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地域の魅力も一緒に伝えたい!ここにいる、私だからできること

いぶりがっこう 校長 西宮三春

仙北市でいぶりがっこの作り方を学ぶ「いぶりがっこう」の運営・企画している西宮三春さん。秋田県南地域の伝統的な冬の漬物いぶり大根漬け(いぶりがっこ)の作り方を、1年を通して体験して学ぶプログラムを提供しています。
3人のお子さんがいる三春さんは「いたって普通の主婦です!」と公言していますが、平成21年からは仙北市の消防団として地域の防災活動を行い、令和5年からは仙北市議として精力的に活動しています。そんな三春さんに今年で12年目を迎える「いぶりがっこう」についてお話を伺いました。

いぶりがっこ作りの始まりは何気ない一言から

ーいぶりっがっこうはどのように運営していますか。

三春 いぶりがっこうは私が校長として、パートナーの村岡歩さんが教頭として2人で運営しています。歩さんは埼玉県の出身ですが、結婚してから旦那さんの地元・仙北市に移住しました。2人の子どものお母さんです。私たちはお互いの子どもの通う保育園で知り合った「ママ友」でした。

ー仙北市出身の三春さんと埼玉県から移住してきた歩さん。そこからどんな経緯でいぶりがっこを作ることになったのでしょうか。

三春 歩ちゃんが「実家にいぶりがっこを送りたいんだけど、どこのが美味しいのかな?」と聞いてきたのがきっかけでした。その当時の私は、いぶりがっこは近所のお母さんたちから貰って食べるものだったので、買ったことがなかったのです。
その時初めて「美味しいいぶりがっこってどこに売っているんだろう」と考え、「自分たちが美味しいと思えるいぶりがっこを作って販売したらいいのでは?」と思いつきました。「作るなら子どもにも安心して食べさせられるものがいいね」と盛り上がり、何も分からないまま2人で動き出しました。まだ何も始まっていないのに「いぶりがっこう」のFacebookを先に作ってしまったり…。やる気にはあふれていました。

(左:西宮三春さん。右:村岡歩さん)

(草むしり中。2人の会話のテンポが心地よく笑いが絶えない)

ーそこからどうやって進んでいったのでしょうか。

三春 「いぶりがっこを作る」と決めてからは2人でいぶりがっこを試食しました。直売所で自分たちが「美味しい」と思えるがっこがあれば、生産者の方に電話して「レシピを教えてくれませんか」と交渉しましたが、もちろん誰も教えてくれませんでした。

もう自分たちの力では無理かもしれないと、市役所に相談したところ、運よく「作り方を見せてくれる方」を紹介していただきました。1年目はその方に手取り足取り教えてもらいました。そして出来上がったいぶりがっこがまさに「自分たちが美味しいと思える味」だったんです。
最初に出来上がったいぶりがっこは地元の子育て支援センターのイベントや花見の時期に角館にある武家屋敷に出店し、販売しました。いぶりがっこを気軽に食べられるようにブロックだけでなく、スライスや刻んだがっこも商品ラインとして販売しました。

(三春と歩のがっこ。無添加無着色なのは自分の子どもにも安心して食べさせたいから)

(いぶりがっこは馴染みのない人にも手に取ってもらえるようにスライスや刻んだものを用意)

みんなで一緒にやったらきっと楽しい

ー奇跡のようなお話ですね。2年目から製造・販売だけでなく、作業体験ができる「いぶりがっこう」を開催したのはどうしてですか。

三春 初めて2人だけでいぶり大根漬けを作ってみて分かったことは、すごく大変だということです。作業工程も多く、寒い時期なので水は冷たいし、大根を漬け込んだ樽は重くて…。自分たちの想像を超える重労働でした。こんなに大変な作業2人だけじゃ続けられない!「それじゃあ、みんなでやったらいいんじゃないか!」と始まったのが「いぶりがっこう」です。
始めた当時は一年間のオーナー制度でした。コース毎にいぶりがっこや農産物が届いて、農作業に参加できない人でも気軽にいぶりがっこを楽しめる。もちろん、農作業に参加してもいいし、楽しみ方も人それぞれです。

