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「いいな」と思うものはみんなで共有したい。人が集まるお菓子屋さんは、人を輝かせる天才

i.cocochi chiffon (いここちシフォン)田代真弓さん

しずくが垂れるようなデコレーションが可愛い「たらりんケーキ」が看板商品のicocohi chiffon(いここちシフォン)店内に並ぶシフォンケーキはしっとりふわふわ、豊富なフレーバーが揃っています。その美味しさに心奪われるファンが続出する一方、オーナーの田代真弓さんはお店を営む上で、ある想いを持っていました。「女性が輝ける場所を作りたい」と語る田代さんに、お話を聞かせていただきました。

(たらりんケーキ)

キャラ弁・料理講師からパン・お菓子講師へ

ー今はパンやお菓子のイメージが強い田代さんですが、調理師の資格もお持ちで、以前はキャラ弁や料理講師としてご活躍されていたんですね。

田代 ブログがきっかけで、2012年頃からテレビ等のメディアでのお仕事の他、講師として様々なご依頼をいただきました。当時は夫の転勤で岩手に住んでいたのですが、岩手では他にも人生のキーポイントがあったんです。それは、今も秋田から通い続けているパン教室との出会いでした。
その教室では、皆、妻でも母でもなく一人の女性としてひたむきに技術を磨いています。私のように、学んだことを活かして仕事にしている方もたくさんいらっしゃいます。秋田でも、皆で高め合える場を作りたいと思ったのは、ここでの経験からです。教室では、パンだけでなくお菓子も教えていて、シフォンケーキ作りに夢中になったのもこの頃です。

ーなぜシフォンケーキだったんでしょう?

田代 実際に作ってみると、シフォンケーキって奥深いんです!シンプルだからこそ、材料の質や気温など細かな条件に影響されるし、一つ一つの工程を丁寧に行わなければいけません。シフォンの作り方に慣れると、他のお菓子作りが簡単に感じるくらいです。でも難しいからこそ、試行錯誤を繰り返す過程でスキルが磨かれていくのが実感できました。また、シフォンケーキはアレンジの幅が広いのも魅力です。

(上質な素材を使い、丁寧に作るicocochiのシフォン)

(柔らかく高さのあるシフォンケーキに、重みのあるチョコを乗せるのは難しい作業)

(ショーケースいっぱいに並ぶシフォンケーキ。開店と同時にどんどん売れていきました)

「女性が輝く場所」としてのお店を作る

ー秋田に戻って来てから、パン・お菓子教室を始められたんですよね。

田代 2015年に秋田に戻り、子どもが手を離れたら教室を始めるつもりで、自宅を建てる際に工房を併設しました。でも、教室に本腰を入れようというタイミングでコロナが流行してしまったんです。その期間は、自宅でパンを予約販売したり、イベント出店したりしていました。状況が落ち着くにつれ、徐々に教室も本格稼働できるようになりました。

(清潔感のある工房にて)

ー子育て世代を中心に、口コミでどんどん人気が広がっていきましたよね。固定ファンができたことが、店舗を持つ後押しになったんでしょうか?

田代 もちろんお客様に喜んでもらいたい気持ちは大前提としてありますが、同じくらい「女性が輝ける場所を作る」ということが頭にありました。私のシフォンケーキ教室は、基礎コースとマスターコースに分かれているのですが、約1年かけてマスターコースを卒業する頃には、皆さん自信がついて表情が全く変わっています。
はじめは「家族に喜んでもらえればそれでいい」と話していた方も、「外で自分のスキルを活かしたい」という気持ちが芽生えているんです。だったら、私が生徒さんの輝ける場所を作ればいい!と思いました。お店は、教室を卒業した後に仕事として学んだことを活かせる場でもあるんです。パンではなくお菓子のお店にしたのも、女性が働きやすいようにしたかったからです。パンは、発酵の時間があるので早朝からの作業が必要ですが、お菓子なら負担が少ないと考えました。

(お得な日替わり商品はInstagramからチェックできます)

(シフォンケーキ以外のスイーツも美味しい!)

(スコーンやサブレなどの焼き菓子も人気です)

ーオープンは2022年12月。1年以上経ちますが、先ほども開店と同時にお客様が次から次へといらしてましたね!

