全国の方に見てもらいたいです。花火の音と光って、明るい気持ちになるしすごいパワーがあるんです。3年ぶりの開催に、どの花火会社さんも気合を入れて準備してると思うので、ぜひ現地で感じてもらいたいですね。大曲の花火をきっかけに、大仙市に遊びくる人が増えたら嬉しいですね。
ー花火師は大変な仕事だと思いますが、リフレッシュ方法は?
後藤 ドライブですね。この間の連休は山形まで行って、カフェや水族館を満喫してきました。花火会社はこれからが繁忙期なんです。しっかり休んで、感性を磨いたのでバリバリ仕事をしたいと思います!
ー今後の目標を教えてください。
後藤 今年で3年目を迎えましたが、花火は本当に奥が深いと感じることが多いです。花火製造においては、この工程は誰にも負けないという自分の強みを見つけたいと思います。「ここの工程は美晴に任せたい」と、周りの人に思ってもらえるように日々精進していきたいです。
花火のまちで、花火を追いかけて育った後藤さん。「将来は花火会社に入れたらいいなぁ」という小さい頃に描いた夢を叶えることができました。この2年間、花火大会は中止・延期となり、後藤さんにとっても、花火会社にとっても試練の日々が続きました。2年の時を経て、待ちに待った花火のシーズン到来です。花火のまちを代表する女性花火師として、今後の後藤さんの活躍を期待しています。