30代以上の女性の20〜30%にあると言われる子宮筋腫。a.womanライターMakiko(47)も20代の頃に子宮筋腫と診断され、今年、子宮全摘手術を受けました。自身の体験をもとに、子宮筋腫の症状や治療について、産婦人科医・竹ノ子健一先生(大館市立総合病院)にお話をうかがいました。
子宮筋腫があると、どんな症状が出てくるの?
私の筋腫が見つかったのは、26歳の時。当時、秋田市の出版社に勤めつつ社会人スポーツをしていましたが、ハードな練習と生理が重なると生理痛がひどくなりました。ある日、生理痛で動けなくなって産婦人科を受診すると、超音波検査で5センチの筋腫を発見。痛み止めの薬を処方され、半年ごとに検査して経過観察することになりました。
ー子宮筋腫のよくある症状を教えてください。
主な症状は、生理痛が強い、生理の出血量が多い、筋腫の位置が前の方にあれば膀胱が圧迫されて頻尿、後ろの方にあれば腸が圧迫されて便秘になることもあります。
一方で無症状のことも多く、健診で初めて見つかるケースもあります。
ーどんな治療法がありますか?
筋腫の大きさや状態、患者さんのライフステージ(妊娠を考えているか、産む予定がないか、更年期が近いかなど)や希望によって、対症療法か、筋腫そのものを治療するか決めます。
<対症療法>
①止血剤や鉄剤を処方して、貧血を解消する
②低用量ピルを飲んで生理周期を整え、出血量を減らす
③ホルモンを出す器具を子宮内に入れて、生理の出血量を減らす
④マイクロ波を使った子宮内膜焼灼術で、子宮内膜を焼いて生理の出血量を減らす
<筋腫の治療>
①筋腫ごと子宮を全部取る手術(開腹手術・腹腔鏡手術・腟式手術)
②子宮を残し、筋腫だけ取る手術(開腹手術・腹腔鏡手術・子宮鏡手術)
③女性ホルモンを減らす薬で生理を止め、筋腫を小さくする(手術前や、閉経までの短期間に行う一時的な治療)
④子宮動脈塞栓術で子宮に流れる血液を減らし、筋腫を小さくする
⑤集束超音波治療法で筋腫に超音波を当て、筋腫を小さくする
子宮筋腫があると、妊娠しづらい?
結婚後、主治医に「筋腫のせいで少し妊娠しづらいかもしれません」と言われましたが、筋腫はおとなしくしてくれて子どもを3人出産しました。
ー筋腫があると、妊娠しづらくなるのでしょうか?
妊娠への影響は、筋腫の位置によって変わります。漿膜下(しょうまくか)筋腫は、妊娠に影響を与えないことが多いです。粘膜下筋腫と筋層内筋腫の場合は、子宮の内側にどのくらい影響があるかで違ってきます。受精卵がうまく着床できないような場所に筋腫があると、妊娠しづらくなります。
ー妊娠するために、どんな治療が必要になりますか?
妊娠を希望している場合、上記の治療法のうち筋腫だけ取る手術をすることが多いですが、術後半年〜1年間は妊娠しないで子宮の筋肉を休ませる必要があります。妊娠しづらい原因が100%筋腫のせいとは限らないので、本人の希望と医学的リスクを考えて治療法を選んでいくことになります。
筋腫が大きくなってきたら
夫の転勤で大館に引っ越し、7年ほど通院をサボっている間に、生理中立ちくらみやめまいを感じることが増えました。お腹に手を当てると、ポコっとした塊が。個人病院を受診したところ、筋腫は10センチほどに成長し、「薬で生理を止めて閉経を待ちましょう」ということに。2年間通院する間にも筋腫はじわじわ大きくなり、頻尿と足のむくみに悩まされるようになりました。閉経まで我慢できず、ついに手術を決意!
ー手術をする基準はあるのでしょうか? 手術の方法は筋腫の大きさで決まりますか?
出血量が多いなど症状が強い時は筋腫が小さくても手術したほうが良いこともあります。症状がなければ、筋腫が大きくても手術をせず様子を見る場合もあります。
筋腫の大きさだけでなく、MRI検査をして血管や周りの臓器との関係を見て手術の方法を決めます。
手術のメリット&デメリット
私は卵巣だけ残し、子宮と卵管を摘出することになりました。主治医として執刀してくださったのが竹ノ子先生です。術後、目覚めて真っ先に「お腹が軽い!」と感動しました。頻尿や足のむくみが解消し、お腹がへこんで着られる服も増えて、生活が一気に快適に♪
ー手術のメリットについて教えてください。
生理痛や過多月経、お腹がポコっと膨らんでいるといった筋腫が原因の症状は、手術をすることで良くなります。
一方、頻尿や便秘は、筋腫のせいだけでなく泌尿器科、消化管的な病気が原因の場合もあるので、手術をしたから必ず症状がなくなるとは言いきれません。
女性ホルモンは主に卵巣から出ているため、卵巣を残せば子宮を取っても更年期が早まることはありません。
ー手術のデメリットはあるのでしょうか?
デメリットは、手術のリスクがある(命の危険がゼロではない)こと、1カ月ほどはお腹の傷が痛むこと、そして入院期間・療養期間が必要になることです。入院期間は、腹腔鏡手術の場合5日、開腹手術の場合1週間〜10日ほど、療養期間は術後1カ月ほどです。
気になるお金のこと
入院・手術をすると医療費が高額になるため、事前に市役所で「限度額適用認定証」をもらい、入院時に提示すると支払いが限度額までになります。私の場合、限度額57,600円+食事療養負担額6,440円、保険外負担金(医療材料費125円、個室を希望したため室料差額30,000円、病衣350円)を合計して、支払いは97,562円でした(限度額は収入によって変わります)。加入している生命保険会社への連絡もお忘れなく!
竹ノ子先生からa.woman読者へのメッセージ
女性特有の病気は周りから理解されにくく、不調を感じても「病院に行っていいの?」と迷う方もいるかもしれません。性交渉や妊娠出産の経験がない方は、婦人科の診察台が怖いという気持ちもあると思います。その場合は相談していただければ、触診やお腹の超音波で診察することもできます。経腟超音波のほうが早期に正確な診断ができますが、怖くて足が遠のいてしまうなら、安心できる方法で検査をしましょう。
生理が重い、出血が多くて調子が悪い、健診のたびに貧血で引っかかるなどの不調を我慢していませんか?(婦人科の病気だったら)私たちが生活を良くするお手伝いをするので、婦人科受診を選択肢のひとつにしてみてくださいね!
【竹ノ子健一先生プロフィール】
2018年 弘前大学医学部医学科卒業。卒業後大館市立総合病院にて初期研修を行い、その後産婦人科医として、弘前大学医学部附属病院、青森県立中央病院を経て、2022年から大館市立総合病院に勤務。
【監修】大館市立総合病院 産婦人科部長 佐藤麻希子先生
私は最初に診断された時からずっと「怖いから手術だけは絶対にしたくない!」と思い、体調が悪くなっても我慢していました。手術をして2カ月経った今、とても体調が良く、仕事も頑張れるし家族にもいつも笑顔でいられます。
これまでを振り返って思うのは、「怖い」という気持ちで目をそらすのではなく、元気に毎日を過ごせるように、もっと早くに病院で相談していたら良かったな、ということです。もし今、不調を抱えている方がいたら、病院を受診して、怖いとか不安という気持ちも全部伝えて治療法を相談してみてくださいね!