田代 おかげ様でリピーターさんも多くて、ありがたいです。でも、オープンして半年間は本当に大変でした。スタッフのみんなが輝ける場所にしたかったのに、いざスタートしてみたら忙しすぎて、作っても作っても間に合わなくて…。お客様を喜ばせたくて、無理をして頑張りすぎてしまうスタッフは、輝くどころか疲弊してしまって。私自身も「全然人を大切にできていない」という自己嫌悪でいっぱいでした。
今はやっと落ち着いて、ペースがつかめて来ました。スタッフに対しても、「あなたにはこういう長所があるから、この仕事をお願いしたい」と、一人一人が活躍しながら力を伸ばせるように声をかけています。「妻として」「母として」毎日を送るうちに、「素の自分」の魅力を見失っていたスタッフの目が、どんどん輝いてくるのが嬉しいです。

(スタッフに声をかける田代さん)

(スタッフさんたち)

子育てと仕事のバランス

ーお店を始める時、ご家族はどんな反応でしたか?

田代 家族からは「自ら人生の荒波に飛び込む上に、溺れかけてるよね」と言われます(笑)。でも、夫も息子も応援してくれています。私がやると決めたら絶対にやり通すということを、夫はよく分かっているので、「お店をやっても大丈夫だろう」と思ってくれたみたいです。私のスイッチが入る言葉も知っていて、どんな時もスキルを磨き続けるモチベーションを作ってくれました。
ずっと子育てしながら仕事をして来ましたが、子どもの成長に合わせ、子ども中心の生活から自分中心の生活に変えていくように、段階を踏んで来ました。今は息子が高校生になり、自立に向けての最終段階です。一人暮らしをした時に「親のありがたみがわかる子」ではなく、「親がいなくても何でもできる子」になってほしいんです。何かあったら手助けできる距離にいる今だからこそ、子どもが自分で解決する方法を身につけられるように、子離れを意識しています。

自分がどう思われるかより、周りにいる人の幸せを考える「利他の心」

ー田代さんにとっての「ゴール」とは何でしょうか?

田代 スタッフ一人一人が、周りから憧れられる人になることが、私のゴールなんです。私がいなくても、スタッフやお菓子を目当てにお客様が来てくれるようになったら、きっと「成功した」って思えます。
私は「利他の心」を大切に持っていたいんです。昔から、自分が「いいな」と思っていることは共有したいという感覚があって、料理もその延長でした。「自分だけ良ければいい」じゃなくて、周り全部が幸せであってほしいんです。

そこにいるだけでパッと周囲が明るくなる、まさに「女性が憧れる女性」といった雰囲気の田代さん。印象的だったのは、職人、講師、経営者、母、妻、どんなシーンでも「利他の心」を軸に、考え方が一貫していることです。常に「人を幸せにする」ことを考えている田代さんのお菓子、ファンが増えるのも納得です。田代さんのこれからに、ますます注目したいです!

DATA

【田代真弓 さん】
秋田出身、1児の母。
義実家が仕出し屋を経営していたため、結婚後調理師の資格を取得。子どもが3歳の頃、キャラ弁作りに目覚め、ブログで紹介するように。夫の転勤で移住した岩手県盛岡市で、キャラ弁・料理講師としてテレビ出演など多方面で活躍。2015年に秋田に戻り、自宅兼工房にてパン・お菓子教室と予約制でパン販売を始める。2022年、シフォンケーキと焼き菓子のお店i.cocochi chiffonを開店。
Instagram

【i.cocochi chiffon いここちシフォン】
住所/秋田県秋田市泉北4-7-13
TEL/018-827-7938
営業時間/11:00〜18:00(土曜日は17:00閉店)
定休日/日曜・月曜・火曜
駐車場/有(敷地内に3台、徒歩1分圏内に4台)
お支払い/現金・クレジット・電子マネー
Instagram

 

キーワード

秋田県内エリア

Writer

畠山彩

畠山彩

整理収納アドバイザーとして講座、講演、お片づけサポート等で活動中。 汚部屋暮らしから片付けのプロになった「めんどくさい」が口癖の2児の母。 時短、楽ちんな暮らしで、年間100冊本を読むおうち時間を実践。チャイルドコーチングの資格も保有。
https://mottoakita.com

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