秋田の女性のWork&Life a.woman

2FEBRUARY
2020

今月のCLOSE UP

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26歳で家業の八百屋を継ぐことを決意。伝統野菜の普及にも力を入れる、笑顔あふれる若き店主

あいば商店 店主 相場 百恵さん

秋田市民市場のアイドルのように気さくでかわいい八百屋の店主、相場百恵さん。明るい笑顔の裏側に26歳で店主になる!と決断した芯の強さも感じられます。亡きお父さんの後を継いで今年で5年目。様々な苦労や困難もきっとこの笑顔で乗り越えてきたに違いありません。相場さんの笑顔のヒミツとこれまでの道のりを伺ってきました。

八百屋を継ごうと決めた長女としての使命感

ー市場で働くというと朝が早いイメージですが、毎日何時起きですか?

相場 朝は4時起きです。繁忙期だと3時起きになります。そこから本荘や湯沢の農家さんから集めたものを売りに来てくれる矢留青果市場協同組合さんへ行き、仕入れ。5時頃にはお店に行き、その日の注文を確認してから秋田市中央卸売市場へ行きます。6時頃にはお店に戻り、叔母さんが握ってくれたおにぎりを食べながら開店準備をするというのが朝の流れですね。

ー内容の濃い朝…。それを聞いただけでも大変そうですが、いつ頃からお店を継ごうと思ったのですか?

相場 高校の頃は八百屋に全く興味がなかったんです。店を継ぐなんてこれっぽっちも考えていなかったですね。高校卒業後はパティシエになるため東京の製菓学校へ進みました。パティシエの道を後押ししてくれたのは父でした。

秋田市に戻りパティシエとして働いていた20代前半に、父の体の具合が悪くなってしまったんです。そこで、父の具合がよくなったらまたパティシエに戻るつもりで店を手伝い始めました。しかし、良くなるどころか病状は悪化していくばかりで。弱っていく姿を目の当たりにして、「母でもなく、妹でもなく、長女である私が継がなければいけない」と思うようになりました。

結局父は亡くなってしまい、その直後に「私が、継ぐ!」と覚悟を決めました。悲しいよりも、淋しいよりも「やらなきゃ!」と心に決めた瞬間だったのを覚えています。

ー若くして店主になると苦労も多かったのでは?

相場 初めはお客さんよりも知識がなくて。「何がわかるんだ」と言われたこともありました。でも確かにその通りだし、悔しくて悔しくて本を読み漁りましたね。
(県内のものを中心に約100種類ほどの果物や野菜が揃う)

あいば商店の歴史とは

ーそもそもあいば商店さんはいつから始まったのですか?

相場 秋田市民市場が新しくなる時に、父が以前勤めていた「伊藤商店」さんからお店の権利を譲って頂き始まった八百屋です。父は野菜や果物の知識はもちろん、山菜やきのこの知識が豊富なことで有名でした。きのこ採り名人が父にきのこの名前を聞きにくるぐらいに。


(あいば商店開店当時の頃。左から叔母さん、お母さん、お父さん)

ー飲食店の方も仕入れにくるそうですが、どのようにおすすめされるのですか?

相場 おかげさまでいろんな飲食店関係の方が足を運んでくれます。県外の飲食店さんからの問い合わせもあります。食のプロである料理人の方には、食の知識では勝てないので、素材の率直な自分の感想を伝えることにしています。甘い、苦い、辛い、粘る、といったような具合に。自分でも一度調理して試したりしていますが、逆に料理人の方にどうやって食べるとおいしいかを聞いたりしてアイディアをもらうことも多いです。
そうやって得た知識を次は一般のお客様に販売する時に伝えるようにしています。


(天然山にんじんはなかなか手に入りにくい逸品!油で揚げるのがおすすめ、とのこと)


(お店を手伝い始めた20代前半の頃の相場さん)

秋田の”伝統野菜”を広める役割としても

ーその地域でしか育たない唯一無二のものとして注目を浴びてきている“伝統野菜”ですが、取扱店も少ないと聞いています。秋田の“伝統野菜”を買うならここ!と言われていますがいつ頃から扱っているのですか?

