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秋田の手仕事を伝えたい。「ひとり地域調査隊」として地域の魅力を全国に発信

Nowvillage(ナウビレッジ)今村香織さん

仙北市にある自宅の一室に事務所を構え、地域に息づく風習や手仕事を広く伝える活動をしている今村香織さん。フリーペーパーの制作・発行やワークショップの開催、さらには全国に手仕事を届ける問屋業やオンラインショップの運営まで手がける今村さんの活動への想いを伺いました。

これまでの経験を生かしNowvillage起業

ー今村さんの活動はどのように始まったのですか?

今村 私の出身は茨城県で夫は千葉県。夫の転勤で埼玉→愛媛→秋田に来ました。夫の転勤で愛媛に行くことになって、その時に転職活動をしてみたんだけど、夫の転勤が多いとなかなか正社員で雇ってもらうのって難しいんですよ。それなら、今後どこに行っても自分で仕事ができるようにしよう、と思って愛媛にいる2015年にNowvillageを起業しました。

埼玉にいる時は美術館に勤めていたんですよ。文化と地域連携の仕事を任されていて、地域の職人さんとお会いする機会がすごく多かったんです。この地域にはどんな人がいるんだろうという好奇心から始まって、少しずつ土地勘や風土がわかってくる。こういう経験が今の活動に繋がっているかな。

ーどんなことから始めたんですか?

今村 この地域にはどんな職人さんがいるんだろうという期待を胸に、1人でいろんな職人さんを訪ねて歩きましたね。そして、せっかく教えてもらった職人さんの思いや作業工程を多くの人に伝えるために、自分でHPを開設して発信しました。たくさんの人が手仕事を手にとれるように、経営セミナーに参加して小売業や問屋業の勉強もしましたね。この時はまだ子どもが産まれていなかったので、長く事業を続けていくための準備期間としてはよかったかな。

秋田の手仕事を追い求める

ーフリーペーパーのことを教えてください。

今村 フリーペーパー「いま、秋田村から」は年3回発行しています。全8ページの紙面を取材から発行まで1人でやってるんですけど、編集の仕事は経験が浅かったので本当に本当に大変!でもその分、やりがいはすごいある。秋田で出会った美しい手仕事や、心を動かされた職人さんの言葉を私なりの言葉やイラストで綴っています配布場所はお世話になっている、各地のセレクトショップ。詳しい場所はHPに載せています。最近ではweb版も制作してよりたくさんの人に届くようにしました。

ーワークショップも開催しているんですよね。

今村 そうなんです。ワークショップは「秋田手仕事ワークショップ」として月1回開催を目標にしていてます。参加者は、30代から60代まで幅広い方に参加頂いています。最近では、藁細工の職人さんを講師に柔らかな掃き心地が特徴の「みごぼうき」を作ったり、「秋田杉でモビールを作ろう」というものを開催しました。次回は12月八橋人形の「干支の絵付け体験」を開催予定です。お申し込みは、HPInstagramのメッセージからできますよ。

ー楽しそうな内容ばっかりですね!

今村 そうでしょう!地元の方に「こんなのあったんだ」って気づいてもらえるとすごく嬉しいんです!秋田の人に知ってもらうのもそうだけど、県外のお店に商品を卸した時に「こんなに素敵なものを取り扱わせてくれてありがとう」って言ってもらえるとやりがいを感じますね。

(五城目のモビール作りの様子。つむぐのランチ付き。写真提供:Nowvillage)

手仕事を全国に届けたい

ー問屋業やオンラインショップのことも教えてください。

今村 これまで出会った素敵なものを全国の人に届けられるように、愛媛と秋田の手仕事や郷土玩具を取り扱っています。職人さんと買い手を繋ぐ中間地点として、どうすれば職人さんの想いを伝えられるか、買ってくれた人に長く大事にしてもらえるかを考えながらやっています。

目標は、日本の中の「秋田」の認知度を上げること。国内だけでなく海外のお店にも秋田の手仕事を届けたいですね。海外だったらフランスと秋田ってなんとなく相性がいい気がしてるんです。コロナが明けたら、現地調査してきます!

オンラインショップ写真提供:Nowvillage

秋田の手仕事を絶やさないために

ー手仕事や職人さんとはどうやって出会うんですか?

今村 情報誌や新聞、図書館や道の駅にもよく行って情報収集しますね。やっぱり地域の風土を語れるのはSNSをやっていない高齢の方が多いから、その人に辿り着くまでは苦労することが多いですね。秋田にはせっかくいい資源がたくさんあるので、それを絶やさないためにも今の活動は重要だと思うんです。

ー職人さんってちょっと怖そうなイメージですよね。

今村 その地域によって職人さんの雰囲気は全然違いますね。埼玉にいる時は、産業系の職人さんにお会いすることが多くて「しっかり・きっちり」納期に合わせて確実に仕事をこなす人が多かったかな。愛媛の職人さんは「のんびり・穏やか」という感じのオープンマインドな職人さんたち。秋田の職人さんは「まじめ・実直」のイメージかな。だから、秋田では最初のアポどりが1番の難関!溶け込むまでに時間はかかるけど、そのあとは家族のように接してくれて温かい人が本当に多いなぁって感じます。

ー恥ずかしながら秋田の手仕事ってほとんど知りませんでした。

今村 私も、実家の茨城のことってほとんど知らないと思う。知らないっていうのは、全然悪いことでなくって当たり前なんですよ。そこに住む人たちにとって「手仕事」が日常の風景として育っているから、それがいいものだって気づければラッキー。だから、地域の人に手仕事の良さを気づいてもらえるような活動をこれからも継続していきたいなって思ってます。

ー縁もゆかりもない秋田を好きになってくれて嬉しいです!

今村 私にとって今の活動は「秋田を好きになる手段」なんです。例えば、このカゴひとつとっても、すごい味があって素敵だなって思うんです。このカゴをちゃんと調べてみると、寒い地域でしか採れない木を使っていて、雪で農作業ができない時期に収入を得るためにカゴを作り始めたんですって。地域の暮らしや環境を知ることができるので、私にとって手仕事はその土地を知る教科書みたいなものかな。

時代に合わせて形を変え、長い時間をかけて人から人へと繋がれてきた手仕事や風習。今村さんは、持ち前の旺盛な好奇心と探究心で、普段の私たちが見落としてしまっている地域の良さに気づき、「ひとり地域調査隊」という活動で、魅力的に伝えてくれています。これからもたくさんの人に、今村さんが発見した秋田の手仕事が届くと嬉しいです。

DATA

【今村香織さんプロフィール】
ひとり地域調査隊。1980年茨城生まれ。美術館学芸員を経て、2014年に愛媛へ移住。地域に根付く手仕事や昔ながらの風習など地域特有の文化に魅せられ、その魅力を広く発信したいと2015年にNowvillage(ナウビレッジ)を立ち上げる。2018年の夏、夫の転勤で秋田に移住。二児の母。

【Nowvillage】
秋田県仙北市角館町上菅沢2−46
電話/080-3455-8707
info@nowvillages.com
HP
Instagram
online shop

 

Writer

髙橋 蕗子

髙橋 蕗子

大仙市出身。中央出版株式会社にて教育教材部門で勤務、通信制高校の体育教員を経て、現在は大仙市地域おこし協力隊として活動中。移住促進のため、地域の人やイベントなど取材し、県外に向け田舎暮らしの魅力を発信中。

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