(燻り作業は大先輩の小屋を借りて。大根を燻して乾燥させてから漬け込みます)

(漬け込み。地元の人でも作る工程を知ってる人は少ないいぶりがっこ)

(樽上げ。漬け込みから2か月。いいあんべになっているかな)

体験作業だけじゃなく、地元の魅力も感じてほしい

ー「いぶりがっこう」ではどんな活動していますか。

三春 夏の終わりに大根の種まきから始まって、秋に収穫し、冬に燻し、雪が降る頃に漬け込み、樽上げなど全部で5工程ほどあります。いぶりがっこを作る作業だけでなく、作業の後に地元の農家民宿で食事をしたり、講師を呼んでワークショップをしたりと仙北市の魅力を知ってもらえるような活動になるように企画しています。参加者さん同士の交流にも繋がって大きな家族、親戚のような場所になっています。
県外・市外の参加者さんの中には作業に関係なく、仙北市で開催する田沢湖マラソンにエントリーして出場する人やGWには花見で角館を訪れる参加者もいて、仙北市を身近に感じてもらえる嬉しさがあります。

(秋の大根の収穫。みんな楽しそう)

(作業の後のお楽しみ。農家民宿でのご飯)

(仙台の無印良品でのワークショップ。いぶりがっこを通して沢山の人に出会いました)

ーどんな人が参加しているのでしょうか。

三春 毎年70人くらいの人が入学しますが、一人での参加や子供連れ、県外からと色々な人がいます。全ての作業に参加しなくても大丈夫なので気軽に入学して欲しいです。「昨年やってみて楽しかったから」と何年も続けて来てくれる方もいます。長く通っている方には「学級委員長」として私たちの目が届かないところをフォローしてもらっています。

(大根を燻す前の作業。分かる人が分からない人に教える)

ーいろんな方に支えられて、12年続いているんですね。

三春 地域の方々には大変お世話になりました。農家でもない、普通の主婦が突然「いぶりがっこを作る!」って無知だからこそできたんだな!と。大先輩方が「まあ、やってみれ」と温かく見守ってくれたから続けられたと感じています。当時は子どもも小さく子育てとの両立も大変でした。県外での活動や販売会の参加は家族の協力があったからこそ。感謝しています。

(地元の安藤醸造さんを講師に味噌づくりもやりました)

形は変わってもいぶりがっこの魅力発信をしていきたい

ー今後の活動を聞かせてください

三春 食品衛生法の改正に伴い、今年からはいぶりがっこの販売ができなくなりました。2人で何度も話し合い、今年は「いぶりがっこう」の活動を続けながら新しいやり方を模索していく1年にしようと動いています。皆さんに「三春と歩のがっこ」を届けられないのは残念ですが、ここに来ないと食べられない!いぶりがっこがあっても面白いんじゃないかと考えています。今までは私たちが県外へ販売に行っていたけど、今年はここに来ていぶりがっこの魅力を更に感じてもらえたら嬉しいです。

地元の消防団、市議、いぶりがっこうの運営と様々な活動を精力的に行っている三春さん。実際にお会いすると元気いっぱいのお母ちゃんのイメージがぴったりです。その普通の感じが周りの人の共感を呼んでいるのだろうと感じました。これからも地元の魅力を発信し続ける三春さんの活動を楽しみにしてます。

※写真提供/いぶりがっこう

DATA

【西宮 三春】
秋田県仙北市出身、3児の母。
H21年4月に地元の消防団に入団し、防災PR活動などに従事。H24年より村岡歩さんといぶりがっこ作りを始める。「いぶりがっこう」の運営。
R4年5月から仙北市議員として精力的に活動中。
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【いぶりがっこう】
仙北市で大根の種まきから燻し・漬け込みまで1年を通したいぶりがっこ作りを体験できる。
※作業日程はSNSでお知らせ
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キーワード

秋田県内エリア

Writer

JUN

JUN

秋田市在住。3児の母。 外に出て人と会うことが好き。 カラーセラピー・占い師としても活動しています。

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