相場 伝統野菜と呼ばれるようになったのは最近のことで、せりやじゅんさいなど代表的なものは以前から販売していました。あきた郷土作物研究会というところで伝統野菜の話を伺ってからは、積極的に生産者さんを訪ねていくようになり、取り扱う種類も増えてきました。また、生産者さん同士でも「あそこに行けば売ってくれるよ!」と紹介してくださったりして種類や量も増えてきています。最初はあまり売れなくて苦労しましたが、伝統野菜の価値が認められてきたのか購入してくださる方も増えてきました。

冬から春にかけての今の季節は三関せりひろっこが旬です。三関せりは作業風景を見させてもらいましたが、寒い冬の時期に田んぼのようなところで育てているため栽培や収穫も過酷です。収穫後は丁寧に根っこの泥を落とす水作業があります。伝統野菜はとても手間のかかる作業が必要で生産者さんが減っているそうです。
(三関せりの特徴はなんといってもこの白くて長いきれいな根っこ!農家さんの苦労の賜物です)


(青いものはあさつき、あさつきに雪を被せた状態で保存しておくと白いひろっこになるのだとか)

野菜が繋いだ夫婦の出会い

ーご主人も野菜の仕事をされていたとか。

相場 そうですね。主人とは27歳の時に結婚したのですが、以前、秋田中央卸売市場で青果の卸業をしていました。一見、不愛想だったので市場で見かけることはあってもしばらく話すことはなかったのですが、たまたま欲しかった食材が主人の担当で。話してみたら同い年で、共通の知り合いや話題も多く意気投合し、最終的にはお婿さんになってもらいました。今では一番のよき理解者です。


(お互いに良き理解者と語る、ベストパートナー)

ー八百屋をやっていて一番やりがいを感じる時は、どんな時ですか?

相場 自分で食べて、「おいしい!」「これはすごい!」と感動した野菜や果物をお客さんに勧めて、そのお客さんから「やっぱりおいしかった、あんたの言う通りだった!」と言われた時ですね。

ーどんな八百屋さんを目指していますか?

相場 日々、野菜や果物は品種改良されておいしく変化していますし、伝統野菜のように変わらずに残っているものもあります。新しい生産者さんとの出会いから新しい食材との巡り合いもあります。食材のおいしさや生産者さんの苦労をまるごと伝えられる、農家さんの代弁者のような八百屋になりたいです。


(県外の農家さんや築地の八百屋さんから仕入れることもある)


(お母さんがレシピを考えた自家製の漬物は、現在妹さんが担当している)

ーご主人にも伺ったら同じことを言っていました。似てますね。

相場 たぶん、同じことを思って仕事をしているので、もう同志のような関係です。二人とも結婚記念日も忘れるぐらい仕事に没頭しています。昨年から日曜以外に水曜もお休みにさせていただき、二人で生産者巡りをしているんです。
生産者さんの作業風景を見させてもらったり、直接お話を伺ったりすることで苦労もわかるし、愛着も沸くし、売らなきゃ!と思います。私たちのリフレッシュにもなりますし大事な時間です。

(きのこ農家さんの案内のもと、原木なめこを栽培している山を視察しに行く様子)

-最後に。明るく笑顔が素敵な百恵さん、笑顔の秘訣ってなんですか?

相場 なんでしょう?お客さんが温かい方ばかりで、元気がない時に声を掛けてくれたり「忙しいでしょ!」と差し入れしてくれたりして、応援してくれる人が多いからかもしれません。あいば商店は、私達夫婦と母、叔母、妹、3人の従業員で働いていますがみんなで一緒に喜んだり、悩んだりして周りの人に支えられているな、とつくづく感じます。
あとは大好きなスイーツを食べること!おいしい料理をみんなで食べに行くこと!です。


(ちゃきちゃきの叔母さんとお客さんとのやり取りも楽しい)

なんでも揃うスーパーで日々の買い物をちゃちゃっと済ませてしまいがちですが、たまには市場へ出掛けてお店の方の的確なアドバイスをもらいながら食材を買う、そんな日があってもいいかもしれません。農家さんの苦労や食材への想いを代弁したくなる相場さんと同じように、一生懸命な八百屋さんを応援したくなる、そんな想いになりました。今晩のおかずに悩んだらまずは市民市場へ行ってみましょう!

【相場 百恵さん プロフィール】
秋田市出身。高校卒業後、製菓学校へ進学。秋田市へ戻り市内の洋菓子屋店でパティシエとして就職。父の具合が悪くなり家業である八百屋を継ぐことを決意。26歳であいば商店の店主になる。

【あいば商店】
住所/秋田県秋田市中通4丁目7-35 市民市場内
電話/018-832-7311
営業時間/7:00~17:00
定休日/水曜、日曜
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この記事を書いたライターこの記事を書いたライター

kamada minako

超時短のパート事務員の傍ら時々ライターをやっています。 小学生と幼稚園児の子育てをする主婦ですが、密かにフードコーディネーターの資格あり。いつか活用できる日がきますように。 日々のお料理ブログ。

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