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「花火が好き」で移住。カフェ店主として社会人落語家として、人と人をつなげる

PLUS CAFE大曲駅前店 後藤仁美さん

花火が好きで千葉県から大仙市に移住した後藤仁美(さとみ)さん。大仙市の玄関口である大曲駅に併設された「PLUS CAFE(プラスカフェ)大曲駅店」で、お客様を温かくおもてなしします。カフェを運営するかたわら、社会人落語家「麹家りんりん」としても活動中。さらに、移住サポートや地域づくりにも積極的に参加しています。これまでの活動や地域との関わり方をお伺いしました。

花火が好きでたどり着いた大仙市

ー大仙市へ移住した経緯を詳しく教えてください。

後藤 私は花火鑑賞が趣味なんです。千葉県に住んでいた頃は、全国の花火大会を巡っていて1年に20カ所ほど足を運んでいました。もちろん大仙市には何度も花火鑑賞で訪れ、来る度に知り合いが増えてきたんです。通っているうちに日本一の花火大会のある大仙市に住んでみたいという思いが強くなって、2014年に大仙市に移住しました。

(2023年第95回全国花火競技大会 大会提供花火 写真提供:大仙市)

ー花火鑑賞が好きな後藤さんにとって「花火のまち大仙市」はぴったりですね。

後藤 大仙市には、NPO法人大曲花火倶楽部が認定している「花火鑑賞士」という資格があり、私も持っています。受験の際には、講習会や交流会に参加して、たくさんの地元の方や花火関係者と出会いました。自然と知り合いが増えてきて、別の花火大会にはない親近感や温かさを感じたのも移住を決意した理由のひとつです。

ほっとできる場所を作りたい

ーカフェをオープンしたのにはどのような思いがあったのですか?

後藤 移住する前に働いていた東京のDOUBLE TALL CAFEでの経験を生かそうと思い、2015年3月に「PLUS CAFE」をオープンしました。JR大曲駅には、手軽な飲食店がなかったので大仙市の入り口であるこの場所を選びました。「また大仙市に来たい」「大曲駅にはカフェがあって便利だな」と思ってもらえるようなお店作りを心がけています。

(こだわりのコーヒー豆は高品質でトレーサビリティな種類をベテラン焙煎士から仕入れています)

ーオープンからまもなく10年ですね。

後藤 あっという間でしたね。季節やトレンドに合わせてメニュー作りも試行錯誤してきました。オープンから続けているラテアートは、楽しみに来てくださる方も増えています。駅構内という立地もあり、出張中のサラリーマンの方向け秋田の日本酒飲み比べセットは好評です。そして、数年前から夏季限定でかき氷もメニューに追加しています。県内の果物や加工品を贅沢に使用した人気商品です。この10年間は、コロナ禍や出産を経験しましたが、温かい常連さんも増え、たくさんの方に見守っていただきながらここまで辿り着きました。

(季節やイベントに合わせたラテアートが人気。スコーンやドーナツなどのスイーツも豊富です)

(いぶりがっこを使用した「大曲のキンパ」もイチオシのカフェメニュー。写真提供:PLUS CAFE

「落語」が新しい地域の魅力になるように

ー「麹家りんりん」として社会人落語家でもご活躍していますね。

後藤 私は、高校卒業後に関東で舞台の専門学校に通っていて、イベントや劇場公演に出演していました。オーディションを受けるなかで、他の人にない特技が欲しいと思ったのが落語を始めたきっかけです。始めはとても苦労しましたが、笑いがとれてもとれなくても、お客様のリアクションが全て自分に返ってくるのがおもしろくて、夢中になりました。落語は、大勢でつくる舞台とは重みが違うなと感じます。

ー今年10月に開催した「おおまがり落語会」はいかがでしたか。

後藤 県内外の社会人落語家をゲストにお迎えして、「おおまがり落語会」を主催しました。久しぶりに大仙市で開催する落語イベントでしたが、チケットは完売で当日を迎えました。落語ファンだけでなく、PLUS CAFEの常連さん、落語会は初めてという方やお子さんたちが駆けつけてくださって感激しました。

(おおまがり落語会で、後藤さんは「時そば」という演目を披露しました)

(普段見慣れたカフェでの後藤さんとは違った姿に、会場からは温かい拍手と歓声があがっていました)

ー落語会をやろうと思ったきっかけは?

後藤 私は、移住者メンバーを中心に立ち上げた一般社団法人大仙エンジンに在籍しています。大仙市の関係人口を増やすためにイベント企画をしたり、移住者の窓口として相談に乗ることもあります。この活動の一環として、6月に東京で開催した日本橋落語会に出演したんです。このイベントでは、落語を通して大仙市の魅力を発信してきました。

今回ゲスト出演してくれた方は、「人口減少が深刻、過疎高齢化、若年女性の流出、自殺率が高い。そんな秋田には笑いが必要です。落語を通して秋田県大仙市を明るくしませんか?」というメッセージに共感してくれた3名の落語家さんです。新たな大仙市の魅力として、落語ファンが集まる笑い声の絶えない街になることを期待します。

(全国から大仙市に集まった落語家さんたちと。社会人落語日本一決定戦の優勝者も駆けつけました)

ーこれからの目標を教えてください。

後藤 カフェ営業や子育てもあって、実は大曲の花火大会はゆっくり観られていません。本末転倒かもしれませんが、でも大仙市に移住して良かったなと思っています。コロナ禍で出産した息子はもう3歳になりました。地域の方に見守られ、すくすく育ってくれています。カフェのオープン前に保育園に送り出すのは毎朝が戦いですが、夫が協力してくれるのでなんとかやっています。人生は花火のように一瞬で儚いです。カフェに落語、子育てや地域づくり、まだまだやりたいことはたくさんありますが、どんなことにも楽しみながらチャレンジしたいです。

(見た目も可愛いドリンクでゆっくりお過ごしください。写真提供:PLUS CAFE)

花火への情熱で大仙市に移住して10年。多方面で活躍する中で地域との深いつながりを築き、お店には起業や移住、イベントの相談に訪れる人も多いそう。後藤さんの温かく気さくな人柄が、訪れる人々に安心感と勇気を与えています。人と人がつながり、新しいチャレンジが始まる地域の拠点として、なくてはならない存在だと感じました。

DATA

【後藤仁美さんプロフィール】
千葉県船橋市出身。「大曲の花火」(全国花火競技大会)に魅せられて、2014年より大仙市に移住。CAFEで働いていた経験を生かし、2015年3月にPLUS CAFEをオープン。社会人落語家「麹家りんりん」としても活躍。一般社団法人大仙エンジンのメンバーとして大仙市への移住サポートやイベントも企画。カフェ店主、イベント主催、まちづくり、子育てなど多方面で精力的に活動中。

【PLUS CAFE大曲駅前店】
住所/秋田県大仙市大曲通町6-1(JR大曲駅西口構内)
電話番号/0187-73-7577
営業時間/平日9:00〜17:00・土曜10:30〜17:00
定休日/日曜・祝日
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キーワード

秋田県内エリア

Writer

髙橋 蕗子

髙橋 蕗子

大仙市出身。中央出版株式会社にて教育教材部門で勤務、通信制高校の体育教員を経て、現在は大仙市地域おこし協力隊として活動中。移住促進のため、地域の人やイベントなど取材し、県外に向け田舎暮らしの魅力を発信中。

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