秋田の女性のWork&Life a.woman

4APRIL
2020

今月のCLOSE UP

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長く一生付き合える白岩焼を。伝統を受け継ぎ、今の時代に昇華させるやきもの作家

白岩焼和兵衛窯 2代目窯元 渡邊 葵さん

江戸時代に生まれた秋田最古の焼き物、「白岩焼」をご存知ですか? 渡邊葵さんは、一度は消滅したこの焼き物を復活させた両親と共に、その伝統を今に受け継いでいる2代目窯元です。
深い蒼さが何とも魅力的な渡邊さんの作品は、県内外でどんどん人気に。やきもの作家として引っ張りだこの渡邊さんに、ものづくりにかける想いを伺いました。

大事なものを残すためには、努力が必要なことを思い知って

ー白岩焼を現在秋田で制作しているのはこちらの「和兵衛窯(わへえがま)」だけですよね。渡邊さんは、どんなきっかけで制作をはじめられたのでしょう?

渡邊 私は大学院で美術史を専攻していたのですが、そのときの恩師が東北の仏像を研究されていて。そうした仏像は今でこそ評価されていますが、当時は知る人ぞ知るぐらいのすごいマイナーな存在で、ボロボロだったり保存状態が悪いものもたくさんあったんですね。


(渡邊さんが2代目窯元をつとめる白岩焼和兵衛窯)

みんなが大事に思うものは“誰か”が守ってくれる。ちゃんと残っていくんだと思っていたんですけど、そうやって仏像を見て回っているうちに、実際はそんなに簡単なことじゃない。残す努力をしないとものは残らないことに気づいて。その頃白岩焼をやっているところは私の実家の他にも2、3軒あったのですが、誰かがやらないとなくなるかもしれない。両親に継いでほしいと言われたことは1度もないけれど、私は残す人になろう、と思って秋田に帰ってきました。


(工房の隣には、ご家族3人の作品が並ぶギャラリースペースが)

他と比べものにならないほと窯に手間がかかる白岩焼

ーでは、そこから白岩焼の技法をご両親に教えてもらったのですか?

渡邊 教えてもらえると思って2年くらいやっていたんですけど、なかなかうまくいかなくて(笑)。それで京都のやきものの学校に行って主にろくろの技法を学んで戻ってきました。うちの場合は白岩周辺で採れる砂混じりの赤土をブレンドして使っているんですけども、その土をどうやってろくろで扱うかは自分でやりながら変えていきました。

とはいえ京都から帰ってきてすぐの頃は、父に「お前の作るものは薄すぎる。うちの土はそれでは焼けない」って散々言われてましたね。でも私の作品を「薄くて軽くていいね」と言ってくださるお客さんの反応が増えてくると、だんだん父が作るものがこっちに寄ってきたり(笑)。

制作は父と母と私3人全員バラバラですが、窯に関することだけは一緒にやってます。例えばうちと同じくらいの大きさの一般的なガス窯だと、釉薬がけから窯出しまで最短5日くらいでできるんです。でもうちは海鼠釉をなるべく綺麗に発色させるために父が手作りした灯油窯を使っていて、これがとても手間のかかる窯で。釉薬をかけわけながら窯づめをするので、まずそこで5日間、その後1日18時間窯を焚きます。で、窯の冷却時間がまた長くて5日間。そこから窯出しをして全部で大体2週間かかる。時間も労力もかかるので他の窯に比べると窯焚きの回数は年間で4〜5回とすごく少ないんです。

(とても綺麗に片付いている気持ちのいい工房)


(静かに佇む窯。入り口を閉じる際はレンガを一つ一つ積み直すそう)

さまざまな要素が折り重なって独特の蒼さが生まれる

ー必然的に作る量も限られてきますよね。この白岩焼の美しい蒼さはそうした焼き方から生まれるのですか?

渡邊 要素はいろいろあって。まず1つは、釉薬にあきたこまちのモミ殻の灰を入れて発色させています。窯の中で土の鉄分とモミ殼の灰の成分が化学変化を起こして、蒼い色になるんです。
それから焚いている間にどれくらい温度が高いかと酸素がどのくらい失われたかというバランスも。うちは酸素を遮断する還元っていう焚き方なんですね。酸素を遮断すると、窯の中の炎は焼き物の内部にある酸素を食べようとする。酸素がどんどん奪われて、この色が発色するんです。焼いてみないと分からないし、今だに失敗もするし、難しいです。


(事務所の窓辺からはお母様のご実家の田んぼを眺めることができます)

昔ながらの伝統を現代に合わせたい

ーそうした中で、どんなことを意識して制作していらっしゃるのでしょう?

渡邊 根本的にはこの蒼い色、海鼠釉(なまこゆう)がどうしたらきれいに見えるかということですね。海鼠釉って、重厚感が古くささにも結びつきやすいので、それをどうしたらもっと現代的にできるのかをずっと考えていて、そこからデザインを決めています。

ー器だけでなくアクセサリーも手がけるのは、現代に合わせたいという想いから?

渡邊 そうですね。なるべく若い人にも白岩焼を知ってもらえればというのがあって。10代、20代くらいの人だとご飯茶碗よりはピアスが欲しいかなって。プレゼントに贈ってもらうのも、自分用にと選んでもらえるのも、どちらもすごい嬉しいです。

おかげさまで想像よりも幅広い年代の女性に興味を持っていただけて、いろんなお客さんにお会いできて。現代の女性って、各々のライフステージでそれぞれ大変なことがあって、どんな人でも頑張ってない人っていないって思うんです。なので、私の作ったアクセサリーが、その人の日常をちょっと楽しくすることのひとつになれたらなと思っています。


(海鼠釉に金彩の技法を加えたアクセサリーも人気です)

秋田の人にとって身近で長く使い続けられる作品を

ー私も今日渡邊さんの作ったピアスをつけてきました(笑)。秋田に住む私の友人にも渡邊さんの作品を持っている人、結構多いんです。

渡邊 ありがとうございます(笑)。そうですね、秋田で作ったものを秋田の人に使ってもらうことはとてもありがたいです。県外での生活を経験したからこそ、秋田には生産者の顔が分かる地元の美味しい食べ物やお酒が、こんなにたくさんあるのが本当にすごいと思っていて。だから自分が作るものも、地元の人にとってクオリティが高いものであると同時に、身近に感じてもらえるものでありたいと思っています。


(地元の神社用に作られた素焼きの器。かっこいい!)

時々地元のおじいちゃんおばあちゃんが、「割れたから」と言ってまた器を買いにきてくれたりするんです。うちの器は割と丈夫なので、その「また」って何十年ぶりとかなんですよね。それがめちゃめちゃ嬉しくて。
器1つ作るまでにかかる時間って、3、4ヵ月ぐらいですけど、器がお客さんの手元に行ってからは何十年も使われる。私と一緒にいたよりもずっと長い時間軸で使われることを考えると、「一生物として使えるぐらいのものを作らないと」と思います。


(こうした器たちも既に納品先がほとんど決まっているそう)

地元を大切にすることが、新しい価値につながる

ー秋田はもちろんですが、県外へも活躍の場が広がっていると伺いました。県外での反応はどうですか?

渡邊 面白いのが、東京のお取引先にぐい呑みを納品した時に、サイズが大きいことに驚かれて。秋田では小さいと「これだば一口で飲んでしまう」って言われるから大きくなるんだってことを話したら、「じゃあ秋田サイズのぐい呑みってお伝えしよう」と言ってくださって。で、それがウケてあっという間に売れちゃったそうなんです。

秋田では普通なことが、外に出したら価値になることもあるんですよね。そこを最初から目指して作るのではなくて、まず地元を大事にする。その結果で、普遍的な価値へと繋げていくことができればと思っています。

ー最後に、これからの展望を教えてください

渡邊 来年で和兵衛窯が45周年なんです。展示会を開く予定で、今はまずはそれをいい展示にしたいなというのが一番近い目標です。ちょっとでもいいものを作りたいと毎日考えているので、その積み重ねが展示会につながるように、地道に仕事をしていきたいです。

日々を淡々と着実に重ねながら、その中でものづくりの楽しみを見出しているという渡邊さん。だからこそ、彼女の作る器やアクセサリーは、白岩焼の伝統を受け継ぎながらも、今の暮らしに寄り添うものとなっているのでしょう。
残す人として、また新しさをもたらす人として。渡邊さんの手からこの先どんな作品が生まれていくのか、ますます楽しみです。

【渡邊葵さんプロフィール】
角館町白岩生まれ。岩手大学大学院教育学研究科で美術工芸を専攻。修了後、父であり白岩焼和兵衛窯窯元の渡邊敏明氏に師事する。京都府立陶工高等技術専門校研究科で学び、2011年秋田に帰郷し制作活動をスタート。伝統を受け継ぎながら現代の生活に根ざしたその作品は、県内外で注目を集めている。
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【近日開催の展示会】
「渡邊葵個展」
会期:2019年11月22日(金)~26日(火)10:30~16:00
会場:日々の暮らしの器と雑貨「眞理」(秋田市)
内容:酒器や鉢・皿、マグカップなどの器にアクセサリー、約400点を展示予定。

「Akita Girls7 Accessories Collection 2019winter」&「Akita Girls7 Art Works」
会期:2019年12月21日(土)・22日(日)11:00~18:00
会場:川反中央ビル(秋田市)
会場1:ココラボラトリー
会場2:andtoiro
会場3:studio
参加作家:境田亜希(ガラス)、坂本喜子(金工)、菅原綾希子(彫刻)、髙橋睦(漆)、花田和美(ガラス)、藤田美帆(かぎ針編み)、渡邊葵(陶器)
内容:秋田在住の女性作家7人による合同展示会。同世代でありつつ、素材も分野も異なる作り手のバラエティ豊かな作品が一堂に会します。川反中央ビル一階「ココラボラトリー」ではアクセサリーを、三階「andtoiro」・「studio」ではアート作品を展示販売。

【県内の取り扱い店】
日々の暮らしの器と雑貨「眞理」(秋田市):器各種、アクセサリー
日用雑貨・うつわ・家具「ミンカ」(大仙市):器各種、アクセサリー、店舗限定ミンカブローチ
obogi(秋田市):店舗限定ドットアクセサリー
m’scollectables(潟上市):アクセサリー

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この記事を書いたライターこの記事を書いたライター

mitaslab.

日々ときどき旅。日常と非日常を行ったり来たりしながら、毎日をアップデートするひとりプロジェクトをしています。現在は二拠点生活に挑戦しながら、フリーライターや企画で活動中。

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